熱血警官・灘木雄馬の受難〜男娼館編

NAYUTA

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第5章 灘木くん、寮に入る

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 香水とポージングの試練を終え、身体の芯まで羞恥で満たされた灘木は、
 スーツに着替えると同時に、大きく肩を回した。

「……よっしゃ、今日のところは終わったっぽいな。さて、家帰って……風呂入って、寝よ」

 自分へのご褒美にコンビニのプリンでも買って帰ろうと、灘木が出口へ向かったその時だった。

「灘木くん。こちらへどうぞ」

 黒服の一人が、無表情に廊下を指し示した。

「え? 出口そっちじゃ……」

「今日は“初日”でしたからね。君の“部屋”をご案内します」

「え? ……へ?」

 灘木は、言葉の意味を三回ほど頭の中で転がした。

「寮、です。スタッフは基本、敷地内の宿舎で管理されてます。何かあってもすぐ動けるように。もちろん、支配人の方針です。“逃げられても困る”ってことで」

「寮?部屋? え、あの、寮生活とか聞いてないですけど!? ちょ、俺、家あるんですよ!? ちゃんと!」

「今夜からはこちらです」

「えっぐ……! なにそれ、そういうの先に言ってほしかったぁ……!まあ……そうですよね、、、」

、、、潜入だし、、ら任務ですし、、、逃げるわけには、いかないし、、、

灘木は、後半は胸の中でぶつぶつと呟きながら、黒服の後を着いて行く。

黒服に案内されて歩く廊下。

照明は柔らかく、豪奢な内装はまるで高級ホテルのようだった。

その途中――

「ん、あれ新人? うわ、結構イイ体してんな」

「研修終わり? 頑張ってねぇ」

明らかに“本物”と思しき数人の男娼たちとすれ違う。

いずれも洗練された美貌、磨かれた肉体、視線に色気を宿していた。

灘木は、軽く会釈を返しながらも、内心で呟いた。

(……大丈夫。俺が、絶対に助けてやる……!)

この場にいる彼らが、どんな経緯でここに来たのか。

自由を奪われたのか、自ら選んだのか――それすら今は分からない。

だが一つだけ確かなのは、自分はここで“見張る者”であり、“守る者”であるべきだということだった。

案内されたのは、館の奥にある別棟の寮施設だった。

建物自体は清潔でシンプル。廊下は薄暗く、どこか病院のような静けさがあった。

「こちらが灘木くんの部屋。向かいは……あ、あれ」

廊下の奥から、白いTシャツにグレーのスウェットをはいた屈強な男が手を振ってきた。

「おーっ、君が新入りか。よろしくなー!」

筋骨隆々、爽やかな笑顔。ジャージの袖口から見える腕は競泳選手のように太く、首の太さも尋常ではない。

「お、おぉ! あんた、もしかして、履歴書持ってきたって新人さんかい?」

げ、、、もう伝わってるのか、、、

「そうだ、今日から入寮する灘木くんだ。彼は、タケシ。ま、ここの古株の一人だ。体つきが似てるし、すぐ仲良くなれるだろ」

タケシは豪快に笑い、腕をぽんと灘木の背に回す。

「おお、いい筋肉。お前、体の作りが真面目だなー。俺が来た頃なんて、毎日プロテインの味で泣いてたぞ?」

「ちょ、笑えない冗談やめてくださいよ……!」

そこへ、もう一人が静かに現れた。

「やあ。新人の灘木くんだね」

スリムな体格に、涼しげな表情。

副支配人・真木だった。

「ど、ども……」

「寮の暮らし、最初は戸惑うと思うけど……慣れれば快適だよ」

 真木はどこまでも親しげで、優しげだった。

 だがその笑みの奥にあるものに、灘木はまだ気づけない。

「困ったことがあったら、何でも言って。寮生活ってのは“支え合い”だからね。ね、タケシ?」

「おうよ!」

 タケシが屈託なく笑う。

 真木はそれを見て、やわらかく微笑む。

「じゃ、ゆっくり休んでね。明日から、本格的な日々が始まるから」

真木が落ち着いた声で言う。

「明日の“接客研修”、無理しすぎないように。クラウディオは、美には正直だからね。気に入られたら最後、君の“素材”を徹底的に試そうとするだろう」

「は、はい……」

「ただ、まだ壊れるには早い。――焦らないことだ。状況は、見ていれば自然に動く。……それだけ覚えておけばいい」

 その一言が、灘木の脳裏に引っかかった。

(“壊れるには早い”? それって、まさか――)

 真木はスッと背を向け、廊下の奥に消えていった。

寮の部屋は、思いのほか清潔だった。

 無機質な白壁、ガラス張りのシャワーブース、冷たいほど整然としたインテリア。

 だが、それがかえって「ここは日常ではない」と告げているように思えた。

 制服を畳み、無言でタオルを取り、鏡の前で上半身の汗をぬぐう。

 胸板には研修時についたミストの甘い残り香がまだ微かに漂っていた。

 (……明日、また“見せる任務”か……)

 「こ、これは……なんかもう……俺、完全に“囲われた”気がする……!」

 灘木はベッドに倒れ込みながら思う。

 夜は静かだった。

 だが、その静けさの中――

 副支配人・真木のスマホには、ひとつのメッセージが届いていた。














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