5 / 35
第5章 灘木くん、寮に入る
しおりを挟む
香水とポージングの試練を終え、身体の芯まで羞恥で満たされた灘木は、
スーツに着替えると同時に、大きく肩を回した。
「……よっしゃ、今日のところは終わったっぽいな。さて、家帰って……風呂入って、寝よ」
自分へのご褒美にコンビニのプリンでも買って帰ろうと、灘木が出口へ向かったその時だった。
「灘木くん。こちらへどうぞ」
黒服の一人が、無表情に廊下を指し示した。
「え? 出口そっちじゃ……」
「今日は“初日”でしたからね。君の“部屋”をご案内します」
「え? ……へ?」
灘木は、言葉の意味を三回ほど頭の中で転がした。
「寮、です。スタッフは基本、敷地内の宿舎で管理されてます。何かあってもすぐ動けるように。もちろん、支配人の方針です。“逃げられても困る”ってことで」
「寮?部屋? え、あの、寮生活とか聞いてないですけど!? ちょ、俺、家あるんですよ!? ちゃんと!」
「今夜からはこちらです」
「えっぐ……! なにそれ、そういうの先に言ってほしかったぁ……!まあ……そうですよね、、、」
、、、潜入だし、、ら任務ですし、、、逃げるわけには、いかないし、、、
灘木は、後半は胸の中でぶつぶつと呟きながら、黒服の後を着いて行く。
黒服に案内されて歩く廊下。
照明は柔らかく、豪奢な内装はまるで高級ホテルのようだった。
その途中――
「ん、あれ新人? うわ、結構イイ体してんな」
「研修終わり? 頑張ってねぇ」
明らかに“本物”と思しき数人の男娼たちとすれ違う。
いずれも洗練された美貌、磨かれた肉体、視線に色気を宿していた。
灘木は、軽く会釈を返しながらも、内心で呟いた。
(……大丈夫。俺が、絶対に助けてやる……!)
この場にいる彼らが、どんな経緯でここに来たのか。
自由を奪われたのか、自ら選んだのか――それすら今は分からない。
だが一つだけ確かなのは、自分はここで“見張る者”であり、“守る者”であるべきだということだった。
案内されたのは、館の奥にある別棟の寮施設だった。
建物自体は清潔でシンプル。廊下は薄暗く、どこか病院のような静けさがあった。
「こちらが灘木くんの部屋。向かいは……あ、あれ」
廊下の奥から、白いTシャツにグレーのスウェットをはいた屈強な男が手を振ってきた。
「おーっ、君が新入りか。よろしくなー!」
筋骨隆々、爽やかな笑顔。ジャージの袖口から見える腕は競泳選手のように太く、首の太さも尋常ではない。
「お、おぉ! あんた、もしかして、履歴書持ってきたって新人さんかい?」
げ、、、もう伝わってるのか、、、
「そうだ、今日から入寮する灘木くんだ。彼は、タケシ。ま、ここの古株の一人だ。体つきが似てるし、すぐ仲良くなれるだろ」
タケシは豪快に笑い、腕をぽんと灘木の背に回す。
「おお、いい筋肉。お前、体の作りが真面目だなー。俺が来た頃なんて、毎日プロテインの味で泣いてたぞ?」
「ちょ、笑えない冗談やめてくださいよ……!」
そこへ、もう一人が静かに現れた。
「やあ。新人の灘木くんだね」
スリムな体格に、涼しげな表情。
副支配人・真木だった。
「ど、ども……」
「寮の暮らし、最初は戸惑うと思うけど……慣れれば快適だよ」
真木はどこまでも親しげで、優しげだった。
だがその笑みの奥にあるものに、灘木はまだ気づけない。
「困ったことがあったら、何でも言って。寮生活ってのは“支え合い”だからね。ね、タケシ?」
「おうよ!」
タケシが屈託なく笑う。
真木はそれを見て、やわらかく微笑む。
「じゃ、ゆっくり休んでね。明日から、本格的な日々が始まるから」
真木が落ち着いた声で言う。
「明日の“接客研修”、無理しすぎないように。クラウディオは、美には正直だからね。気に入られたら最後、君の“素材”を徹底的に試そうとするだろう」
「は、はい……」
「ただ、まだ壊れるには早い。――焦らないことだ。状況は、見ていれば自然に動く。……それだけ覚えておけばいい」
その一言が、灘木の脳裏に引っかかった。
(“壊れるには早い”? それって、まさか――)
真木はスッと背を向け、廊下の奥に消えていった。
寮の部屋は、思いのほか清潔だった。
無機質な白壁、ガラス張りのシャワーブース、冷たいほど整然としたインテリア。
だが、それがかえって「ここは日常ではない」と告げているように思えた。
制服を畳み、無言でタオルを取り、鏡の前で上半身の汗をぬぐう。
胸板には研修時についたミストの甘い残り香がまだ微かに漂っていた。
(……明日、また“見せる任務”か……)
「こ、これは……なんかもう……俺、完全に“囲われた”気がする……!」
灘木はベッドに倒れ込みながら思う。
夜は静かだった。
だが、その静けさの中――
副支配人・真木のスマホには、ひとつのメッセージが届いていた。
スーツに着替えると同時に、大きく肩を回した。
「……よっしゃ、今日のところは終わったっぽいな。さて、家帰って……風呂入って、寝よ」
自分へのご褒美にコンビニのプリンでも買って帰ろうと、灘木が出口へ向かったその時だった。
「灘木くん。こちらへどうぞ」
黒服の一人が、無表情に廊下を指し示した。
「え? 出口そっちじゃ……」
「今日は“初日”でしたからね。君の“部屋”をご案内します」
「え? ……へ?」
灘木は、言葉の意味を三回ほど頭の中で転がした。
「寮、です。スタッフは基本、敷地内の宿舎で管理されてます。何かあってもすぐ動けるように。もちろん、支配人の方針です。“逃げられても困る”ってことで」
「寮?部屋? え、あの、寮生活とか聞いてないですけど!? ちょ、俺、家あるんですよ!? ちゃんと!」
「今夜からはこちらです」
「えっぐ……! なにそれ、そういうの先に言ってほしかったぁ……!まあ……そうですよね、、、」
、、、潜入だし、、ら任務ですし、、、逃げるわけには、いかないし、、、
灘木は、後半は胸の中でぶつぶつと呟きながら、黒服の後を着いて行く。
黒服に案内されて歩く廊下。
照明は柔らかく、豪奢な内装はまるで高級ホテルのようだった。
その途中――
「ん、あれ新人? うわ、結構イイ体してんな」
「研修終わり? 頑張ってねぇ」
明らかに“本物”と思しき数人の男娼たちとすれ違う。
いずれも洗練された美貌、磨かれた肉体、視線に色気を宿していた。
灘木は、軽く会釈を返しながらも、内心で呟いた。
(……大丈夫。俺が、絶対に助けてやる……!)
この場にいる彼らが、どんな経緯でここに来たのか。
自由を奪われたのか、自ら選んだのか――それすら今は分からない。
だが一つだけ確かなのは、自分はここで“見張る者”であり、“守る者”であるべきだということだった。
案内されたのは、館の奥にある別棟の寮施設だった。
建物自体は清潔でシンプル。廊下は薄暗く、どこか病院のような静けさがあった。
「こちらが灘木くんの部屋。向かいは……あ、あれ」
廊下の奥から、白いTシャツにグレーのスウェットをはいた屈強な男が手を振ってきた。
「おーっ、君が新入りか。よろしくなー!」
筋骨隆々、爽やかな笑顔。ジャージの袖口から見える腕は競泳選手のように太く、首の太さも尋常ではない。
「お、おぉ! あんた、もしかして、履歴書持ってきたって新人さんかい?」
げ、、、もう伝わってるのか、、、
「そうだ、今日から入寮する灘木くんだ。彼は、タケシ。ま、ここの古株の一人だ。体つきが似てるし、すぐ仲良くなれるだろ」
タケシは豪快に笑い、腕をぽんと灘木の背に回す。
「おお、いい筋肉。お前、体の作りが真面目だなー。俺が来た頃なんて、毎日プロテインの味で泣いてたぞ?」
「ちょ、笑えない冗談やめてくださいよ……!」
そこへ、もう一人が静かに現れた。
「やあ。新人の灘木くんだね」
スリムな体格に、涼しげな表情。
副支配人・真木だった。
「ど、ども……」
「寮の暮らし、最初は戸惑うと思うけど……慣れれば快適だよ」
真木はどこまでも親しげで、優しげだった。
だがその笑みの奥にあるものに、灘木はまだ気づけない。
「困ったことがあったら、何でも言って。寮生活ってのは“支え合い”だからね。ね、タケシ?」
「おうよ!」
タケシが屈託なく笑う。
真木はそれを見て、やわらかく微笑む。
「じゃ、ゆっくり休んでね。明日から、本格的な日々が始まるから」
真木が落ち着いた声で言う。
「明日の“接客研修”、無理しすぎないように。クラウディオは、美には正直だからね。気に入られたら最後、君の“素材”を徹底的に試そうとするだろう」
「は、はい……」
「ただ、まだ壊れるには早い。――焦らないことだ。状況は、見ていれば自然に動く。……それだけ覚えておけばいい」
その一言が、灘木の脳裏に引っかかった。
(“壊れるには早い”? それって、まさか――)
真木はスッと背を向け、廊下の奥に消えていった。
寮の部屋は、思いのほか清潔だった。
無機質な白壁、ガラス張りのシャワーブース、冷たいほど整然としたインテリア。
だが、それがかえって「ここは日常ではない」と告げているように思えた。
制服を畳み、無言でタオルを取り、鏡の前で上半身の汗をぬぐう。
胸板には研修時についたミストの甘い残り香がまだ微かに漂っていた。
(……明日、また“見せる任務”か……)
「こ、これは……なんかもう……俺、完全に“囲われた”気がする……!」
灘木はベッドに倒れ込みながら思う。
夜は静かだった。
だが、その静けさの中――
副支配人・真木のスマホには、ひとつのメッセージが届いていた。
1
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる