7 / 7
この指に、あなたの証を
しおりを挟む
朝日がカーテン越しに差し込んで、真っ白なシーツの上に柔らかく影を落とした。
ひなたは目をゆっくりと開ける。
心地よい倦怠感が全身に広がっていて、どこもかしこもじんわりと熱を帯びていた。
ベッドの隣、まだ温もりが残る場所には――蓮が座っていた。シャツの袖をまくり、朝の光に細めた瞳が、静かに彼女を見ていた。
「……おはよう」
ひなたがつぶやくと、蓮は小さく頷いて、なにかを取り出した。
小さな、黒い箱。
彼が指先で開けると、中にはシンプルな銀のリングが一つ、輝いていた。
「……え、これ……?」
「渡そうと思ってた。昨夜、お前が“全部俺のものにして”って言ったからな」
蓮は無表情のまま、ひなたの左手をそっと取る。
「これは、婚約指輪とかじゃない。“命令”じゃない。…でも、つけてほしい」
彼の声は、昨日までと違っていた。
冷たさでも命令でもない、ただ真っ直ぐな感情がこもっていた。
「俺は、お前をモノにしたい。誰にも渡したくない。どこにいても、“こいつは俺のものだ”って分かるようにしたい」
ひなたは、少しだけ迷って、それから――笑った。
「うん……わたしも。あなたのメイドで、オモチャで、…それでいい。……もう、他の誰にもなりたくないから」
涙が、ひと粒だけ頬を伝った。
でもそれは、悲しみじゃなかった。
恐怖でも、羞恥でもない。
あの夜、身体に刻まれた熱が、今はただ優しい光に変わっていた。
蓮は、そっとその指輪をひなたの左手薬指に通す。
カチリと指に嵌まる感触が、心まで締め付けた。
「これからも、俺に従え。…ベッドの上でも、外でも」
「はい、ご主人様」
微笑みながら頷いたその瞬間、彼の手がひなたの頭を引き寄せ、額をこつんとぶつけてきた。
「……あと、“好き”って言え。言うまでキスしない」
「え……ちょ、なにそれ、子供じゃ……」
「命令。さ、言え」
ひなたは顔を真っ赤にして、布団に顔を埋めた。
それでも、しばらくして小さな声で囁く。
「……好き。…ずっと、好きでした」
その瞬間、蓮の唇がそっと、ひなたの額に触れた。
それは、これまでのどんなキスよりも、熱くて、優しいものだった。
ひなたは目をゆっくりと開ける。
心地よい倦怠感が全身に広がっていて、どこもかしこもじんわりと熱を帯びていた。
ベッドの隣、まだ温もりが残る場所には――蓮が座っていた。シャツの袖をまくり、朝の光に細めた瞳が、静かに彼女を見ていた。
「……おはよう」
ひなたがつぶやくと、蓮は小さく頷いて、なにかを取り出した。
小さな、黒い箱。
彼が指先で開けると、中にはシンプルな銀のリングが一つ、輝いていた。
「……え、これ……?」
「渡そうと思ってた。昨夜、お前が“全部俺のものにして”って言ったからな」
蓮は無表情のまま、ひなたの左手をそっと取る。
「これは、婚約指輪とかじゃない。“命令”じゃない。…でも、つけてほしい」
彼の声は、昨日までと違っていた。
冷たさでも命令でもない、ただ真っ直ぐな感情がこもっていた。
「俺は、お前をモノにしたい。誰にも渡したくない。どこにいても、“こいつは俺のものだ”って分かるようにしたい」
ひなたは、少しだけ迷って、それから――笑った。
「うん……わたしも。あなたのメイドで、オモチャで、…それでいい。……もう、他の誰にもなりたくないから」
涙が、ひと粒だけ頬を伝った。
でもそれは、悲しみじゃなかった。
恐怖でも、羞恥でもない。
あの夜、身体に刻まれた熱が、今はただ優しい光に変わっていた。
蓮は、そっとその指輪をひなたの左手薬指に通す。
カチリと指に嵌まる感触が、心まで締め付けた。
「これからも、俺に従え。…ベッドの上でも、外でも」
「はい、ご主人様」
微笑みながら頷いたその瞬間、彼の手がひなたの頭を引き寄せ、額をこつんとぶつけてきた。
「……あと、“好き”って言え。言うまでキスしない」
「え……ちょ、なにそれ、子供じゃ……」
「命令。さ、言え」
ひなたは顔を真っ赤にして、布団に顔を埋めた。
それでも、しばらくして小さな声で囁く。
「……好き。…ずっと、好きでした」
その瞬間、蓮の唇がそっと、ひなたの額に触れた。
それは、これまでのどんなキスよりも、熱くて、優しいものだった。
52
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる