30年待たされた異世界転移

明之 想

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第12章 激闘編

深手

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<ヴァーンベック視点>



「離れて!」

「「了解だ」」

 視界を失った中で闇雲に振るわれる剣から離脱すると同時に。

「アイススピア!」

 発動した氷槍がバケモノに向かって飛来する。

 ドガッ!

 鱗のない脚に命中した。

「グギャアァ!」

 ズブッ、ススッ!

 そのまま突き刺さっていく。
 さっきの氷矢より深く、深く。

「アアアァァァァ!」

 山道に響き渡るバケモノの絶叫。

「どうよ?」

「ああ、かなり効いてるな」

 間違いない。
 深手を負わせることができたんだ。

「やるじゃねえか、ブリギッテ」

「当たり前でしょ、サージとは違うんだから」

「なっ?」

「さあ、次はあんたの番よ」

「……」

「ほら、さっさと動く!」

「ちっ、分かってらぁ」

 顔を歪めながらもバケモノに向かっていくサージ。
 もちろん俺もだ。

「喰らえ!」

 バケモノの視界は不完全なまま。
 そんな相手に剣が届かないわけがない。

「アアァァァ!」

 狙いは傷痕あたり。

 ザッ!
 ザシュッ!

 申し分のない2撃が太腿を斬り裂いた!

「グギャアァアァァ!」

 氷槍に続いて絶叫を上げるバケモノ。
 前回と違い片膝立ちにはなっていないものの出血はひどく、脚も痙攣している。
 これでようやく討伐が見えてきた。と思いたいところだが、さっきは脚の負傷から狂乱状態に入ったからな。最後まで油断せず進めるべきだろう。

「続けるぞ!」

「おうよ!」

 と、剣を構え直した俺たちの眼前で。

「グルアァ%$◆@!!」

 バケモノが天に向かって咆えた?
 声にならない咆哮だ。

「#〇▲&%¥◇!!」

 耳奥に差し込まれるように響いてくる。
 この奇妙な叫びはいったい!?

「何だ?」
「何なの?」
「うぅ、ヴァーン?」

 耳を押さえ剣を止めるサージ。
 後方のブリギッテとシアも顔をしかめている。

「♯’●%△$◆@!!!」

 さらに音量が上がった。
 
「なっ?」

 咆哮が塊のように体にぶつかってくる。
 その圧力で上手く前に出れない。

「ん? 動かねえぞ!?」

「まさか麻痺?」

 いや、麻痺じゃない。
 手足は動くし、後退もできるからな。
 となると、これは?
 って!

「シア、大丈夫か、シア?」

「わたしは平気」

「動けるのね、シアさん?」

「……はい」

 そうか、大丈夫なんだな。

「よかった」

 シアが動けるならひとまずは安心できる。

「ブリギッテさんは?」

「私も、ええ、動けるわ、体が少し重いけど」

「こっちも同じだな、動くことはできる」

 ただし、前に出れねえから隙だらけのやつを攻撃できねえ。
 魔法も、ちょっと無理みたいだ。

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