熱血警官・灘木雄馬の受難〜男娼館編

NAYUTA

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第31章 灘木くん、接客に励む

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VIPルームの豪奢な両開きの扉が、ゆっくりと音を立てて開かれた。

光沢のあるマホガニーの木目、その縁には金装飾があしらわれている。

金を掛けた扉、、、幾らぐらいするんだ?

灘木は関係のないところに感心している。

目の前の任務から現実逃避しようという精神的な混乱がまだ続いている。

扉の向こうから現れたのは、エミリオに先導される二人の男たちだった。

背後に秘書らしき者が控えていたが、彼らは廊下で控えるようだ。

室内には入ってこない。

ブライアンは、何度もこのクラブを訪れている常連客らしく満面の笑みを浮かべ部屋に入ってくる。

洗練されたスーツに身を包み、動作のひとつひとつが静謐で、まるで舞踏会の紳士のように立ち居振る舞っている。

視線は、タケシにロックオン状態だ。

タケシが爽やかな笑顔を浮かべ、両手を広げてブライアンとハグをする。

え?

灘木は驚く。

タケシは流暢な英語で、ブライアンと親しく会話を始めた。

タ、タケシさん、、、出来る男だったんだ、、、

灘木は、タケシの普段は見せない努力の結果を見たような気がする。

そして、もう一人のMr.K、、、

大柄の男。

驚きと感嘆を隠せない目でルーム内を見ている。

「オォ、、、スゴイ、、、ワンダフォー、、、ミゴトデスネ、、、」

日本語が怪しく、だが派手に大仰な声を上げたのは、今回が初めての来訪らしいMr.K。

ドバイの富豪らしい。

腹回りには飽食の証である贅沢な肉を携え、ギラついた金の腕時計と太い指輪をいくつも光らせている。

見るからに、“私は金持ちです”と喧伝しているような身なり。

ギラギラと精力に溢れる顔だ。

「どうぞ、ごゆっくり。お馴染みの《Nocturne》には、歴史も店舗も遠く及びませんが、接客のみは一流を心がけております」

クラウディオは穏やかな笑みを浮かべ、謙遜する口調の奥に、誇りをにじませた。

真木が、通訳をする

おそらくアラビア語。

こ、こっちの人も出来る男だった、、、

灘木は感服する。

それに比べて、俺は、、、

急に不安になる。

そして、今夜の客は二人、、、

羽村警部は、どっちの客に気に入られろと言ってきたのだろう。

灘木は悩む。

「ステキィ、、、コノミセ、ステキィ、、、スバラシ、、、」

大声で言い、クラウディオとガッチリと握手をする。

Mr.Kは鼻息荒く、シャンデリアに照らされた部屋を見渡す。

美男の裸像の彫刻のレプリカ、裸体の筋肉質な若者のレリーフ、金の額に収まった絵画。

卓上に用意された料理、、、

そして、、、

灘木の顔をじっと見た。

視線に脂っこいギラギラとした輝きが増していく。

え?

気に入られた?

灘木はゾワゾワした震えを背筋に感じながら、ぎこちなく笑みを浮かべる。

「ユー、ワンダフォー、、、ダンス、ワンダフォー、、、」

ガッと口を横に開き満面の笑みで灘木を見る。

その口元から、湿った欲望が漏れ出すようだった。

真木が、アラビア語でMr.Kに何事か囁いている。

途中でかつ“ナダギ”という単語が聞こえたので、灘木のことを紹介したのだろう。

そしてMr.Kは、驚いたように灘木を見て何かを言う。

真木が通訳する。

「君のダンスをいたく気に入ったらしい。今日がデビューだと伝えたらいたく驚いているよ」

Mr.Kの視線がギラギラと粘る光に輝いていく。

まるで品物を検分するように灘木の身体をなめ回すように見る。

肩、胸、腰、脚、視線が動くたびに、その光はいやらしさを増しギラついていく。

「イイヨ、、、スゴク、、イイ、、、ユー、ナダギ、、、トテモヨイ、、、カラダ、、、」

Mr.Kの分厚い手のひらが伸びてきて灘木の鍛えられた胸を撫で、締まった腹筋へと降りる。

灘木の背筋に嫌悪からのゾワゾワが走る。

が、羽村の手紙の文字が頭に浮かぶ。

気に入られろ、、、

離れるな、、、

そうだ、これは任務だ、、、

任務なんだよぉ!、、、これはっ!

自分に言い聞かせる。

ふと横を見るとブライアンがタケシの脇腹をサワサワさわっている。

タケシは“アゥ、、、”と小さなため息を漏らし、軽く首を上げ、気持ちよさそうな表情を浮かべる。

そのタケシの顔はよそ行きの顔だと灘木は悟る。

そうだ、、、営業だ、、、

これが接客営業なんだ、、、

Mr.Kの指が腹筋の間、ちょこんと窪んだ灘木のヘソに突っ込まれる。

任務だっ!営業だっ!接客だっ!

「あっ、、あ、うっふ~~~んっ!」

大声を上げ、灘木は思い切り仰け反る。

店のメンバーが呆気に取られたように灘木を見る。

バカッ、やり過ぎだ、、、というような表情がタケシとクラウディオの顔に浮かんでいる。

真木が急ぎで何かをMr.Kに伝えている。

「ハァッハッハッハッハァ~」

Mr.Kが大笑いして、手のひらを灘木から離した。

真木が笑みを崩さず、早口で灘木に告げる。

「Mr.Kには、お前が感じやすい体質で、あまり触りすぎると、食事前だというのに発情してしまうかもしれないから、お手柔らかにと伝えた。合わせろ」

そして、Mr.Kの方を向き、ソファの方に誘う。

クラウディオも、二人に向け、どうぞ席にと言うように手を差し出す。

感じやすい?

触りすぎると発情する???

俺がぁ?????

でも、、、合わせなきゃいけないんだよな、、、合わせなきゃ、、、

灘木は心の中で、自身に言い聞かせる。




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