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第五話
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二階へと続く階段の前、ラティスフェンスと観葉植物で区切られたささやかな休憩スペースでその人は書を開いていた。きちんと整えられた白髪、すっと伸びた背筋に仕立ての良いスーツ。端正な横顔に口ひげがよく似合う。
紳士だ。紳士がいらっしゃる。
一気に緊張が高まった。ぎくしゃくとした動きで近づいて行くと、紳士がこちらに気づいた。
本を閉じ、椅子から立ち上がる。たったそれだけの動作にも品があった。
「七海さんですね」
低く抑えられた声が耳に心地よい。イケボだ。イケボでいらっしゃる。
「初めまして。岩崎と申します」
軽く会釈をする紳士に、私は全力のお辞儀を返した。
「初めまして。な、七海です。おっ、お忙しいところ、お時間をいただき……」
声が裏返った。
「どうぞ、おかけください。ここは談話室にもなっておりますので、ゆっくりお話ができますよ」
緊張と恥ずかしさで頭が真っ白になった私は、促されるまま席に着いた。
カタン、と木の椅子が小さな音を立てる。
その音で、重要なことを思い出した。
(四郎さまはどこに―――)
そっと振り返ると、私のすぐ後ろで仁王立ちしている。私はその姿にぎょっとした。乱れ髪の奥からのぞく眼光は鋭く、じっと岩崎さんを凝視している。削げてやつれた頬は強ばって、歯を食いしばっているのがはっきり分かった。この形相、お化け屋敷の中に立っていたら子どもがお漏らしするレベルだ。
岩崎さんの方は、と見ると、穏やかな表情を私に向けている。四郎さまの姿は見えていないようだ。ほっと私の肩から力が抜けた。
「若宮さまについて調べておられると、職員から聞きましたが」
柔らかな声が問いかける。これは目的を尋ねられているのだ。
「どんな方があの祠を管理していらっしゃるのかな、と気になりまして」
岩崎さんが首を傾げる。私はしどろもどろになりながら説明を試みた。
「あの、えっと。今住んでいるアパートの近くに若宮さまの祠がありまして。通勤途中に前を通りかかるのですが、朝早いのに、いつも綺麗なお花が飾られていますので。大切にされているのだなあ、と」
語尾が消えてゆく。ここからどう続けたらよいのだろう。目的は――そう、いなくなったという四郎さまの姫君を行方を探すことだ。しかし、それをそのまま告げることは難しい。
岩崎さんは、私が再び話し始めるのを待っているようだった。なんとか言葉を絞り出す。
「毎日見ているうちに、気になってしまいまして」
「何か研究をされている、というわけではないのですね」
「……はい」
ああ、だめだ。私は膝の上でぎゅっと拳を握りしめて、うなだれた。
―――と。
「嬉しいですね」
思いも寄らない言葉に、私ははっと顔を上げた。
「そんなふうに興味を持っていただけるのは、とても嬉しいです」
岩崎さんはにこにこしている。嬉しい、というのは本心のようだ。内緒話をするかのようにいたずらっぽく口の横に手を添えてこう言った。
「実は、実話なんですが、あの祠を管理している北岡家は、私の父の実家なのです」
(よっしゃあ、来たあ!!)
私は握った拳を天に突き上げた。もちろん心の中で。
ものすごい偶然、というわけでもないのだろう。いわく伝説のある古い祠を管理する家系に生まれた人が、故郷の歴史に関わる職に就いたりするのは、いかにもありそうな話だ。ここに来ることを思いついてよかった。本当によかった。
ちらっと背後をうかがう。四郎さまは相変わらずの仁王立ちで、腕組みをしたまま岩崎さんの顔をじっと見つめていた。
祠の写真が掲載されたページを開いて、岩崎さんは丁寧に解説してくれた。
「北岡には祠の他に、家の中にも四郎さまをお祀りする神棚があります。どちらも直系の女性がお世話をすることになっています」
神棚は祭壇つきの、かなり大きなものらしい。お供え物をのせる祭壇は三段。階段状になっていて、その上に神棚が鎮座している。
毎朝四郎さまにお供えされる神饌は、お酒、塩。水、お米。特別な日にはそれに野菜や果物、魚が加えられることもあるそうだ。
「小さい頃、夏休みなどに北岡の家に遊びに行くことがありまして。いとこたちと一緒に、食べかけのスナック菓子や、夕飯のカレーなどをお供えしたことがありました」
神棚にカレー。なかなか斬新だ。
「いや、全くのいたずらというわけではないんですよ」
目を丸くする私にむけて、岩崎さんは言い訳をする。
「神さまだって、毎日同じものを食べさせられたのでは飽きるだろうと。子どもながらに、よかれと思ってしたことなんですけれど。いやあ、毎回祖母さまにこっぴどく怒られました」
神棚にカレー。白い木の神棚に白い徳利。白いお米、白い塩。白いお皿に――カレー。
噴き出しそうになるのをぐっとこらえる。恥ずかしそうに岩崎さんは頭をかいた。
北岡家は、落ち延びてきた姫君の子孫であるという。姫君の素性は分かっていない。私は名前を知っているのだが、もちろんそれは言えない。
「ここの部分ですが」
解説文の冒頭を指さしながら、岩崎さんが言う。
――延元三年(一三三八年)のこと。いずこからか、幼い姫君が美々しい若武者に守られてこの地、来瀬に逃れてきた。
「延元三年というと南北朝時代になります。ですが、すべてが口伝えで書き付けなどは遺されていません。伝わる途中で忘れられたこともあるでしょうし、この年代も、もしかしたら違っている可能性もあります」
当時の人たちは、姫君の身元を詮索しなかったようだ。知らなければ追っ手が来ても答えようがない。姫君を匿い、同時に自分たちの身の安全を図るには、それが一番だと考えたのだろう。
「姫君の名も伝わっていません。幼いながらも境遇をわきまえていて、ご自身に関することは一切語ろうとしなかった、と。生涯でたった一度だけ口になさったのが、若武者の名前だったそうです」
怒号と馬のいななき、断末魔の叫び、悲鳴。
地獄を見るような戦のただ中から自分を連れ出してくれた若武者。体中に深い傷を負った身で自分を守り続けてくれた人が、今、目の前で息絶えようとしている。
―――しろう。
命の灯火が消えようとするそのときに、姫君の口からほろりとその名がこぼれ落ちた。
土地の者たちは丁重にその若武者を埋葬し、祠を建て、いつしかその祠を「若宮さま」と呼ぶようになった。
「姫君はこの地で天寿を全うされました。土地の者と結婚し、やがて子が生まれ、孫が生まれ、今の北岡家に繋がっています」
北岡家には、代々女の子が婿をとって家を継ぐというしきたりがあるのだそうだ。この家で生まれた女の子が四郎さまの祠のお世話をする。その子が成長し、結婚して娘を生めば、お役目はその娘に受け継がれる。そうやって姫君につながる女の子が、恩人である四郎さまの祠、若宮さまを守り続けている。
「ところが、私の祖母は娘に恵まれず、父を含め息子ばかりの四人兄弟となりました。四郎さまの名にあやかって、四男である叔父が跡を継ぎ、娘が生まれました」
一男一女のうち、岩崎さんからみて従妹にあたる女性が跡を継いだ。幸いにも従妹は娘に恵まれた。しかしその娘は跡を継ぐことなく家を出た。今は岩崎さんの従妹が祠の世話をしながら、息子――従甥に、または次の世代に娘が生まれるのを待っているところなのだという。
「祀られる側である四郎さまはどう思っていらっしゃるか。神の心は計り知れませんが、しきたりとはいえ、当人たちのプレッシャーは大変なものでしょうね」
背中の方に沈痛な空気を感じる。
私からは、それ以上何も尋ねることはなかった。
紳士だ。紳士がいらっしゃる。
一気に緊張が高まった。ぎくしゃくとした動きで近づいて行くと、紳士がこちらに気づいた。
本を閉じ、椅子から立ち上がる。たったそれだけの動作にも品があった。
「七海さんですね」
低く抑えられた声が耳に心地よい。イケボだ。イケボでいらっしゃる。
「初めまして。岩崎と申します」
軽く会釈をする紳士に、私は全力のお辞儀を返した。
「初めまして。な、七海です。おっ、お忙しいところ、お時間をいただき……」
声が裏返った。
「どうぞ、おかけください。ここは談話室にもなっておりますので、ゆっくりお話ができますよ」
緊張と恥ずかしさで頭が真っ白になった私は、促されるまま席に着いた。
カタン、と木の椅子が小さな音を立てる。
その音で、重要なことを思い出した。
(四郎さまはどこに―――)
そっと振り返ると、私のすぐ後ろで仁王立ちしている。私はその姿にぎょっとした。乱れ髪の奥からのぞく眼光は鋭く、じっと岩崎さんを凝視している。削げてやつれた頬は強ばって、歯を食いしばっているのがはっきり分かった。この形相、お化け屋敷の中に立っていたら子どもがお漏らしするレベルだ。
岩崎さんの方は、と見ると、穏やかな表情を私に向けている。四郎さまの姿は見えていないようだ。ほっと私の肩から力が抜けた。
「若宮さまについて調べておられると、職員から聞きましたが」
柔らかな声が問いかける。これは目的を尋ねられているのだ。
「どんな方があの祠を管理していらっしゃるのかな、と気になりまして」
岩崎さんが首を傾げる。私はしどろもどろになりながら説明を試みた。
「あの、えっと。今住んでいるアパートの近くに若宮さまの祠がありまして。通勤途中に前を通りかかるのですが、朝早いのに、いつも綺麗なお花が飾られていますので。大切にされているのだなあ、と」
語尾が消えてゆく。ここからどう続けたらよいのだろう。目的は――そう、いなくなったという四郎さまの姫君を行方を探すことだ。しかし、それをそのまま告げることは難しい。
岩崎さんは、私が再び話し始めるのを待っているようだった。なんとか言葉を絞り出す。
「毎日見ているうちに、気になってしまいまして」
「何か研究をされている、というわけではないのですね」
「……はい」
ああ、だめだ。私は膝の上でぎゅっと拳を握りしめて、うなだれた。
―――と。
「嬉しいですね」
思いも寄らない言葉に、私ははっと顔を上げた。
「そんなふうに興味を持っていただけるのは、とても嬉しいです」
岩崎さんはにこにこしている。嬉しい、というのは本心のようだ。内緒話をするかのようにいたずらっぽく口の横に手を添えてこう言った。
「実は、実話なんですが、あの祠を管理している北岡家は、私の父の実家なのです」
(よっしゃあ、来たあ!!)
私は握った拳を天に突き上げた。もちろん心の中で。
ものすごい偶然、というわけでもないのだろう。いわく伝説のある古い祠を管理する家系に生まれた人が、故郷の歴史に関わる職に就いたりするのは、いかにもありそうな話だ。ここに来ることを思いついてよかった。本当によかった。
ちらっと背後をうかがう。四郎さまは相変わらずの仁王立ちで、腕組みをしたまま岩崎さんの顔をじっと見つめていた。
祠の写真が掲載されたページを開いて、岩崎さんは丁寧に解説してくれた。
「北岡には祠の他に、家の中にも四郎さまをお祀りする神棚があります。どちらも直系の女性がお世話をすることになっています」
神棚は祭壇つきの、かなり大きなものらしい。お供え物をのせる祭壇は三段。階段状になっていて、その上に神棚が鎮座している。
毎朝四郎さまにお供えされる神饌は、お酒、塩。水、お米。特別な日にはそれに野菜や果物、魚が加えられることもあるそうだ。
「小さい頃、夏休みなどに北岡の家に遊びに行くことがありまして。いとこたちと一緒に、食べかけのスナック菓子や、夕飯のカレーなどをお供えしたことがありました」
神棚にカレー。なかなか斬新だ。
「いや、全くのいたずらというわけではないんですよ」
目を丸くする私にむけて、岩崎さんは言い訳をする。
「神さまだって、毎日同じものを食べさせられたのでは飽きるだろうと。子どもながらに、よかれと思ってしたことなんですけれど。いやあ、毎回祖母さまにこっぴどく怒られました」
神棚にカレー。白い木の神棚に白い徳利。白いお米、白い塩。白いお皿に――カレー。
噴き出しそうになるのをぐっとこらえる。恥ずかしそうに岩崎さんは頭をかいた。
北岡家は、落ち延びてきた姫君の子孫であるという。姫君の素性は分かっていない。私は名前を知っているのだが、もちろんそれは言えない。
「ここの部分ですが」
解説文の冒頭を指さしながら、岩崎さんが言う。
――延元三年(一三三八年)のこと。いずこからか、幼い姫君が美々しい若武者に守られてこの地、来瀬に逃れてきた。
「延元三年というと南北朝時代になります。ですが、すべてが口伝えで書き付けなどは遺されていません。伝わる途中で忘れられたこともあるでしょうし、この年代も、もしかしたら違っている可能性もあります」
当時の人たちは、姫君の身元を詮索しなかったようだ。知らなければ追っ手が来ても答えようがない。姫君を匿い、同時に自分たちの身の安全を図るには、それが一番だと考えたのだろう。
「姫君の名も伝わっていません。幼いながらも境遇をわきまえていて、ご自身に関することは一切語ろうとしなかった、と。生涯でたった一度だけ口になさったのが、若武者の名前だったそうです」
怒号と馬のいななき、断末魔の叫び、悲鳴。
地獄を見るような戦のただ中から自分を連れ出してくれた若武者。体中に深い傷を負った身で自分を守り続けてくれた人が、今、目の前で息絶えようとしている。
―――しろう。
命の灯火が消えようとするそのときに、姫君の口からほろりとその名がこぼれ落ちた。
土地の者たちは丁重にその若武者を埋葬し、祠を建て、いつしかその祠を「若宮さま」と呼ぶようになった。
「姫君はこの地で天寿を全うされました。土地の者と結婚し、やがて子が生まれ、孫が生まれ、今の北岡家に繋がっています」
北岡家には、代々女の子が婿をとって家を継ぐというしきたりがあるのだそうだ。この家で生まれた女の子が四郎さまの祠のお世話をする。その子が成長し、結婚して娘を生めば、お役目はその娘に受け継がれる。そうやって姫君につながる女の子が、恩人である四郎さまの祠、若宮さまを守り続けている。
「ところが、私の祖母は娘に恵まれず、父を含め息子ばかりの四人兄弟となりました。四郎さまの名にあやかって、四男である叔父が跡を継ぎ、娘が生まれました」
一男一女のうち、岩崎さんからみて従妹にあたる女性が跡を継いだ。幸いにも従妹は娘に恵まれた。しかしその娘は跡を継ぐことなく家を出た。今は岩崎さんの従妹が祠の世話をしながら、息子――従甥に、または次の世代に娘が生まれるのを待っているところなのだという。
「祀られる側である四郎さまはどう思っていらっしゃるか。神の心は計り知れませんが、しきたりとはいえ、当人たちのプレッシャーは大変なものでしょうね」
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