30年待たされた異世界転移

明之 想

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第12章 激闘編

予感の先


 気配を追いテポレン山を駆けているこの状況。
 セレス様と入れ替わった幸奈を追っていたあの時と似ている。
 あの惨劇の直前と……。

 依然として上手く働かない感知に加え、既視感をも覚える現状に嫌な予感は増すばかり。陰鬱な不安までも重くのしかかってきた。

 そんな負の感覚を振り払うように脚に力を入れる。
 山を疾走する。
 全力で走り続ける。

 と……。

 獣道に近かった山道がかなり開けてきた。
 坂上はさらに広がっているようだ。
 なら、その先の気配は?
 足を止め、精度の低い感知で強引に探ってやる。

「……」

 そんな不完全な行使でも感じ取れるこの複数の気配。
 まず、間違いない。
 ここが目的地。
 そう、もうすぐ到着するんだ。

 とはいえ、澱のような感覚は残ったまま。
 消えていない。

「……大丈夫」

 剣の音は皆無。
 魔法音も聞こえてこない。
 つまり、ギリオンが暴れていないという証。
 であれば、どうとでも対処できる。
 そう考えながらも、脚はゆっくりとしか動いてくれない。

「ふぅぅ」

 さっきまでの疾走とは打って変わっての遅々とした歩み。
 急ぎ向かっていた目的地を目の前にして、本当に情けない。
 そんな思いと共に坂を上っていく。
 とはいえ、時間は僅かなもの。

「……」

 見えてきた。
 多くの背中が目に入ってきた。

 ギリオンは?

「えっ? コーキ殿?」

「コーキさん?」

 こちらに気づいたのは最後方にいるワディン騎士とエンノアの民。
 彼らの先着は、もちろん想定内だ。

「どうしてここに?」

「その話はまた後で、それよりギリオンはどこです?」

 俺の問い掛けに言葉を返さず、眼を坂上に向ける2人。
 先にいるってことか。

「「「コーキ殿?」」」

「「「コーキさん?」」」

 驚きの顔を向ける騎士たちの中を抜け、前方に足を進める。
 すると。

 呆然と立ち尽くす4人の男女が視界に入ってきた。
 アルとヴァルター、あとは意外な2人。オルドウの冒険者だ。

 なっ?
 アルが涙を流してる!?

「アル……」

 すすり泣いたまま、こちらには目も向けてこない。
 気づいてもいない。
 いったい、何が起こって……?

 あれは!
 誰かが倒れてるのか?

「……」

 間違いない。
 4人の数歩前に剣を持った男が倒れ伏している。
 複数の剣傷、破れた上着、その下に見えるのは……鱗、蒼鱗!?

 まさか、まさか!!

 待て、それだけじゃない。
 さらに、その先にもいる。
 真っ赤に染まった女性を胸に抱く男が!?

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