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ロキシード視点編
8. 魔力が無い
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アディルナ嬢十二歳の誕生日。
僕はハルスタイン侯爵家に、お祝いの品を届けに行く所だった。
婚約者候補の令嬢には皆平等に、彼女たちの誕生日にお祝いを渡しているけれども、こうして、わざわざ僕が家に行ってお祝いを渡すのは珍しい事だった。
どうしても、アディルナ嬢の十二歳の誕生日は直接祝いたかったのだ。
何故なら、この国の十二歳の子供は特別な儀式を受けるから。
魔力測定の儀式。それによって自分の魔力量がはっきりと分かるのだ。ハルスタイン侯爵も、アディルナの兄のウォーグルも、高魔力保持者として有名だった。
だから彼女もきっと高い魔力を持っているものだと僕は信じて疑ってなかった。
(魔力量がずば抜けていれば、彼女を指名しやすくなるな)
そんな打算を考えながら、僕はハルスタイン家を訪れた……のだが、なにやら騒がしい。
僕は気になって声のする方へ行ってみると、丁度窓からアディルナ嬢が出てくる所だった。
(なんで?!!)
僕は訳が分からなかったが、アディだからの一言で片付けて、そのまま木の下で彼女が降りてくるのを待って声を掛けた。
「アディ……何をしているんだい?」
僕はいつもと同じく笑みを浮かべて、優しく声を掛けたつもりだったんだけれども、僕を見たアディは、まるで幽霊でも見たように、驚いていた。
「で……殿下?!」
彼女は、しどろもどろになりながら取り繕った。
「で……殿下こそ、こんな所で何をしているのですか?!」
「何って、今日会いに来るとこは前もって伝えてあったよね?」
この様子じゃ多分、忘れてるだろうなとは思ったが、僕はあえて彼女に投げ返した。
すると、案の定彼女は、焦ったように視線が泳いだのだった。
「そ、そうでしたけども、それなら応接室に居るのが普通では?なんでこんな所にいらっしゃるの?!」
「そうだね。そのつもりだったけど、屋敷に到着したら、なにやらこちらの方が騒がしかったのでね。様子を見に来てみたら、君が窓から抜け出してくるところだったので、ここで待ってみたんだ。」
僕はにっこりと笑いながら、腕を組み彼女の前に堂々と立ち構えた。
彼女が破天荒なのは今に始まったことじゃないけども、さすがに危険な行動は見過ごせない。
だから僕は、やんわりと彼女を注意しようと思ったのだけれども、僕が何かを言う前に、彼女が先に口を開いたのだった。
「ロキシード様、私分かってしまったんです。私、お父様とお母様の子じゃなかったんです!!だから、この家を出て行かなくてはならないんです!」
そう言うと、彼女は僕の目の前でポロポロと泣いてしまった。
(は?どう言う事だ?)
彼女の言う事は、大体突拍子ないが、今の発言はいつもに増して、あまりにも荒唐無稽だった。
流石の僕も困惑して、一瞬言葉に詰まってしまった。
「……そんな訳ないだろう。僕の婚約者候補に選ばれているんだから、その辺の調査はしっかりやってある筈だよ」
「ですが、私には魔力が無かったんです!!お父様とお母様の子なら、そんな事ありえません!!!」
「魔力が……無い?」
(今……魔力が無いって言ったのか??)
予想だにしない言葉に、僕の頭の中が一瞬真っ白になった。そんなの、信じられないし、認められない。
(だって魔力が無かったら……)
僕が口を開きかけたその時――
「「アディルナ!!」」
騒ぎを聞きつけたハルスタイン侯爵と奥方が駆け寄って、アディルナのことを抱きしめたのだった。
「お、お父様、お母様……」
「ウォーグルから聞いたよ。家を出るなんて、なんて馬鹿な事を考えるんだ」
「だって私、魔力……魔力が……」
目の前でのアディルナと侯爵たちとのやり取りを、僕は黙って見守った。
「魔力が無くたって、正真正銘お前は私たちの娘だよ」
泣きじゃくる彼女を、侯爵がそう言って抱きしめる様子を、言葉にできない複雑な感情が胸に広がるのを感じた。
(本当に彼女は……)
僕はざわめく心を押し留めて、とにかくアディルナが落ち着くのを待った。
僕はハルスタイン侯爵家に、お祝いの品を届けに行く所だった。
婚約者候補の令嬢には皆平等に、彼女たちの誕生日にお祝いを渡しているけれども、こうして、わざわざ僕が家に行ってお祝いを渡すのは珍しい事だった。
どうしても、アディルナ嬢の十二歳の誕生日は直接祝いたかったのだ。
何故なら、この国の十二歳の子供は特別な儀式を受けるから。
魔力測定の儀式。それによって自分の魔力量がはっきりと分かるのだ。ハルスタイン侯爵も、アディルナの兄のウォーグルも、高魔力保持者として有名だった。
だから彼女もきっと高い魔力を持っているものだと僕は信じて疑ってなかった。
(魔力量がずば抜けていれば、彼女を指名しやすくなるな)
そんな打算を考えながら、僕はハルスタイン家を訪れた……のだが、なにやら騒がしい。
僕は気になって声のする方へ行ってみると、丁度窓からアディルナ嬢が出てくる所だった。
(なんで?!!)
僕は訳が分からなかったが、アディだからの一言で片付けて、そのまま木の下で彼女が降りてくるのを待って声を掛けた。
「アディ……何をしているんだい?」
僕はいつもと同じく笑みを浮かべて、優しく声を掛けたつもりだったんだけれども、僕を見たアディは、まるで幽霊でも見たように、驚いていた。
「で……殿下?!」
彼女は、しどろもどろになりながら取り繕った。
「で……殿下こそ、こんな所で何をしているのですか?!」
「何って、今日会いに来るとこは前もって伝えてあったよね?」
この様子じゃ多分、忘れてるだろうなとは思ったが、僕はあえて彼女に投げ返した。
すると、案の定彼女は、焦ったように視線が泳いだのだった。
「そ、そうでしたけども、それなら応接室に居るのが普通では?なんでこんな所にいらっしゃるの?!」
「そうだね。そのつもりだったけど、屋敷に到着したら、なにやらこちらの方が騒がしかったのでね。様子を見に来てみたら、君が窓から抜け出してくるところだったので、ここで待ってみたんだ。」
僕はにっこりと笑いながら、腕を組み彼女の前に堂々と立ち構えた。
彼女が破天荒なのは今に始まったことじゃないけども、さすがに危険な行動は見過ごせない。
だから僕は、やんわりと彼女を注意しようと思ったのだけれども、僕が何かを言う前に、彼女が先に口を開いたのだった。
「ロキシード様、私分かってしまったんです。私、お父様とお母様の子じゃなかったんです!!だから、この家を出て行かなくてはならないんです!」
そう言うと、彼女は僕の目の前でポロポロと泣いてしまった。
(は?どう言う事だ?)
彼女の言う事は、大体突拍子ないが、今の発言はいつもに増して、あまりにも荒唐無稽だった。
流石の僕も困惑して、一瞬言葉に詰まってしまった。
「……そんな訳ないだろう。僕の婚約者候補に選ばれているんだから、その辺の調査はしっかりやってある筈だよ」
「ですが、私には魔力が無かったんです!!お父様とお母様の子なら、そんな事ありえません!!!」
「魔力が……無い?」
(今……魔力が無いって言ったのか??)
予想だにしない言葉に、僕の頭の中が一瞬真っ白になった。そんなの、信じられないし、認められない。
(だって魔力が無かったら……)
僕が口を開きかけたその時――
「「アディルナ!!」」
騒ぎを聞きつけたハルスタイン侯爵と奥方が駆け寄って、アディルナのことを抱きしめたのだった。
「お、お父様、お母様……」
「ウォーグルから聞いたよ。家を出るなんて、なんて馬鹿な事を考えるんだ」
「だって私、魔力……魔力が……」
目の前でのアディルナと侯爵たちとのやり取りを、僕は黙って見守った。
「魔力が無くたって、正真正銘お前は私たちの娘だよ」
泣きじゃくる彼女を、侯爵がそう言って抱きしめる様子を、言葉にできない複雑な感情が胸に広がるのを感じた。
(本当に彼女は……)
僕はざわめく心を押し留めて、とにかくアディルナが落ち着くのを待った。
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