65 / 94
夢現の喪失
03
しおりを挟む
共有した感覚を切り離すことも無視することも出来ず、只管繋がれ抉られ擦り上げられ追い立てられていく欲望の渦に翻弄されながら悶えることしか、一身に官能を浴び続けることしか出来ない。
この僕が、αの中でも別格の才を有すると謳われた、この僕が。嬲られ操られ堕ちていくことしか出来ないとは。
これがΩの性だと云うのなら、何という業だろう。
もし責め苦にも似た退廃の法悦を、僕が共有することでほんの少しでもあの子が救われるのであれば。あの子の寄す処になれるのならば。
全ての感覚を遮断する。無になって、心を閉じて、罪の奈落まで深く堕ちていこう。
ーーーそう、目を背けたことが間違い、だったのだろうか。
虚ろな表情で只管腰を振る密と、それより遥かに壊れた瞳で揺らされている美澄と、床に転がり悶える僕と。
滑稽な構図。狂っている。熟れた果実のように、ねっとりと甘い蜜の匂い。わずかに動かす指先さえ官能に震える。しなやかな白魚のように跳ねる美澄の顔が、闇の中に浮かび上がって輝く。
虚空を彷徨っていた其の視線が、急速に焦点を合わせて、此方を向いた。瞳が、絡まり合った。
ーーーアレは、何だ?
美澄ではない。だが、他の誰だと?
瞳だけで射抜かれた。余りの鋭さに眼球が痺れた。圧倒された?この僕が。
美澄の皮を被っただけの似ても似つかぬ異質な存在が、美澄の中に巣喰っている。おぞましい。あの顔は、あの瞳は、
……今、僕は何を思った?
僕だけを見ろ、と。
僕だけを求めろ、と傲慢な欲望が視界を濁した。
『よもや斯様な場で貴様に見えるとはの……実に運命とは数奇なものよ……忘れはせぬぞ。
幾百の時が流れようとも、会稽の恥を雪がねば、吾が同胞に会わせる顔すら無い。重見天日とは将に是也。此度は己が無力に切歯扼腕するは貴様の方ぞ。
……ふん。死ぬより辛い目に遭えばよい』
頭蓋の中に響くソレは、口汚く僕を罵り、謗った。身に覚えのない悪行で非難される謂れは無い。
ーーーお前は誰だ。何故美澄の中にいる。
『是は吾が宿願の礎となる器。今は虚ろな洞じゃがの。吾が一族の神子を為す母胎、疎かにはせぬ。貴様が追い込んだのだ。またしても。是とて、貴様に遇わねば一片なりとも幸福な夢が見られようものを。
吾等に仇なすだけでは飽き足らず、是の運命まで悪戯に廻すとは余程に業が深いと見えるの。あなや、眼中之釘を吾が手にて抜けるとは望外の喜びよな。
見ておるがいい。己が宿業の末路を。無力さに震え、朽ちるがいい。怨気衝天、此度こそ吾が地獄に堕としてやろう』
凄艶な笑みを浮かべて、ソレは掻き消えた。
ーーー何がどうなっている?
考える余裕もなく、突然視界がブラックアウトした。
この僕が、αの中でも別格の才を有すると謳われた、この僕が。嬲られ操られ堕ちていくことしか出来ないとは。
これがΩの性だと云うのなら、何という業だろう。
もし責め苦にも似た退廃の法悦を、僕が共有することでほんの少しでもあの子が救われるのであれば。あの子の寄す処になれるのならば。
全ての感覚を遮断する。無になって、心を閉じて、罪の奈落まで深く堕ちていこう。
ーーーそう、目を背けたことが間違い、だったのだろうか。
虚ろな表情で只管腰を振る密と、それより遥かに壊れた瞳で揺らされている美澄と、床に転がり悶える僕と。
滑稽な構図。狂っている。熟れた果実のように、ねっとりと甘い蜜の匂い。わずかに動かす指先さえ官能に震える。しなやかな白魚のように跳ねる美澄の顔が、闇の中に浮かび上がって輝く。
虚空を彷徨っていた其の視線が、急速に焦点を合わせて、此方を向いた。瞳が、絡まり合った。
ーーーアレは、何だ?
美澄ではない。だが、他の誰だと?
瞳だけで射抜かれた。余りの鋭さに眼球が痺れた。圧倒された?この僕が。
美澄の皮を被っただけの似ても似つかぬ異質な存在が、美澄の中に巣喰っている。おぞましい。あの顔は、あの瞳は、
……今、僕は何を思った?
僕だけを見ろ、と。
僕だけを求めろ、と傲慢な欲望が視界を濁した。
『よもや斯様な場で貴様に見えるとはの……実に運命とは数奇なものよ……忘れはせぬぞ。
幾百の時が流れようとも、会稽の恥を雪がねば、吾が同胞に会わせる顔すら無い。重見天日とは将に是也。此度は己が無力に切歯扼腕するは貴様の方ぞ。
……ふん。死ぬより辛い目に遭えばよい』
頭蓋の中に響くソレは、口汚く僕を罵り、謗った。身に覚えのない悪行で非難される謂れは無い。
ーーーお前は誰だ。何故美澄の中にいる。
『是は吾が宿願の礎となる器。今は虚ろな洞じゃがの。吾が一族の神子を為す母胎、疎かにはせぬ。貴様が追い込んだのだ。またしても。是とて、貴様に遇わねば一片なりとも幸福な夢が見られようものを。
吾等に仇なすだけでは飽き足らず、是の運命まで悪戯に廻すとは余程に業が深いと見えるの。あなや、眼中之釘を吾が手にて抜けるとは望外の喜びよな。
見ておるがいい。己が宿業の末路を。無力さに震え、朽ちるがいい。怨気衝天、此度こそ吾が地獄に堕としてやろう』
凄艶な笑みを浮かべて、ソレは掻き消えた。
ーーー何がどうなっている?
考える余裕もなく、突然視界がブラックアウトした。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる