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ワプスハント!
3:急転落下!
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伶桜は就寝に入るにも関わらずに、タブレットのメールを確認した。
良くない習慣とは解ってはいるけれど。
「スゴいな・・・」
メールを開いた瞬間、思わず口から漏れ出た。
アリエスから送られてきたメールは5件。
いずれも仕事の依頼ばかりだった。
夏も終わりゆくこの季節。スズメバチやアシナガバチの活動はより活発なものへと変わってゆく。
彼らも子孫を遺す事に必死なのだ。
だから気が立って攻撃的になる。
近づくものは全て敵。解らないでもない。
それでも、家や通学・通勤路に巣を作るのは良くない。駆除されても文句は言えない。
危険な害虫とはいえ、生物を殺すことに少しながらも後ろめたさを感じている伶桜は、そう自分に言い聞かせて仕事に取り組んでいる。
たまにハチに襲われる夢を見てしまう事もあるが、そういった罪悪感が見せてしまうものなのだろうと、自分なりに理解もしている。
「アリエスのヤツは平気なのだろうか?」
伶桜は元々、今ではAPと呼ばれるドローンを使ったドローンレーサーというeスポーツアスリートとして活躍していた。
そんな彼をある芸人が声を掛け、彼をドローン芸人としてデビューさせた。
超難関な曲芸もお手のもの。伶桜は一躍脚光を浴びてネットやテレビに顔を出すようになった。
だけど。
芸能世界に引き入れてくれた先輩芸人に頼まれて出席したパーティーが、まさかの反社会的組織のものだったなんて・・・。
先輩芸人はテレビの画面で、涙ながらに謝罪をしていたけど、自分たちにはその謝罪を向ける事はしなかった。
自分の事だけで精一杯なんだなぁと、当事者でありながらも、何故か外からの傍観者として彼を見ていた。
そんな伶桜も当事者として、当然責任を問われた。
出演を予定していた番組はもとより、全てのスケジュールが白紙状態に。
謝罪に回る日々を過ごした。
芸人職だけでなく、本職だったドローンレーサーとしても資格を剥奪され、戻るには一からライセンスを取得しなければならない。
何とかライセンスは取得したものの、謹慎処分として1年間はどのレースにもエントリーできない。
全てを一から出発するつもりでいたのに、スタート地点にすら立たせてもらえない。
収入よりも、行動を制限されてしまう事に、伶桜は不満を覚え、日々悶々と暮らしてきた。
そんな時に。
アリエスと名乗る人物からメールが届いた。
どこからメールアドレスを知り得たのか?不審に思いつつもメールタイトルに注意が向いて、思わずメールを開いてしまった。
記されていたメールのタイトルは。
『木本・伶桜サマ。貴方のレーサーとしての腕を買いたい』
理由は解らないが、それよりも、どのような手段をもって他人のメールアドレスを特定したのか、そんな事なんてどうでもよくなった。
再び飛べる!
それが叶うのなら、相手がどんな危険な人物だろうが、とにかく話だけは聞いてやる。
伶桜はメールを開いた。
『ようこそタイラントホースへ』から始まり。
ー○○市の○○宅に居座ったスズメバチの駆除を手伝ってください。
ご承諾頂けるのなら、木本・伶桜様宅へAP(アンチペスト)を送りますので、設定した後、こちらが指示する住所へ宅配で送ってください。ー
伶桜は疑いも迷いもなく、これを承諾。
後日送られてきたのが、市販のAPだった。
「こんなものでスズメバチを駆除?」
確かに武器として槍は付属していた。だけど。
伶桜の本職はレーサーであって、武器を持って戦う事ではない。
確かに、武器を用いてAP同士を戦わせるゲームもあるけれど。
とにかく、せっかくオファーを受けておきながら、だらしない動きは見せられない。
伶桜は練習した。とことん練習した。日は限られているけど、寝る間も惜しんで必死に練習した。
そして、APを送付しようと梱包作業に取り掛かった、その時。
市販のAPか・・・。
レーサーの頃はスポンサーが付いていてドローンも派手にラッピングされれたものを使っていた。懐かしい、栄光と呼ぶにふさわしい、輝かしい頃の思い出。
ふと思い出したものの、今からラッピングやペイントを施すには時間が無い。ならば。
レーサーの時に使っていたAPの頭部を付けて梱包、発送した。
その頭部こそが、レーサー、芸人時に名乗っていた"れおーね”の愛機”ライオンさん”のものだった。
これを見た人が俺を思い出してくれるかな・・・。微かな期待を込めて。
だけど。
初出動は散々たるものだった。
やはり付け焼き刃ではどうにもならない。
伶桜のライオンさんは、あっという間にスズメバチに集られ高さ9メートルから落下、無残にもバラバラに散ってしまった。
結果としてスズメバチの巣は駆除できたものの、伶桜としては不甲斐ない思いでいっぱいだった。
「よくやってくれたわね。どう?私の会社の社員として働いてみない?」
社長のアリエスは怒る事もせずに、ヘッドハンティングさえしてくれる。
「どうして俺を?俺は今日、失敗してしまったんだぞ」
「敵は100を越す大軍勢。だけど、こちらはバイトを揃えてもせいぜい8人だったのよ。犠牲は付き物。それにね、貴方に送ったAPは中古で、私のお財布は痛くもかゆくも無いのよ」
そんな事を気にしているんじゃない。役に立てなかったのが何よりも申し訳なく思う。
「私ね、最初メールを送った時に、ふざけているのか!と怒られると思ったの。だけど貴方は仕事を手伝ってくれた。しかも本気で取り組んで頑張ってくれた。貴方は誠実な人なんだ、私の目に狂いは無かった」
良い人扱いしてくれるけど、本音を言えばお金を稼ぎたかったし、それに何よりもドローンを飛ばせられるのが嬉しかった。
撃墜という最後だけは、今でも納得できていないけど。
「だから改めて貴方を招きたい。我がタイラントホースへ」
アリエスの申し出に、伶桜は迷う事無く応じた。
「頼り無い俺だけど、これからもヨロシク。社長」
「アリエスで結構よ。それと、中古とはいえAPを壊してくれたのだから今後は自前のAPを使ってちょうだい。貴方、元AP乗りなんでしょう」
APとは、あくまでも害虫駆除に用いられるドローンの名称だ。
AP乗りか・・・。
ドローンレーサーと比べると、響きはよくないけれど、仕事内容が分かる良い呼び名だと思う。
アリエスとレオの契約はここに成立した。
+ + + +
この時、ある闇サイトで、『☆☆首相襲撃計画☆☆のスレッドが閉じられました』のメッセージが表示された。
募集スレッドが立ってから、わずか1日と14時間の出来事だった。
良くない習慣とは解ってはいるけれど。
「スゴいな・・・」
メールを開いた瞬間、思わず口から漏れ出た。
アリエスから送られてきたメールは5件。
いずれも仕事の依頼ばかりだった。
夏も終わりゆくこの季節。スズメバチやアシナガバチの活動はより活発なものへと変わってゆく。
彼らも子孫を遺す事に必死なのだ。
だから気が立って攻撃的になる。
近づくものは全て敵。解らないでもない。
それでも、家や通学・通勤路に巣を作るのは良くない。駆除されても文句は言えない。
危険な害虫とはいえ、生物を殺すことに少しながらも後ろめたさを感じている伶桜は、そう自分に言い聞かせて仕事に取り組んでいる。
たまにハチに襲われる夢を見てしまう事もあるが、そういった罪悪感が見せてしまうものなのだろうと、自分なりに理解もしている。
「アリエスのヤツは平気なのだろうか?」
伶桜は元々、今ではAPと呼ばれるドローンを使ったドローンレーサーというeスポーツアスリートとして活躍していた。
そんな彼をある芸人が声を掛け、彼をドローン芸人としてデビューさせた。
超難関な曲芸もお手のもの。伶桜は一躍脚光を浴びてネットやテレビに顔を出すようになった。
だけど。
芸能世界に引き入れてくれた先輩芸人に頼まれて出席したパーティーが、まさかの反社会的組織のものだったなんて・・・。
先輩芸人はテレビの画面で、涙ながらに謝罪をしていたけど、自分たちにはその謝罪を向ける事はしなかった。
自分の事だけで精一杯なんだなぁと、当事者でありながらも、何故か外からの傍観者として彼を見ていた。
そんな伶桜も当事者として、当然責任を問われた。
出演を予定していた番組はもとより、全てのスケジュールが白紙状態に。
謝罪に回る日々を過ごした。
芸人職だけでなく、本職だったドローンレーサーとしても資格を剥奪され、戻るには一からライセンスを取得しなければならない。
何とかライセンスは取得したものの、謹慎処分として1年間はどのレースにもエントリーできない。
全てを一から出発するつもりでいたのに、スタート地点にすら立たせてもらえない。
収入よりも、行動を制限されてしまう事に、伶桜は不満を覚え、日々悶々と暮らしてきた。
そんな時に。
アリエスと名乗る人物からメールが届いた。
どこからメールアドレスを知り得たのか?不審に思いつつもメールタイトルに注意が向いて、思わずメールを開いてしまった。
記されていたメールのタイトルは。
『木本・伶桜サマ。貴方のレーサーとしての腕を買いたい』
理由は解らないが、それよりも、どのような手段をもって他人のメールアドレスを特定したのか、そんな事なんてどうでもよくなった。
再び飛べる!
それが叶うのなら、相手がどんな危険な人物だろうが、とにかく話だけは聞いてやる。
伶桜はメールを開いた。
『ようこそタイラントホースへ』から始まり。
ー○○市の○○宅に居座ったスズメバチの駆除を手伝ってください。
ご承諾頂けるのなら、木本・伶桜様宅へAP(アンチペスト)を送りますので、設定した後、こちらが指示する住所へ宅配で送ってください。ー
伶桜は疑いも迷いもなく、これを承諾。
後日送られてきたのが、市販のAPだった。
「こんなものでスズメバチを駆除?」
確かに武器として槍は付属していた。だけど。
伶桜の本職はレーサーであって、武器を持って戦う事ではない。
確かに、武器を用いてAP同士を戦わせるゲームもあるけれど。
とにかく、せっかくオファーを受けておきながら、だらしない動きは見せられない。
伶桜は練習した。とことん練習した。日は限られているけど、寝る間も惜しんで必死に練習した。
そして、APを送付しようと梱包作業に取り掛かった、その時。
市販のAPか・・・。
レーサーの頃はスポンサーが付いていてドローンも派手にラッピングされれたものを使っていた。懐かしい、栄光と呼ぶにふさわしい、輝かしい頃の思い出。
ふと思い出したものの、今からラッピングやペイントを施すには時間が無い。ならば。
レーサーの時に使っていたAPの頭部を付けて梱包、発送した。
その頭部こそが、レーサー、芸人時に名乗っていた"れおーね”の愛機”ライオンさん”のものだった。
これを見た人が俺を思い出してくれるかな・・・。微かな期待を込めて。
だけど。
初出動は散々たるものだった。
やはり付け焼き刃ではどうにもならない。
伶桜のライオンさんは、あっという間にスズメバチに集られ高さ9メートルから落下、無残にもバラバラに散ってしまった。
結果としてスズメバチの巣は駆除できたものの、伶桜としては不甲斐ない思いでいっぱいだった。
「よくやってくれたわね。どう?私の会社の社員として働いてみない?」
社長のアリエスは怒る事もせずに、ヘッドハンティングさえしてくれる。
「どうして俺を?俺は今日、失敗してしまったんだぞ」
「敵は100を越す大軍勢。だけど、こちらはバイトを揃えてもせいぜい8人だったのよ。犠牲は付き物。それにね、貴方に送ったAPは中古で、私のお財布は痛くもかゆくも無いのよ」
そんな事を気にしているんじゃない。役に立てなかったのが何よりも申し訳なく思う。
「私ね、最初メールを送った時に、ふざけているのか!と怒られると思ったの。だけど貴方は仕事を手伝ってくれた。しかも本気で取り組んで頑張ってくれた。貴方は誠実な人なんだ、私の目に狂いは無かった」
良い人扱いしてくれるけど、本音を言えばお金を稼ぎたかったし、それに何よりもドローンを飛ばせられるのが嬉しかった。
撃墜という最後だけは、今でも納得できていないけど。
「だから改めて貴方を招きたい。我がタイラントホースへ」
アリエスの申し出に、伶桜は迷う事無く応じた。
「頼り無い俺だけど、これからもヨロシク。社長」
「アリエスで結構よ。それと、中古とはいえAPを壊してくれたのだから今後は自前のAPを使ってちょうだい。貴方、元AP乗りなんでしょう」
APとは、あくまでも害虫駆除に用いられるドローンの名称だ。
AP乗りか・・・。
ドローンレーサーと比べると、響きはよくないけれど、仕事内容が分かる良い呼び名だと思う。
アリエスとレオの契約はここに成立した。
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