30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
1,484 / 1,582
第12章 激闘編

優先

しおりを挟む
<ヴァーンベック視点>



「痛ってえ」

 隣からはサージ。
 苦痛の声。

 俺と同じ。
 吹っ飛ばされたんだ!

 状況理解と同時に身体が臨戦態勢に切り替わる。
 立ち上がって剣を構えようとする。
 なのに。

「ぐっ、つぅ」

 上手く力が入らねえ。
 肩以外も痛んでやがる。
 まずい……って!

 シアは?
 シアは無事なのか?

「シア!!」

 片膝立ちで視線を投げる。

「……」

 いた。
 左後方だ。

「無事かシア? 怪我は?」

「……大丈夫、転んだだけだから」

「ブリギッテ?」

「……シアさんも私も平気。あっても軽い傷程度よ」

 2人の言葉通り、ともに尻餅をついているものの負傷しているようには見えない。

「そう、か」

 無事な姿を確認して、思わず安堵の息が漏れてしまう。

「それより、何があったの? ヴァーンは無事なの? ギリオンさんは?」

「多分、衝撃波だ」

 人にできることじゃないが、それ以外考えられない。

「俺の体は……問題ねえ」

「よかったぁ」

 まずいのは左肩だけ。
 あとは何とかなるはず。
 ただ、ギリオンは……。

「ああ、ぐがっ、ああぁ!」

 この状態から魔法で戻せる見込みは薄い。
 仮に可能だとしても、術者にはかなりの危険が伴ってしまう。
 なら、残された選択肢は1つ。

「ギリオンは力づくで抑えるしかないだろう」

「そんな……もう少しだったのに……」

 シアの気持ちはよく分かる。
 それでも、これ以上は駄目だ。

「治癒魔法は許さない。ブリギッテ」

「ええ、分かってる。シアさんと下がってるわ」

「頼む」

「でも、やれるの? その体で」

「……」

「今なら逃げれるんじゃない?」

「ああ、あああぁぁ……」

 確かに、そうかもしれない。

「逃げた方がいいんじゃないかしら?」

 安全を優先するなら、そうすべきだろう。

 けど、俺がギリオンを見捨てられるのか?
 この状態で放置できるのか?

「ブリギッテよぉ、そいつぁ冷たすぎんぞ」

「優先順位の問題でしょ」

「まあ、おめえの中ではギリオンの順位は低いわな」

「……」

「俺とヴァーンは違う。まったく違うんだぜ」

 そう。
 無理だ。
 見捨てられるわけがないんだ。
 ただし、優先すべきを忘れちゃいけない。

「サージ、やれるな?」

「体中いってえけど、やるしかねえだろ」

「なら、最初から全力でいくぞ」

「おうよ」

「それでも難しいなら……ブリギッテはシアと一緒に逃げてくれ」


しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

魔法物語 - 倒したモンスターの魔法を習得する加護がチートすぎる件について -

花京院 光
ファンタジー
全ての生命が生まれながらにして持つ魔力。 魔力によって作られる魔法は、日常生活を潤し、モンスターの魔の手から地域を守る。 十五歳の誕生日を迎え、魔術師になる夢を叶えるために、俺は魔法都市を目指して旅に出た。 俺は旅の途中で、「討伐したモンスターの魔法を習得する」という反則的な加護を手に入れた……。 モンスターが巣食う剣と魔法の世界で、チート級の能力に慢心しない主人公が、努力を重ねて魔術師を目指す物語です。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。

処理中です...