「愛されたかっただけ…」1番目の父と8番目の母・私と最後の弟

フミヤ

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小学6年…そして卒業

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6年生になっても私の生活は特に変化は無かった。
ただ、弟はお母さんと一緒に外へ遊びに行ったりする様になり、代わりに父が仕事をサボりがちになり家で朝から飲みながらテレビゲームをやってる事が多くなった。
こうなると監視の目はもっと厳しくなる。
まぁ厳しかろうが甘かろうが、上記の様に私の生活は特に変化は無い。
ドリルはもっと難しくなり解きにくくなった。
その分物置で夜を過ごす時間が増えた。

父は大の野球好きでかなりの巨人ファンだった。
仕事へ行っていた頃は朝になると仕事へ行っていた為無かった事だが、サボって家にいる為ナイターの巨人戦の結果次第で次の日の朝の私への当たり方が変わった。
土曜日にでも巨人が負けようものなら、日曜日はドリルのノルマがいきなり増やされたりした。
ゲームの三国志で思い通りにいかないと呼ばれて殴られたりタバコを押し付けられたりした。
生傷が残る為、学校のプールの授業とかは休まされた。
この頃お母さんの口癖は今でもはっきり覚えている。
「アナタ!○○(弟)にはそういう所見せないでね!」
これは私への暴力は弟がいない所でしてとのお願いだ。
ダメなお兄ちゃんだからこうなるんだそうだ。

この頃から私は嘘をつく様になった。
自分の身を守る為…だったのか親を信じていないからなのか、あまり覚えていない。
そして嘘をつく度にまたぶん殴られたが、何をしていても殴られるからどうでも良い気にはなっていた。
自分の中の何かが荒んでいくのが分かった。

そして学校でもその荒んだ感情を隠さなくなった。
学校でもいつもの様にイジメっ子達からイジられたが、ある日主役級の1人をぶん殴った。
すぐに周りの人間に囲まれて引き剥がされボコボコにされたが、そのぶん殴った相手にだけは多分5・6発はぶん殴ってやっただろう。
口の中バックリ切って泣いていた相手をボコボコになりながら見ていた。
次の日、ソイツはまた仲間を連れて仕返しとばかりに放課後団地の○棟の裏へ来いと言ってきた。
私は先にそこへ行き隠れて待ち伏せして、背後から忍び寄っていきなりソイツに殴りかかった。
1発で倒してひっくり返った上に乗り、周りが止めにくるまでぶん殴ってやった。
今度は周りは私に手を出さず、その主役級の子を担いで去っていった。
次の日学校で問題になり先生には怒られ父には殴られたが、主役級の子は休んでいたし他のイジメっ子達は遠巻きなだけだった。
主役級が学校へ来る様になってからは、イジメの内容も遠巻きなだけになった。
初めて人を殴った…
殴る側も拳が痛いんだな…と何となく感じた…


そして卒業式の日、私のお年玉とかを貯めていた貯金を使ってどうにか学生服を買ってくれたが間に合わず、前述の様に私はボロボロのジャージで卒業式に出る。
校門の前では両親や友達と一緒に写真を撮ったりしている同級生達でごった返していたが、私は誰からも声を掛けられなかった。
写真を撮ってくれる様な両親もいなかった。
卒業式のこの日も父は朝から飲みながらテレビゲームをしていたし、お母さんは弟のお世話にかかりきりだ。
教室で先に1人で式が始まるのを待っていた時担任の先生に声を掛けられたが、イジメを容認したくないからだろう…適当な声掛けだけで終わった。
式の最中に泣いたりしている同級生もいたが、私は何の感情も湧かなかった。
大した記憶も思い出も無いまま卒業式は終わって、私は普通に下校した。

帰り道、自分の住んでいる棟の前辺りで数人がバイクを停めて屯していた。
以前家出をした時に色々話を聞いたりしてくれた暴走族の人達だった。
呼び止められて肩を叩かれながら「卒業おめでとう!」と言われた。
そして紙袋とコーラをくれた。
コーラを飲みながら嬉しさに涙が出た。
とても嬉しかった。
紙袋の中身は3着分の学生服だったが、まぁ暴走族になる様な人達が着ていた学生服だから標準のではなく、学ランは「短ラン・中ラン」ズボンは「ボンタン」だ。
しかも小学6年の身体測定時には133cmしか無かった私にはどれも大きくブカブカだ。
それでもリーダー格の人が「俺達からこれ貰ったんだから、お前はもう舐められたりさないぜ!」と言い、また肩を叩いてくれた。
何よりも私なんかを気に掛けててくれた事が嬉しかったのを今でも覚えている。

家に帰るとまたドリルと向き合う生活に戻ったが、両親に見つからない様に押し入れの奥に隠したその学生服がそこにあると思うだけで、何だか心強かった。
そして春休みを終えて私の中学校生活が始まる…
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