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[4]主と従
-38-:国民が払った血税を、何でオマエが引き起こした人災にわざわざ注がなきゃイカンのだ
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小型盾がベルタに対して“面”つまり垂直に立てて向けられた。
てっきり手で握っているものと思われていた盾は、実は肘関節前辺りから伸びている2本の細い棒で固定されていた。
盾が上下に開いて瞬時に閉じた。
“試し噛み”をあえて披露して見せたのだ。
「アイツ・・とことん舐めクサっとるな・・。近づいたらアレで噛んだる言うとるで」
「そのようだな」
そのくせ、いずれかの刀剣を手にしたら全速で後退するだろうし、敵を知る相手がこれほどまでに厄介だとは。
一向に回復しない魔力残量・・どころか、ちょっと動いただけで11%にまで下がっている。
「アレレ?仕掛けてこないんですかぁ?だったら、こちらからも仕掛けませーん。あと少しで魔力が回復するんでね。回復したら悪夢とやらをとくとお見せして差し上げますよ」
やはりクロックアップ狙い。そもそも何故、まともに戦いもしていないくせに、そんなに魔力残量を減らしているのか?
それが突破口になるかもしれない。
鳥類の骨格は、細くなっているか、中が空洞状でとても軽い。しかも胃に内容物を残さないように、強力な胃酸で消化し、すぐさま排泄してさらなる軽量化を図っている。
速力の高いソネも同様で、たくさんのものを犠牲にして機動力を獲得しているのだろう。
何が魔力を大量に消費しているのか?もともと容量が少ないのか?魔力に重さがあるのならばそれも有りうるが。
ベルタの腕に目をやった。
手首から肘辺りまで伸びている筋組織のようなシリンダーが映る。
「アイツ・・運動効率が悪いのか」
ガソリン車で言えば燃費が悪いということ。
それを知ったところで状況が好転するはずも…と思ったその時、ヒューゴの目に回避推力ゲージが映った。半分どころか、ほとんど減っていない。
「これだ!」
ベルタの操作がアクションゲームと似ているのならば、これは逆転アイテムに成り得る。
「それにしても、キャサリンもおバカだよねえ。召喚すれば、まだライフルもあるのに、マスターに一言『射撃戦に変えたらどうか?』くらい進言してやれば良かったのに。ロクに使えもしない剣で挑んで勝てるとでも思ったのかなー」
10代くらいの若い女性の声。このゾンビのソネも女性だった。が、ヒューゴは全く羨ましく思わなかった。喋りが頭の悪そうな女性は好みでは無い。
あえて剣で挑んだヒデヨシの心意気には改めて感服する。彼なりのポリシーがあったのだろう。
「あの女、尽くしていれば男が傍にいてくれると思っていること自体が“重い”て気づかないのかなー。あの女さ、男が町に出稼ぎに行っている間、男の畑も世話していたんだよ。男が余所で女作っているとも知らずにずっと。でさ、男が春になっても帰って来ないのに、また畑耕して、それで過労で病気になって死んじゃって、不憫に思った村人たちが彼女にレースのベールを被せて埋葬したら、骨になっても男を待ち続けるために地面から這い出して、夜な夜な畑を耕していたんだよー。男なんて死んだ女の事なんか、すぐに忘れるのにさ。きゃははは」
「笑とるけど、面白いか?アレ」
ルーティには、まだまだ早い女の熱情。彼女は怒りさえも覚えないだろう。
女の敵は女と言うけれど、いなくなった女性を笑うのはいかがなものかと思う。
「ホント愚かだよねぇ。グレネード弾を打ち上げた時も、さっさとヒデヨシに逃げるよう促してくれていたら、僕がこんな手間を取らずに済んだものを」
「逃げるやと?コラァ!アイツは街の人を守るためにグレネード弾を墜としに行きよったんやぞ!お前に正気か!て言いたいわッ!お前にも家族はおるやろうし、仲間もおるんやろうが!」
こう見えてもルーティはヒデヨシの思いを酌んでいた。彼の代わりに怒りをぶつけてくれている。
「いるよ。でもね、一度リセットしようよ。いなくなったら、いなくなったで人間何とかやっていけるだろうし、それに30年前に隕石が落下したときだって国や企業が災害援助で復興してくれて以前より大きな都市になったじゃない。あれのおかげで財閥がいくつも入り込んできて豊かになったんだよ。“復興景気”ってヤツさ。グレネードが爆発していたら、前よりも発展していたかもね」
「アイツ・・アホや・・。なぁ、そう思わんか?ヒュー―」
言いつつ振り返ったルーティの顔が強張った。
ヒューゴの顔の血管という血管が浮き立っている。
(何やコレ?眼も血走っとるやんけ。コイツ・・あんまり無茶すると血管切れるで)
思うも声すら掛けられないくらいの気迫。気持ちコクピット内の気温が上昇しているような気もする。
「復興景気?何だソレ?あのな、国が動くということは税金が動くという事だぞ。解っているのか?国民が払った血税を、何でオマエが引き起こした人災にわざわざ注がなきゃイカンのだ」
「えぇー・・?怒るトコロはそこ違うやろ・・。家族とか仲間とか居なくなっても構わんヌカしとるトコロ違うんけ?」
「あちゃー・・」
まさかのまさか。ここに来てヒューゴが最も嫌う“お金の無駄遣い”的な話題が立つとは思わなかった。
今まで勝ちが見えないと感じていたクレハは、彼を怒らせたミツナリには同情しないものの、せめて「死ぬな」と助言してやりたい思いに駆られた。
「ヒューゴ、落ち着くんだ」
ベルタの声が耳に届いていないのか?ヒューゴは制止に耳を貸さずにスロットルを上げてベルタの騎体をソネに突進させた。
てっきり手で握っているものと思われていた盾は、実は肘関節前辺りから伸びている2本の細い棒で固定されていた。
盾が上下に開いて瞬時に閉じた。
“試し噛み”をあえて披露して見せたのだ。
「アイツ・・とことん舐めクサっとるな・・。近づいたらアレで噛んだる言うとるで」
「そのようだな」
そのくせ、いずれかの刀剣を手にしたら全速で後退するだろうし、敵を知る相手がこれほどまでに厄介だとは。
一向に回復しない魔力残量・・どころか、ちょっと動いただけで11%にまで下がっている。
「アレレ?仕掛けてこないんですかぁ?だったら、こちらからも仕掛けませーん。あと少しで魔力が回復するんでね。回復したら悪夢とやらをとくとお見せして差し上げますよ」
やはりクロックアップ狙い。そもそも何故、まともに戦いもしていないくせに、そんなに魔力残量を減らしているのか?
それが突破口になるかもしれない。
鳥類の骨格は、細くなっているか、中が空洞状でとても軽い。しかも胃に内容物を残さないように、強力な胃酸で消化し、すぐさま排泄してさらなる軽量化を図っている。
速力の高いソネも同様で、たくさんのものを犠牲にして機動力を獲得しているのだろう。
何が魔力を大量に消費しているのか?もともと容量が少ないのか?魔力に重さがあるのならばそれも有りうるが。
ベルタの腕に目をやった。
手首から肘辺りまで伸びている筋組織のようなシリンダーが映る。
「アイツ・・運動効率が悪いのか」
ガソリン車で言えば燃費が悪いということ。
それを知ったところで状況が好転するはずも…と思ったその時、ヒューゴの目に回避推力ゲージが映った。半分どころか、ほとんど減っていない。
「これだ!」
ベルタの操作がアクションゲームと似ているのならば、これは逆転アイテムに成り得る。
「それにしても、キャサリンもおバカだよねえ。召喚すれば、まだライフルもあるのに、マスターに一言『射撃戦に変えたらどうか?』くらい進言してやれば良かったのに。ロクに使えもしない剣で挑んで勝てるとでも思ったのかなー」
10代くらいの若い女性の声。このゾンビのソネも女性だった。が、ヒューゴは全く羨ましく思わなかった。喋りが頭の悪そうな女性は好みでは無い。
あえて剣で挑んだヒデヨシの心意気には改めて感服する。彼なりのポリシーがあったのだろう。
「あの女、尽くしていれば男が傍にいてくれると思っていること自体が“重い”て気づかないのかなー。あの女さ、男が町に出稼ぎに行っている間、男の畑も世話していたんだよ。男が余所で女作っているとも知らずにずっと。でさ、男が春になっても帰って来ないのに、また畑耕して、それで過労で病気になって死んじゃって、不憫に思った村人たちが彼女にレースのベールを被せて埋葬したら、骨になっても男を待ち続けるために地面から這い出して、夜な夜な畑を耕していたんだよー。男なんて死んだ女の事なんか、すぐに忘れるのにさ。きゃははは」
「笑とるけど、面白いか?アレ」
ルーティには、まだまだ早い女の熱情。彼女は怒りさえも覚えないだろう。
女の敵は女と言うけれど、いなくなった女性を笑うのはいかがなものかと思う。
「ホント愚かだよねぇ。グレネード弾を打ち上げた時も、さっさとヒデヨシに逃げるよう促してくれていたら、僕がこんな手間を取らずに済んだものを」
「逃げるやと?コラァ!アイツは街の人を守るためにグレネード弾を墜としに行きよったんやぞ!お前に正気か!て言いたいわッ!お前にも家族はおるやろうし、仲間もおるんやろうが!」
こう見えてもルーティはヒデヨシの思いを酌んでいた。彼の代わりに怒りをぶつけてくれている。
「いるよ。でもね、一度リセットしようよ。いなくなったら、いなくなったで人間何とかやっていけるだろうし、それに30年前に隕石が落下したときだって国や企業が災害援助で復興してくれて以前より大きな都市になったじゃない。あれのおかげで財閥がいくつも入り込んできて豊かになったんだよ。“復興景気”ってヤツさ。グレネードが爆発していたら、前よりも発展していたかもね」
「アイツ・・アホや・・。なぁ、そう思わんか?ヒュー―」
言いつつ振り返ったルーティの顔が強張った。
ヒューゴの顔の血管という血管が浮き立っている。
(何やコレ?眼も血走っとるやんけ。コイツ・・あんまり無茶すると血管切れるで)
思うも声すら掛けられないくらいの気迫。気持ちコクピット内の気温が上昇しているような気もする。
「復興景気?何だソレ?あのな、国が動くということは税金が動くという事だぞ。解っているのか?国民が払った血税を、何でオマエが引き起こした人災にわざわざ注がなきゃイカンのだ」
「えぇー・・?怒るトコロはそこ違うやろ・・。家族とか仲間とか居なくなっても構わんヌカしとるトコロ違うんけ?」
「あちゃー・・」
まさかのまさか。ここに来てヒューゴが最も嫌う“お金の無駄遣い”的な話題が立つとは思わなかった。
今まで勝ちが見えないと感じていたクレハは、彼を怒らせたミツナリには同情しないものの、せめて「死ぬな」と助言してやりたい思いに駆られた。
「ヒューゴ、落ち着くんだ」
ベルタの声が耳に届いていないのか?ヒューゴは制止に耳を貸さずにスロットルを上げてベルタの騎体をソネに突進させた。
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