影牢 -かげろう-

帯刀通

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焦燥の狂宴

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「ちかちゃ……もっと噛んで……」

強く、もっと強く、頭の神経が焼き切れるまで激しく。男にしては僅かに膨らみのある胸を見せつけて、カリッと含まれるだけで下腹部がじんわりと疼く。

むずむずと何かが芽生えるのか、それとも蠢いているのか、ふわふわと力の入らない足の間からしたたる温かなぬめりが気持ち悪くて気持ち好い。何度も押し寄せる波のように、ぐるんぐるんと回転する滑車のように、快楽のうねりが勢いを増していく。

身体から唯一突き出している男の象徴は小さいながらも硬く勃ち上がり、僕が男であることを厭でも意識させる。先端からも蜜が滴り、下着はどんどん濡れていく。

「もっと、さわって……」

好きにしていい、と甘えた声で誘うほどに、僅かに肩が強張る。何を躊躇うことがあるのか、その劣情を思う存分僕にぶつければいい。

蛹から脱皮する蝶とは真逆だ。美しいドレスを剥ぎ取られた後に残るのは、いびつで貧相な子どもの身体。成熟することもなく、飾り付けられた羽根で羽ばたくことも出来ず、啼いて快楽を歌うだけのちっぽけなニセモノ。

緩く擦られるだけで昇りつめてしまいそうなほど、僕は未熟で青すぎる。他人の掌がこれほど熱いなんて知らなかった。何度も寸前まで追い詰められては押し止められる、繰り返される快楽という名の拷問に、恥も見栄もなく懇願するしかない。

「っちかっ、ちゃぁ……ぁあんっ!」

「……おね、おねっがぁっっ……ぃい」

イキタイ  イキタイ  モウイカセテ  アタマガオカシクナル  オネガイダカラ  モウ  い、いかせてぇぇっ

泣き喚く僕の声が、随分遠くに聞こえた。

狭まった視界は霞んでもう残像なのか実像なのか捉えることさえ難しい。愛兄さまは欲情しているのか興奮しているのか、もう僕には分からないけれど、僕を翻弄する指先は止まることなく身体中を這い回り、至るところに口付けの雨を降らせる。

鋭敏になりすぎた感覚は鈍感と同一なのだと初めて知る。

白地あからさまに疼く下腹部がきゅんきゅんと奥で収縮を繰り返す度に、足りない何かを補おうとする本能にあらがう余地を奪われていく。

ここに入れて欲しい。それしか考えられなくなる。もう僕は狂っているのかもしれない。可笑しいのはあの人じゃなく、僕なのかもしれない。

この肉欲に抗える者などいない。一つになりたい。融け合いたい。

どんな鎖よりも深く強く、身体の奥底にある芯の部分をがんじがらめにして離さない、醜いほど純粋な欲望が僕を塗り替えて埋め尽くしてしまう。もしかするとこれがαを求めるΩのさがなのか。

噛んで舐めてすすって含んでこすって握ってたかぶらせて、最後には僕をつらぬいて。
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