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運命の学園生活
悲劇を回避するために
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イツキは悩んでいた。
もちろん大事なお嬢様ことローズのためにである。
イツキの仕えるグリーンガーデン公爵家の長女ローズは、イツキが前世で見知っていた乙女ゲームの悪役令嬢というポジションだった。
乙女ゲームの悪役令嬢と言えば、最終的に不幸になることが決っていると言っていい。
なんとしてもその事態だけは避けなければならないとイツキは思うのだ。
その具体的な対策としては、物語のテーマとなっている「楽園の扉」を、ゲーム開始前の時点で開放してしまうというのが有効だと考えた。
ローズを始めとして、その周辺の人物は身分も高いし、頭もいい、しかも行動力がある。
ある意味、さすがゲームのキャラだとイツキは思う。
現実に生きている相手に対する評価としては、失礼極まりないが、自分の思考にハマっているイツキが気づくことはない。
「しかし、学生の本業に真面目に邁進して、ちっとも楽園の扉探しに取り掛かってくれねえ!」
イツキは、お城のように豪華な学園の回廊にある柱の傍らで、魂の叫びを発した。
教室と教室を繋ぐ廊下の一部なので、当然無人ではなく、周囲には人がいる。
イツキの様子を見て、数人の少女グループが、くすくすと笑って通り過ぎた。
「あっ、気にしないで」
イツキは、ひらひらと手を振ってそれを見送る。
「あれだよな。ローズ様も、ピアニー様も、ちょっと真面目すぎやしませんか?」
前世の、二十一世紀日本の学生だった記憶があるイツキにとって、学生時代とは遊ぶためにあるという認識があった。
しかして、イツキの主たちは、勉強に一生懸命で、遊びが足りないと思える。
これは別に、この世界でもおかしな考え方ではない。
実際貴族の通う学園において、勉学よりも社交が第一とされるのは普通のことなのだ。
ところが、ローズもピアニーも、初めて味わう学生という立場にすっかり没頭してしまい、学ぶことの楽しさに目覚めてしまっていたのである。
「本末転倒過ぎる!」
「あいつ、一人で何してるんだ?」
「しっ、変な奴に関わらないようにって、家の者に教わらなかったのか?」
今度は男子学生の集団が、イツキ自身にも聞こえる声で会話しながら通り過ぎた。
(心配事が色恋だけの坊っちゃん連中は黙ってろ! 俺にはご主人様を守るという大事な使命があるんだ!)
イツキは、そう心のなかで叫んだが、さすがに居心地が悪くなり次の教室へとさっさと向かう。
実を言うと、イツキにとってこの学園で習う勉強は簡単過ぎた。
小学生高学年から中学生ぐらいの内容なのだ。
唯一苦労している教科と言えば、魔法と剣術ぐらいである。
(魔法とか前世にはなかったからな。剣なんか、前世で振ってたら捕まるし)
心のなかで自己弁護するイツキであった。
「遅いですわ」
教室に到着すると、同じ学科を取っているローズとピアニー、それにミュスカが先に席に着いていた。
教室の席は、長い机にベンチが設置されている形で、四人ぐらいまでは、詰めれば一緒に座ることが出来る。
ローズたちは、みんなほっそりとした体型なので、十分に四人で席を分け合うことが出来た。
イツキは、ピアニーの開けてくれた端の席に腰を下ろす。
「申し訳ありませんローズ様」
ちなみにローズの同室のアイネがいないのは、アイネは学問よりも、軍事の授業を選択しているためだ。
今の時間は将の采配とか言う授業を受けているはずであった。
(なんとかして、お二人の気持ちを謎解きに向かわせないと)
イツキの心には焦りがある。
ゲーム開始まで、後二年。
後二年もある、ではない。後二年しか、ないのだ。
だがこの日の授業で、イツキはローズ達を動かすためのきっかけを掴むこととなった。
もちろん大事なお嬢様ことローズのためにである。
イツキの仕えるグリーンガーデン公爵家の長女ローズは、イツキが前世で見知っていた乙女ゲームの悪役令嬢というポジションだった。
乙女ゲームの悪役令嬢と言えば、最終的に不幸になることが決っていると言っていい。
なんとしてもその事態だけは避けなければならないとイツキは思うのだ。
その具体的な対策としては、物語のテーマとなっている「楽園の扉」を、ゲーム開始前の時点で開放してしまうというのが有効だと考えた。
ローズを始めとして、その周辺の人物は身分も高いし、頭もいい、しかも行動力がある。
ある意味、さすがゲームのキャラだとイツキは思う。
現実に生きている相手に対する評価としては、失礼極まりないが、自分の思考にハマっているイツキが気づくことはない。
「しかし、学生の本業に真面目に邁進して、ちっとも楽園の扉探しに取り掛かってくれねえ!」
イツキは、お城のように豪華な学園の回廊にある柱の傍らで、魂の叫びを発した。
教室と教室を繋ぐ廊下の一部なので、当然無人ではなく、周囲には人がいる。
イツキの様子を見て、数人の少女グループが、くすくすと笑って通り過ぎた。
「あっ、気にしないで」
イツキは、ひらひらと手を振ってそれを見送る。
「あれだよな。ローズ様も、ピアニー様も、ちょっと真面目すぎやしませんか?」
前世の、二十一世紀日本の学生だった記憶があるイツキにとって、学生時代とは遊ぶためにあるという認識があった。
しかして、イツキの主たちは、勉強に一生懸命で、遊びが足りないと思える。
これは別に、この世界でもおかしな考え方ではない。
実際貴族の通う学園において、勉学よりも社交が第一とされるのは普通のことなのだ。
ところが、ローズもピアニーも、初めて味わう学生という立場にすっかり没頭してしまい、学ぶことの楽しさに目覚めてしまっていたのである。
「本末転倒過ぎる!」
「あいつ、一人で何してるんだ?」
「しっ、変な奴に関わらないようにって、家の者に教わらなかったのか?」
今度は男子学生の集団が、イツキ自身にも聞こえる声で会話しながら通り過ぎた。
(心配事が色恋だけの坊っちゃん連中は黙ってろ! 俺にはご主人様を守るという大事な使命があるんだ!)
イツキは、そう心のなかで叫んだが、さすがに居心地が悪くなり次の教室へとさっさと向かう。
実を言うと、イツキにとってこの学園で習う勉強は簡単過ぎた。
小学生高学年から中学生ぐらいの内容なのだ。
唯一苦労している教科と言えば、魔法と剣術ぐらいである。
(魔法とか前世にはなかったからな。剣なんか、前世で振ってたら捕まるし)
心のなかで自己弁護するイツキであった。
「遅いですわ」
教室に到着すると、同じ学科を取っているローズとピアニー、それにミュスカが先に席に着いていた。
教室の席は、長い机にベンチが設置されている形で、四人ぐらいまでは、詰めれば一緒に座ることが出来る。
ローズたちは、みんなほっそりとした体型なので、十分に四人で席を分け合うことが出来た。
イツキは、ピアニーの開けてくれた端の席に腰を下ろす。
「申し訳ありませんローズ様」
ちなみにローズの同室のアイネがいないのは、アイネは学問よりも、軍事の授業を選択しているためだ。
今の時間は将の采配とか言う授業を受けているはずであった。
(なんとかして、お二人の気持ちを謎解きに向かわせないと)
イツキの心には焦りがある。
ゲーム開始まで、後二年。
後二年もある、ではない。後二年しか、ないのだ。
だがこの日の授業で、イツキはローズ達を動かすためのきっかけを掴むこととなった。
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