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プロローグ
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最初の崩壊は、静かに始まった。
二十二世紀末、地球はかつてないほどの繁栄を迎えていた。
AIによる統治、軌道上都市の建設、気候制御技術、、、
人類はついに自然を支配した、と信じていた。
だがその繁栄は、資源の浪費と支配構造の歪みに支えられていた。
燃料、金属、食料、水、、、
すべてが有限であることを、人は知りながら目を逸らした。
そしてついに、地球の心臓が音を立てて軋んだ。
最初の軋みは二大国家の覇権をかけた衝突として現れた。
互いを非難し、己を正当化する争い。
資源の分配を名目とした交渉の激化が極地メタン採掘権の奪い合いへと発展した。
双方は宇宙兵器を含む全面戦争へと突き進んだ。
軌道上に浮かぶ衛星群が相互破壊され、核融合都市は炎に包まれ、ユーラシア大陸北部と北アメリカ大陸中西部は、「焦土線(スコーチ・ライン)」と呼ばれる死の地帯へ変わった。
二つの超大国の衝突は、残された国々の経済・食糧・環境のバランスを一瞬で崩壊させた。
海は酸に濁り、空は煤に覆われ、太陽光発電すら機能しなくなった。
暴動、略奪、分断。
秩序は崩壊し、国境という概念が意味を失う。
そして、間近に見える滅びを前に人々は、それぞれ異なる「生き残る道」を選び、集結し、群れを作った。
ヨーロッパからアフリカにかけての地帯では、
知識と理性こそが再生の鍵だと信じる学者・科学者たちが集結した。
彼らは旧AIネットワークを再構築し、人間を“感情の束”ではなく“演算可能な意識”として再定義した。
彼らが築いた都市群はやがてオリュンポス同盟と呼ばれ、合理と冷徹の塔が次々と建設された。
同じ頃、アジア圏のアジア圏。
焼け残った寺院、沈黙した都市、疲弊した民の中から、「魂の再生」を説く思想家たちが現れた。
彼らは争いも支配も(表面上は)放棄し、静謐と内省を礎とする共同体を形成した。
それが後のアマツ連邦。
彼らは情報と機械に頼らず、あくまでも道具とし、真に重要なのは精神と自然との調和とし、“祈り”と“和”を尊ぶ国々からなる連邦を結成した。
一方で、南米大陸。
焦土化した北米を捨て、逃げ延びた者たちがアンデス高原に集った。
彼らは「生きるとは戦うこと」と信じ、肉体こそ神の宿る神殿とし、肉体の鍛錬こそが生を切り開くとした。
太陽を崇拝し、再生を誓った彼らの国。
それが、トナティウカン連合である。
こうして、次第に小競り合いを続けながら、地球上に三つの文化圏が成立し、弾かれた者、馴染めぬ者はオーストラリアを中心に成立したアストラル協約領と呼ばれる地域で息を潜めた。
理性の塔、精神の国、肉体の楽土の三つの世と密かに伏する地帯。
だがそのどれもが、互いを理解しようとはしなかった。
人類は再び「己こそ正しい」という幻に酔い、三つの哲学はやがて、三つの軍事連合へと変貌する。
地上での小競り合いが正面切って起こらないのは、妥協ではない。
均衡が壊れた時の滅亡をそれぞれが知っていたからだ。
だが、地球ではなりを潜めていた戦は、広大な宇宙で繰り広げることとなった。
オリュンポスのAI艦隊が軌道上に昇り、トナティウカンの戦闘部族が宇宙艇を改造し、アマツの僧達が真理を求めて民に宇宙への旅を指示した。
そして、宇宙の航法技術、ワープゲート・トランスルート理論の確立が、宇宙における資源の争奪戦を加速した。
一進一退の中、各世が宇宙で獲得した資源は地球に届けられ、宇宙に旅立つ必要のない裕福層を肥やし、宇宙に旅することも叶わない貧民層との格差を広げる。
宇宙で戦う者達は、支配層たる富裕層には入れず、また、下層民に留まることを是としなかった者達。
さて、アマツが進出した地域の最深地域、誰も寄りつかぬ惑星《ツクモ》がある。
今、その星に向け、小さなポッドが進んでいく。
操縦しているのは、アマツ連邦調査士、ナギ・アマサト。
彼が向かおうとしているのは、もはや人の理が通じぬ世界。
ポッドは、ゆっくりと降下していく。
二十二世紀末、地球はかつてないほどの繁栄を迎えていた。
AIによる統治、軌道上都市の建設、気候制御技術、、、
人類はついに自然を支配した、と信じていた。
だがその繁栄は、資源の浪費と支配構造の歪みに支えられていた。
燃料、金属、食料、水、、、
すべてが有限であることを、人は知りながら目を逸らした。
そしてついに、地球の心臓が音を立てて軋んだ。
最初の軋みは二大国家の覇権をかけた衝突として現れた。
互いを非難し、己を正当化する争い。
資源の分配を名目とした交渉の激化が極地メタン採掘権の奪い合いへと発展した。
双方は宇宙兵器を含む全面戦争へと突き進んだ。
軌道上に浮かぶ衛星群が相互破壊され、核融合都市は炎に包まれ、ユーラシア大陸北部と北アメリカ大陸中西部は、「焦土線(スコーチ・ライン)」と呼ばれる死の地帯へ変わった。
二つの超大国の衝突は、残された国々の経済・食糧・環境のバランスを一瞬で崩壊させた。
海は酸に濁り、空は煤に覆われ、太陽光発電すら機能しなくなった。
暴動、略奪、分断。
秩序は崩壊し、国境という概念が意味を失う。
そして、間近に見える滅びを前に人々は、それぞれ異なる「生き残る道」を選び、集結し、群れを作った。
ヨーロッパからアフリカにかけての地帯では、
知識と理性こそが再生の鍵だと信じる学者・科学者たちが集結した。
彼らは旧AIネットワークを再構築し、人間を“感情の束”ではなく“演算可能な意識”として再定義した。
彼らが築いた都市群はやがてオリュンポス同盟と呼ばれ、合理と冷徹の塔が次々と建設された。
同じ頃、アジア圏のアジア圏。
焼け残った寺院、沈黙した都市、疲弊した民の中から、「魂の再生」を説く思想家たちが現れた。
彼らは争いも支配も(表面上は)放棄し、静謐と内省を礎とする共同体を形成した。
それが後のアマツ連邦。
彼らは情報と機械に頼らず、あくまでも道具とし、真に重要なのは精神と自然との調和とし、“祈り”と“和”を尊ぶ国々からなる連邦を結成した。
一方で、南米大陸。
焦土化した北米を捨て、逃げ延びた者たちがアンデス高原に集った。
彼らは「生きるとは戦うこと」と信じ、肉体こそ神の宿る神殿とし、肉体の鍛錬こそが生を切り開くとした。
太陽を崇拝し、再生を誓った彼らの国。
それが、トナティウカン連合である。
こうして、次第に小競り合いを続けながら、地球上に三つの文化圏が成立し、弾かれた者、馴染めぬ者はオーストラリアを中心に成立したアストラル協約領と呼ばれる地域で息を潜めた。
理性の塔、精神の国、肉体の楽土の三つの世と密かに伏する地帯。
だがそのどれもが、互いを理解しようとはしなかった。
人類は再び「己こそ正しい」という幻に酔い、三つの哲学はやがて、三つの軍事連合へと変貌する。
地上での小競り合いが正面切って起こらないのは、妥協ではない。
均衡が壊れた時の滅亡をそれぞれが知っていたからだ。
だが、地球ではなりを潜めていた戦は、広大な宇宙で繰り広げることとなった。
オリュンポスのAI艦隊が軌道上に昇り、トナティウカンの戦闘部族が宇宙艇を改造し、アマツの僧達が真理を求めて民に宇宙への旅を指示した。
そして、宇宙の航法技術、ワープゲート・トランスルート理論の確立が、宇宙における資源の争奪戦を加速した。
一進一退の中、各世が宇宙で獲得した資源は地球に届けられ、宇宙に旅立つ必要のない裕福層を肥やし、宇宙に旅することも叶わない貧民層との格差を広げる。
宇宙で戦う者達は、支配層たる富裕層には入れず、また、下層民に留まることを是としなかった者達。
さて、アマツが進出した地域の最深地域、誰も寄りつかぬ惑星《ツクモ》がある。
今、その星に向け、小さなポッドが進んでいく。
操縦しているのは、アマツ連邦調査士、ナギ・アマサト。
彼が向かおうとしているのは、もはや人の理が通じぬ世界。
ポッドは、ゆっくりと降下していく。
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