Ag ~エイジ~ 白銀の刃

ひるま(マテチ)

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21.4分の1殺す男、痛みを知る者

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 白銀の刃による袈裟斬り!!

 銃弾をも弾き返す、あのフィーエの体が。

 破片を撒き散らせて崩れ落ちてゆく。

「エイジ!!」
 遅れてやって来た昌樹がエイジの名を呼んだ。

 ツカツカと歩み寄るとエイジの胸座を掴んだ。
「お前…」掴む手に力が込められる。

「助かったわ。ありがとう、エイジ君」
「スゴイですネー」
 静夜たちがエイジに礼を述べる中、なおも昌樹の手には力が込められたまま。

「俺たちに!人の人生の4分の1を奪う権利なんて無いだろ!?それをお前は」

「何を仰っているんデス?えと、マサキさん」
 事情を知らない理依は、二人が仲互いしていると思い込んでいるようだ。

「キミに説明している場合じゃ…」
 言ったものの、理依の背後に立つ静夜の姿を目にすると、事情を話さない訳にはいかない。

「先生…ちょっとお話が」
 直視しないで声を掛けてくる昌樹に静夜は頷いて見せ。

「人間の体の中から出てきたのよね。この化け物も、エイジ君も」
 驚いた表情を見せたのは、昌樹はもちろん、理依も衝撃のあまり口を閉じられずにいた。

「それを知っているから、私たちはここへ来た。もっとも、エイジ君については彼がこの化け物を倒した事で確信が持てたわ」

「え?」
 銃弾をものともしない姿を目の当たりにしていない昌樹には、それを確信付ける理由になるとは、とても思えなかった。

 そんな事よりも。

 4分の1とはいえ殺人を犯したエイジの処遇を考えねば。

 すると、その時。

「ママ!」
 キナコがようやくオフィスへ到着した。

「ママ?ママ?どこなの?」
 荒らされ血生臭いオフィスの中を母の名を呼びながら捜し続ける。

 途中、転がっている部位に目を背けつつも、なおも母の姿を探し続ける。

 そして。

 変わり果てた姿の母を見つけた。

「ママ?返事をして。ママ?」
 亡骸に触れようとするキナコの肩に、静夜がそっと手を添えた。

「残念だけど、もう…」
 その手を、キナコは勢いよく払いのけ。

「ママをこんなにしたヤツは何処なの!?」
 血走った眼差しで辺りを見渡し。と、電源コードから解放されつつあるスノーの姿を捉えると。

「スノー!!」
 心の奥からの叫びと共に、彼女の身体から黄色一色の男性が飛び出す。

 スノー目がけて一直線に突進するツェー。
 そんなツェーに昌樹はタックルで彼の動きを遮った。

「止めろ、キナコ。彼はもうエイジに4分の1殺されている」

「ママをこんなにしたヤツが4分の1程度で済まされるかよぉッ!!」
 憎しみに駆られたキナコは、近くにあった置時計を手に、スノーへと駆けてゆく。

「待ちなさい」
 静夜がキナコの腕を掴むも、置時計を振り回されると、手を離さざるを得ない。

 だが。

 両手でキナコの胸を突いて彼女に尻餅をつかせた。

「痛ってぇ!何すんだよ!クソババァ!」
 暴言を吐くキナコにイラッと来た。それでも。

「痛いのなら解るでしょ?人を殺せば、その痛みを一生心の中に残す事になるのよ」

「なるもんか!ジャマするな!」

「いい?私は貴女が普通の精神の持ち主だと信じているから言ってるの。普通の人はね、大きな罪を犯せば罪悪感に飲まれて最悪自ら命を絶つ事だってあるのよ」

「ならない!」
 否定するキナコの両目から涙が零れ落ちた。それでも、ただひたすらに「ならない。ならないんだから!」否定し続ける。

「なるわ。断言する。貴女は人の死に涙を流せる人だから。優しいお母さんに育てられたのね」
 静夜の言葉に、ついにキナコは声を上げて泣き出した。
 そんなキナコを静夜はそっと優しく抱きしめる。

「スゴいっしょ?ウチの先生」
 タックルした状態でいる昌樹とツェーに自慢げに告げる理依だった。

 流石は弁護士先生。言い包めるのはお手の物てか。


 エイジがダガーナイフを手に取り、構えて見せた。

「4分の1を失ったって?」
 ユラリと立ち上がるスノーがエイジに訊ねた。

「たかが人間を痛めつけるだけならコピーのコピーで十分じゃないかな?」

「何を言っている?貴様」
 エイジは手にするダガーナイフを逆手に持ち替えた。

「8分の1を僕は失った訳だけど、これからの僕はどんな生活を送るんだろうね」
 訊ねつつ、窓辺へと壁伝いに歩み寄る。

「逃がすか!」
 逃走を阻止せんと飛び掛かるエイジ。
 彼のダガーナイフがスノーを斬り付けた。

 チュイン!☆


 ダガーナイフが弾かれた。


 スノーの肩からチェーンソーの手をしたカマキリの腕が。
 フィーエは未だ健在だ。

「随分なご挨拶じゃないか。エイジ君。キミの能力は拝見させてもらったよ。では、また近い内に」

 告げて窓ガラスを突き破ると、スノーは階下へと落ちていった。

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