好きになったのは魔王の息子~私達幸せになります!~

蒼衣翼

文字の大きさ
9 / 14
魔族と人族

9 魔族と人族との戦い

しおりを挟む
 魔族と人族の争いは、政治的な不一致などという思想の違いから来るものというよりは、もっと本能的な問題から発生していた。
 簡単に言うと魔族の大半は人族を食物と考えているのである。
 人族からしてみれば負ければ餌にされるのだから必死になるのは当然だ。
 魔族側からしてみれば、食べ物がそこにあるから狩るという認識になる。

 とは言え、それが全てでもない。
 魔族のなかにも人族を食物としていないものも存在する。
 それどころか、実は多彩な種族を内包する魔族には人族を食料としない種族のほうが多い。
 ならばなぜ魔族全体と人族全体の戦いになってしまっているのかと言えば、人族を餌とする種族が強いからだ。
 魔族は強き者に従う。
 強き者が人族が欲しいと言えば、弱い種族はそれに従うしかないのである。

 魔族のなかに四大種族とされているものがあり、それぞれに英雄がいる。
 一つは吸血鬼ヴァンパイア
 永遠の闇を生きるモノたち。
 一つは人狼ライカンスロープ
 強き肉体を持つ不死の存在。
 一つは蜘蛛人間アラクネー
 あらゆる場所に網を張る、女王に率いられた最多種族。
 一つは竜人ドラゴニュート
 魔法に長け、あらゆる攻撃を無効化する鱗を持つモノたち。

 この四大種族こそが実質的な魔族の中心であり、魔王はその四大種族を統率することで魔族全体を支配していた。
 魔王が存在しない時代にはこの四大種族は互いに争い合い、組織的に動くことはなかった。
 そのため人族も散発的に発生する襲撃に対応出来ていたのだ。
 しかし魔王が現れると、人族の旗色は一気に悪くなる。

 全ての魔族が協力して攻めて来れば人族に対処する方法はないに等しい。
 そこで人族が考え出したのが暗殺だ。
 少人数で魔族領内に斬り込み、魔王を討つ。
 プライドの高い魔族は少人数相手なら少数で対応するので、魔族特効を持つ聖なる力を持つ勇者なら切り崩せるのである。

 そうやって魔族と人族、魔王と勇者の戦いが始まり、今現在で魔王は十代目が討ち取られ、勇者は四十八代目が魔王討伐に成功した。

「このように、勇者は人族の切り札であり、その勇者に聖なる力を授けることが出来る光の神殿は人族の救い主であると言えるでしょう」

 ジークとクイネはほかの子どもたちと共に戦史の授業を受けていた。
 授業と言ってもこれは高位の武官のためのカリキュラムであり、庶民の子どもは九歳までで基礎の勉強を終えてそれぞれ将来に備えた見習いとして働いている。
 ジークは高位武官になる訳ではないのだが、クイネの世話役として一緒に授業を受けていた。

 そうなると当然面白く思わない者も出る。
 剣術訓練のときにはその不満がジークへのいじめに近いシゴキとして表れた。
 呆れたことに、子どもだけでなく、大人の教官までそれに加担していたのだ。

「貴人を守護する者は多人数に対処する術を学ばなければならない」

 といういかにもな理由をつけてはいたが、ジーク一人を五人に袋叩きにさせる訓練を行ったのである。
 貴人警護など口実なのは明らかだった。
 ジークに対する五人というのもジークより年上の十八前後の少年たちだ。
 彼らは既に騎士見習いとして教えを受けていて、まだ本格的な訓練が始まってないジークからすれば全員が格上の存在だった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください

楠結衣
恋愛
田舎の薬屋に生まれたエリサは、薬草が大好き。薬草を摘みに出掛けると、怪我をした一匹の子犬を助ける。子犬だと思っていたら、領主の息子の狼獣人ヒューゴだった。 ヒューゴとエリサは、一緒に薬草採取に出掛ける日々を送る。そんなある日、魔王復活の知らせが世界を駆け抜け、神託によりヒューゴが勇者に選ばれることに。 ヒューゴが出立の日、エリサは自身の恋心に気づいてヒューゴに告白したところ二人は即結婚することに……! 「エリサを泣かせるなんて、絶対許さない」 「エリサ、愛してる!」 ちょっぴり鈍感で薬草を愛するヒロインが、一途で愛が重たい変態風味な勇者に溺愛されるお話です。

前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!

ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。 前世では犬の獣人だった私。 私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。 そんな時、とある出来事で命を落とした私。 彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。

処理中です...