30年待たされた異世界転移

明之 想

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第12章 激闘編

狭間


<ヴァーンベック視点>



「アアァァ!」

 ギリオンが俺を無視してシアに向かっている。
 振り上げた剣が。

「ぐっ!」 

 させるか!

 ガンッ!

 振り下ろしかけたその剣身を叩いてやる。
 正気を失い凶化したギリオンの剣でも横から打てば対処は可能。ましてや今の状態なら、この通り。

 ブンッ!

 軌道を逸らすこともそう難しくはない。
 となると、当然シアは無事だが。

「ヴァーン?」

 急転する状況に戸惑いの表情を浮かべている。

「さがれ、ここじゃ危ねえ」

 さすがにこの状況で我は通さないよな。

「う、うん。でも……」

「あとのことは任せとけ」 

「……分かった」

 よし、離れてくれた。
 これでギリオンに集中できるぞ。

「グアァァ!」

 そのギリオンは剣を振り下ろした体勢で全身を揺らしている。
 まるで、俺たち以外の何かと戦っているようだ。

「アアァ!」

 今のシアへの動きは凶悪そのものだった。
 恐ろしい一撃だったが、明確な殺意があったとは言い切れない。実際、剣を弾いた際の手応えは最凶化の剛力ほどじゃなかったし、今も剣を止め痙攣しているのだから。

 つまり、ギリオンにはまだ意識が残ってる。
 正気と狂気の狭間を彷徨っている、と考えていいはず。

「ギリオン!」

 この状態でも意識を残せるなら、何とかならないのか?
 もう一度戻れるんじゃ?

「ァァァ……」
 
 ただ、俺の言葉には反応してくれない。
 目にも理性は灯ってない。

 そうだよな。
 今さらだよな。

 やはりもう……。

 こっちの思いに呼応するようにギリオンが剣を構え直す。
 ゆっくりと足を踏み出し、真正面から。

「アアァァ!」

 また振り下ろしだ。
 ただし、凶化剛力じゃない。
 これは手加減。

 ガギン!

 なら、打ち合える。
 首も狙える。

 ガッ!
 ギン!
 
 首の鱗化は薄れたまま。
 さっきの剣痕も塞がってない。
 あそこに再度剣を叩き込めば今度は、今度こそ。

 ガン!
 ギンッ!

「アアァァ!」

 ガッ!
 ガギッ!

 ここだぁ!

 ギリオンが見せた隙に、深く踏み込む。
 下段から振り上げる。
 完璧な流れ。

 ガギンッ!

 なのにまた、防がれてしまった。
 それどころか、力押ししてくる。

「っ!」

 強い。
 明らかに膂力が増してる。
 手加減はどこいったんだ?

「ガアァァ!」

 まずいぞ。
 このまま完全凶化すれば、首を斬るどころじゃない。
 こっちがやられちまう。

 なら、その前に決着を!

「何!?」

 跳んだ!
 ぶつけていた剣を離し、俺の頭を越え。

 ダンッ!

 後方に着地。
 目の前にはシア。

「アアァァ!」
 
 間に合わねえ!!

 ガッギィィン!

「えっ!?」

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