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強制される未来
02
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繰り返される口吻に身体が火照りだした頃、
ドンドンドンーーー
文字通り、叩きつけるようなノックの音が響いた。思わず身体が跳ねる。ドアも揺れる。こんな野蛮かつ無粋なノックをする人物は、誰何する必要もないほどに明白だ。
「おーい、美澄ぃー。入るぞー」
春兄さまだ。
「ついでに、僕もー…って、雪兄ズルいぞ!抜け駆け!」
月兄さまもいた。
騒々しい人たちだ。昔からこの二人がくっつくと、何やかやと良からぬことをする。混ぜるな危険、の組み合わせだ。幼い頃からの習性は変わらないのか、端から聞く気がないのか。年頃の妹の部屋にズカズカ入ってくることを何度注意しても止めない、その学習能力のなさは如何ともしがたい。
「雪、独り占めは感心しないな」
春兄さまはそう言うと、雪兄さまに埋もれていた私の両脇をがしっと掴んで引き抜いた。そして幼い子供を抱えるように抱き上げると、クローゼットの前に着地させる。
「さあ、今日は兄さまの贈った服を着ようなぁ。どれがいいかなぁ」
おもむろに脱がせ始める。
「ちょっ!ちょっと、春兄さま!何するんですか!?」
「ん?着替えだが?」
「いやいやいや、私もう子供じゃないんですよ!自分で着替えられます!というか、それ以前にしれっと年頃の娘を裸に剥かないでくださいな!」
次々とボタンを外していく春兄さまの手をぎゅっと掴むと、何を思ったのか、ちゅっと口づけされた。
「お?照れてるのか?かーわいー」
茶化した声とニヤけた顔を思わず睨みつける。しかし、そんな威嚇が兄相手に通用するはずもない。
「遠慮するな。兄さまに任せてごらん」
顔を寄せて、軽く耳たぶを噛まれた。
「俺の可愛い可愛い妹を、世界中の誰よりも可愛くしてやるからさ」
低く甘くとろけるような声に、耳が侵食される。
「…悪戯が過ぎますよ、春兄さま」
悔しいけれど物凄くいい声なのだ、この兄は。普段はがさつにも見えるほど豪放磊落を装ってはいるが、人一倍繊細な春兄さまはとても低くて渋い声をしていて、間近で囁かれるだけで“孕みそう”な声らしい。パーティーで女性陣がうっとりした顔でそう言っていた。
そうこうするうちに抵抗も虚しく服は剥ぎ取られ、春兄さま趣味のいわゆるロリータ服を着せられていく。
「今日はアリスにしようなぁ。うちの妹は本当に可愛なぁ。あーっ、本ッ当に可愛いなあ!」
「…二回も言わなくて結構よ、兄さま」
もはや着せ替え人形の如く、半ば投げやりにされるがままになっている私を見て、雪兄さまと月兄さまがくすくす笑う。
「いや、本当に可愛いよ?さすが私たちの妹だ」
…笑いながら言われても嬉しくはない。その間も春兄さまは、もっと太れだの、俺が食べさせてやるだのと煩い。…まぁ、ザッハトルテを作ってくれるのは嬉しいけど。
「じゃあ、今度は僕が魔法をかけましょうか?アリスちゃん」
そう言うと、月兄さまは勝手知ったるとばかりにバスルームからメイク道具を取り出してきて、着替え終わった私をソファに座らせた。
「さぁ、目を閉じてーーー」
抵抗しても面倒なだけだと諦めて目を瞑る。ブラシの滑る感触がくすぐったい。時折かすめる指先に、びくりとする。
「…前から十分可愛いけど、最近は色っぽくなってきたね、お姫様は」
迷いのない動きで仕上げられていく化粧。一体何処で覚えたのか、誰を練習台にしたのか、器用なことだ。要領よく一通りこなせてしまう器用さは月兄さまの長所でもあり短所でもある。熱しやすく冷めやすい、癖のある面倒なタイプだ。
「じゃあ、仕上げだよ。目を開けて」
素直に目を開けると、思いの外至近距離に月兄さまの顔があった。近い、近すぎる。口唇に人差し指がのり、ゆっくりと紅が引かれていく。
「もうちょっと、口ひらいて」
くすぐったいような、恥ずかしいような、指先の動きに全ての意識が集中してしまう。触れられたところがヒリヒリするほどに、感覚が尖っていく。
「あ…兄さま…ぁ、もう…」
思わず止めようと伸ばした手を掴まれて、
「…っは、…えっろい顔」
口づけされた。
ドンドンドンーーー
文字通り、叩きつけるようなノックの音が響いた。思わず身体が跳ねる。ドアも揺れる。こんな野蛮かつ無粋なノックをする人物は、誰何する必要もないほどに明白だ。
「おーい、美澄ぃー。入るぞー」
春兄さまだ。
「ついでに、僕もー…って、雪兄ズルいぞ!抜け駆け!」
月兄さまもいた。
騒々しい人たちだ。昔からこの二人がくっつくと、何やかやと良からぬことをする。混ぜるな危険、の組み合わせだ。幼い頃からの習性は変わらないのか、端から聞く気がないのか。年頃の妹の部屋にズカズカ入ってくることを何度注意しても止めない、その学習能力のなさは如何ともしがたい。
「雪、独り占めは感心しないな」
春兄さまはそう言うと、雪兄さまに埋もれていた私の両脇をがしっと掴んで引き抜いた。そして幼い子供を抱えるように抱き上げると、クローゼットの前に着地させる。
「さあ、今日は兄さまの贈った服を着ようなぁ。どれがいいかなぁ」
おもむろに脱がせ始める。
「ちょっ!ちょっと、春兄さま!何するんですか!?」
「ん?着替えだが?」
「いやいやいや、私もう子供じゃないんですよ!自分で着替えられます!というか、それ以前にしれっと年頃の娘を裸に剥かないでくださいな!」
次々とボタンを外していく春兄さまの手をぎゅっと掴むと、何を思ったのか、ちゅっと口づけされた。
「お?照れてるのか?かーわいー」
茶化した声とニヤけた顔を思わず睨みつける。しかし、そんな威嚇が兄相手に通用するはずもない。
「遠慮するな。兄さまに任せてごらん」
顔を寄せて、軽く耳たぶを噛まれた。
「俺の可愛い可愛い妹を、世界中の誰よりも可愛くしてやるからさ」
低く甘くとろけるような声に、耳が侵食される。
「…悪戯が過ぎますよ、春兄さま」
悔しいけれど物凄くいい声なのだ、この兄は。普段はがさつにも見えるほど豪放磊落を装ってはいるが、人一倍繊細な春兄さまはとても低くて渋い声をしていて、間近で囁かれるだけで“孕みそう”な声らしい。パーティーで女性陣がうっとりした顔でそう言っていた。
そうこうするうちに抵抗も虚しく服は剥ぎ取られ、春兄さま趣味のいわゆるロリータ服を着せられていく。
「今日はアリスにしようなぁ。うちの妹は本当に可愛なぁ。あーっ、本ッ当に可愛いなあ!」
「…二回も言わなくて結構よ、兄さま」
もはや着せ替え人形の如く、半ば投げやりにされるがままになっている私を見て、雪兄さまと月兄さまがくすくす笑う。
「いや、本当に可愛いよ?さすが私たちの妹だ」
…笑いながら言われても嬉しくはない。その間も春兄さまは、もっと太れだの、俺が食べさせてやるだのと煩い。…まぁ、ザッハトルテを作ってくれるのは嬉しいけど。
「じゃあ、今度は僕が魔法をかけましょうか?アリスちゃん」
そう言うと、月兄さまは勝手知ったるとばかりにバスルームからメイク道具を取り出してきて、着替え終わった私をソファに座らせた。
「さぁ、目を閉じてーーー」
抵抗しても面倒なだけだと諦めて目を瞑る。ブラシの滑る感触がくすぐったい。時折かすめる指先に、びくりとする。
「…前から十分可愛いけど、最近は色っぽくなってきたね、お姫様は」
迷いのない動きで仕上げられていく化粧。一体何処で覚えたのか、誰を練習台にしたのか、器用なことだ。要領よく一通りこなせてしまう器用さは月兄さまの長所でもあり短所でもある。熱しやすく冷めやすい、癖のある面倒なタイプだ。
「じゃあ、仕上げだよ。目を開けて」
素直に目を開けると、思いの外至近距離に月兄さまの顔があった。近い、近すぎる。口唇に人差し指がのり、ゆっくりと紅が引かれていく。
「もうちょっと、口ひらいて」
くすぐったいような、恥ずかしいような、指先の動きに全ての意識が集中してしまう。触れられたところがヒリヒリするほどに、感覚が尖っていく。
「あ…兄さま…ぁ、もう…」
思わず止めようと伸ばした手を掴まれて、
「…っは、…えっろい顔」
口づけされた。
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