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ロキシード視点編
6. 涙のお茶会
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僕は彼女への疑念が消えないままであったが、いつも令嬢に接している時と同じように、"完璧な王太子"の演技で彼女をもてなし、彼女の話に相槌を打った。
「私、今日という日をとても楽しみにしていましたのよ。殿下とこうして一緒にお茶が頂けるなんて夢のようですわ」
「楽しみに思っていてくれて有難う。私もアディルナ嬢と会えて嬉しいよ」
嬉しそうに話す彼女に合わせて、僕は令嬢たちが喜びそうな模倣的な回答をする。もちろん、笑顔は忘れずに。この顔で微笑むと、たいていの令嬢は簡単に心を開いてくれたから便利だった。
僕は自分の顔が良いことを十分に知っているから、いつもこの武器を有効活用していて、今日もいつもと同じで微笑んで話を合わせるだけで問題ないと、この時の僕は完全に油断していた。
「私、殿下の婚約者候補に選ばれて、本当に良かったと思っています。殿下の隣に立てるよう、これから一層努力に励みますわ」
「アディルナ嬢はそのままでも十分に素敵なレディだと私は思うよ」
リリエラ嬢とローゼリア嬢とも同じよう会話をしたので、半ば条件反射のようにスラスラと言葉が出てくる。
「あ、あの黄色いお花、ホワホワしていてとても可愛いですわね」
「そうだね。君みたいに可愛いね」
彼女が何か言うたびに、僕は当たり障りなく、令嬢が言われて喜びそうな言葉を選んで受け答えた。
けれども、会話を続けていくうちに、彼女の表情がだんだんと曇っていってるのに気が付いた。
(なんか……様子が変だな……?)
初めは物凄くはしゃいでいる様子だった彼女が、だんだんとその顔から笑みが消えていって、会話も沈黙が挟まるようになり、そしてついに、アディルナ嬢はポロポロと泣きだしてしまったのだった。
「アディルナ嬢、どうしたの?!」
これには流石の僕でも慌てた。
(なんで泣くんだ?!普通に会話してただけじゃないか?!)
なぜ彼女が泣くのか、全く理由が分からない。
僕は目の前で泣いている彼女に、かける言葉を探している間も、彼女は涙を流し続け、泣き止みそうな気配はなかった。
「うぅ……殿下、申し訳ございません……」
すすり泣く彼女に、僕は彼女を安心させるために静かに距離を詰め、最大限に気を付けて、優しく声をかけた。
「私が何か、君を傷つける事を言ってしまったのかな?」
「そういう訳では……」
言い淀む彼女に、僕はどう接したら良いのか分からなかった。
なにせ女の子を泣かせたことなんてこれが初めてだったから。
僕は本気で彼女がなんで泣いているのか本当に分からないので困惑していた。
すると彼女は必死に泣き止もうとしながら、その胸の内を打ち明けたのだった。
「……殿下が、私にはちっとも興味が無いと分かってしまったら、涙を止められませんでした。」
その言葉に僕は、ドキリとしてしまった。
思わず付けていた笑顔の仮面も外れる程だった。
「……何故私が、君に興味が無いだなんて、そう思ったんだい?」
僕はなるだけ普段通りに、アディルナ嬢に問いかけた。
(……なんで見破られた?僕はいつも通りだったのに)
内心、僕の胸の内を見透かしたアディルナ嬢に警戒をしていたが
悟られぬよう、普段通りの落ち着きを装って僕は彼女を向き合った。
すると彼女は涙を拭うと、おそるおそる口を開いた。
「だって……殿下は先ほどから表情が全く変わりませんわ。受け答えだって当たり障りのない社交辞令ばかりで……」
(……この子は何を言っているんだ?)
彼女の発言は、僕にはあまりにも理解できなかった。
感情を表に出さないのも、社交辞令で会話をするのも、貴族としては当たり前の事なのだ。
「それは、泣くほどの事なの?社交辞令や上辺だけの会話なんて、貴族社会では当たり前の事じゃないか」
「泣くほどの事なのかは分かりません。でも……私は悲しいと思ってしまいました」
下を向いて俯く彼女に、僕は少しだけ罪悪感みたいな物を抱いた。
決して、自分の振舞が間違っていたとは思っていないが、目の前の少女を悲しませてしまったのは、紛れもなく僕のとった行動が原因だったから。
僕は出来るだけ冷静に、優しい声で彼女に答えた。
「別に君に興味がない訳ではないよ。一般的に考えて、最適だと思われる態度を取っただけだから」
「ですが、その結果がコレですよ。殿下の態度は最適解だったとは思いません」
「……そうみたいだね」
彼女の言っていることは、彼女の立場からみたら正論だった。
反論しようと思えば、いくらでも言葉は出てきたが、それよりも僕は、この場での彼女の切り返しの上手さに興味が沸いた
まさか、自分より一歳年下の令嬢に、言いくるめられるとは思ってもみなかったので、僕は驚きを隠せなかった。
「ちょっと予想外だなぁ……」
「えっ??」
「私としては、君が喜ぶと思う言動をしたつもりだったんだけどね。実際他の二人は喜んでたし。まさか泣くとは思わなかったよ」
僕はわざと彼女が怒りそうな事を口にしてみせた。
彼女が、僕の言葉に対してどのように返してくるのかが知りたかったのだ。
すると彼女は僕の期待通りに、少し躊躇いながらも、意を決したように口を開いた。
「”君が喜ぶ”ではありませんわ。殿下がとったのは、一般的な傾向から普通の令嬢が喜びそうな言動をしただけですわ。私に対してではありませんわ」
「……手厳しいなぁ」
「出過ぎた真似を、申し訳ございません」
王族相手に凛とした態度で物申す彼女に、僕は完全に興味を持ってしまった。
(この子……やはり普通の令嬢とは違うな)
自分の言ったことがどれだけ不敬か気づいて深く頭を下げている彼女を、僕はつい見つめてしまったが、直ぐに彼女に許しを与えた。
「気にしていない。何でも話していいよ」
(この子は次は何を言うのだろうか)
僕はすっかり、アディルナ嬢に引き込まれてしまった。
「私、今日という日をとても楽しみにしていましたのよ。殿下とこうして一緒にお茶が頂けるなんて夢のようですわ」
「楽しみに思っていてくれて有難う。私もアディルナ嬢と会えて嬉しいよ」
嬉しそうに話す彼女に合わせて、僕は令嬢たちが喜びそうな模倣的な回答をする。もちろん、笑顔は忘れずに。この顔で微笑むと、たいていの令嬢は簡単に心を開いてくれたから便利だった。
僕は自分の顔が良いことを十分に知っているから、いつもこの武器を有効活用していて、今日もいつもと同じで微笑んで話を合わせるだけで問題ないと、この時の僕は完全に油断していた。
「私、殿下の婚約者候補に選ばれて、本当に良かったと思っています。殿下の隣に立てるよう、これから一層努力に励みますわ」
「アディルナ嬢はそのままでも十分に素敵なレディだと私は思うよ」
リリエラ嬢とローゼリア嬢とも同じよう会話をしたので、半ば条件反射のようにスラスラと言葉が出てくる。
「あ、あの黄色いお花、ホワホワしていてとても可愛いですわね」
「そうだね。君みたいに可愛いね」
彼女が何か言うたびに、僕は当たり障りなく、令嬢が言われて喜びそうな言葉を選んで受け答えた。
けれども、会話を続けていくうちに、彼女の表情がだんだんと曇っていってるのに気が付いた。
(なんか……様子が変だな……?)
初めは物凄くはしゃいでいる様子だった彼女が、だんだんとその顔から笑みが消えていって、会話も沈黙が挟まるようになり、そしてついに、アディルナ嬢はポロポロと泣きだしてしまったのだった。
「アディルナ嬢、どうしたの?!」
これには流石の僕でも慌てた。
(なんで泣くんだ?!普通に会話してただけじゃないか?!)
なぜ彼女が泣くのか、全く理由が分からない。
僕は目の前で泣いている彼女に、かける言葉を探している間も、彼女は涙を流し続け、泣き止みそうな気配はなかった。
「うぅ……殿下、申し訳ございません……」
すすり泣く彼女に、僕は彼女を安心させるために静かに距離を詰め、最大限に気を付けて、優しく声をかけた。
「私が何か、君を傷つける事を言ってしまったのかな?」
「そういう訳では……」
言い淀む彼女に、僕はどう接したら良いのか分からなかった。
なにせ女の子を泣かせたことなんてこれが初めてだったから。
僕は本気で彼女がなんで泣いているのか本当に分からないので困惑していた。
すると彼女は必死に泣き止もうとしながら、その胸の内を打ち明けたのだった。
「……殿下が、私にはちっとも興味が無いと分かってしまったら、涙を止められませんでした。」
その言葉に僕は、ドキリとしてしまった。
思わず付けていた笑顔の仮面も外れる程だった。
「……何故私が、君に興味が無いだなんて、そう思ったんだい?」
僕はなるだけ普段通りに、アディルナ嬢に問いかけた。
(……なんで見破られた?僕はいつも通りだったのに)
内心、僕の胸の内を見透かしたアディルナ嬢に警戒をしていたが
悟られぬよう、普段通りの落ち着きを装って僕は彼女を向き合った。
すると彼女は涙を拭うと、おそるおそる口を開いた。
「だって……殿下は先ほどから表情が全く変わりませんわ。受け答えだって当たり障りのない社交辞令ばかりで……」
(……この子は何を言っているんだ?)
彼女の発言は、僕にはあまりにも理解できなかった。
感情を表に出さないのも、社交辞令で会話をするのも、貴族としては当たり前の事なのだ。
「それは、泣くほどの事なの?社交辞令や上辺だけの会話なんて、貴族社会では当たり前の事じゃないか」
「泣くほどの事なのかは分かりません。でも……私は悲しいと思ってしまいました」
下を向いて俯く彼女に、僕は少しだけ罪悪感みたいな物を抱いた。
決して、自分の振舞が間違っていたとは思っていないが、目の前の少女を悲しませてしまったのは、紛れもなく僕のとった行動が原因だったから。
僕は出来るだけ冷静に、優しい声で彼女に答えた。
「別に君に興味がない訳ではないよ。一般的に考えて、最適だと思われる態度を取っただけだから」
「ですが、その結果がコレですよ。殿下の態度は最適解だったとは思いません」
「……そうみたいだね」
彼女の言っていることは、彼女の立場からみたら正論だった。
反論しようと思えば、いくらでも言葉は出てきたが、それよりも僕は、この場での彼女の切り返しの上手さに興味が沸いた
まさか、自分より一歳年下の令嬢に、言いくるめられるとは思ってもみなかったので、僕は驚きを隠せなかった。
「ちょっと予想外だなぁ……」
「えっ??」
「私としては、君が喜ぶと思う言動をしたつもりだったんだけどね。実際他の二人は喜んでたし。まさか泣くとは思わなかったよ」
僕はわざと彼女が怒りそうな事を口にしてみせた。
彼女が、僕の言葉に対してどのように返してくるのかが知りたかったのだ。
すると彼女は僕の期待通りに、少し躊躇いながらも、意を決したように口を開いた。
「”君が喜ぶ”ではありませんわ。殿下がとったのは、一般的な傾向から普通の令嬢が喜びそうな言動をしただけですわ。私に対してではありませんわ」
「……手厳しいなぁ」
「出過ぎた真似を、申し訳ございません」
王族相手に凛とした態度で物申す彼女に、僕は完全に興味を持ってしまった。
(この子……やはり普通の令嬢とは違うな)
自分の言ったことがどれだけ不敬か気づいて深く頭を下げている彼女を、僕はつい見つめてしまったが、直ぐに彼女に許しを与えた。
「気にしていない。何でも話していいよ」
(この子は次は何を言うのだろうか)
僕はすっかり、アディルナ嬢に引き込まれてしまった。
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