30年待たされた異世界転移

明之 想

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第1章 オルドウ編

再び 4


「何か問題でもあるかな?」

「いえ、私の勘違いだったのですが、エストラルに行った後は地球に戻れないと思っていましたので」

「以前も帰してあげたろうに」

 そういえばそうだ。
 あの時は人を助けるという簡単なクエストをこなした後、無事に帰って来れたんだよな。
 次に異世界に行ったら、もう戻って来ることができないと思い込んでいた。

「キミのこの30年からすれば仕方ない」

 まあ、異世界と日本を自由に往来できるという事実の前では、俺の勘違いなんてどうでもいいことだ。

「話を続けるが、以前キミに与えた魔法の力は……ほう、独力で随分鍛錬しているようだ。それに誰にもその力のことを知られていない」

「努力はしましたが、神様に褒めていただけるほどでは……。異世界については誰にも話さない約束でしたので」

「話さずとも魔法のひとつくらい露見してもおかしくはない」

「……」

 魔法がばれたら芋づる式に異世界のことも知られそうだから、必死に隠したんだ。

「しかし、あの魔法の力をここまでにするとは、本当に大したものだ。その努力の対価として、こちらにも少し手を加えておこう……。よし、これで魔法の使い勝手が良くなるはずだ」

「……ありがとうございます」

 何をしてもらったのか今は分からないが、ありがたいことだ。
 でも、こんなに色々と神様にしていただいて良いものなのか?
 異世界間の自由往来だけでも十分なのに。
 30年待たされたとはいえ、神様の役に立ったわけでもない俺のためにここまでしてくれるなんて。

「こちらの手違いもあったし、事情もある。気にしなくていいが、気になるというのなら、こちらのために少し働いてくれればいい」

「もちろん、働かせていただきます」

 今の俺に断るという選択肢はない。

「即答だな」

「当然です」

「……ふむ」

「それで何をすればよろしいのでしょうか?」

「以前と同じこと。クエストをこなしてくれれば良い」

「了解いたしました」

 10歳の時、異世界で神様に下された命令。それがクエスト。
 同じようなことをすればいいのか。

「ただし、強制にはしないでおこう。ゆえに、未達成の罰則はない。それでも、成功報酬は用意しよう」

「それですと、私にとって有利すぎる条件かと」

「有利とか不利とか、そんなものは関係ないのだよ。ただ、そのクエストをこなしてくれれば少しばかり助かるというだけだ。気が向いたら挑戦してくれればいい」

「……はい、承知いたしました」

「そう重く考えなくてもよい」

 そう言われても。
 これだけの恩を受けているのだから、可能な限り挑戦しようと思う。

「さて、今後もなるべくこちらの世界の人間に異世界の実在を知られないように」

「なるべくですか?」

「そう、なるべくだ。厳密に言うと……3人まで。知られても良いのは3人までだ。異世界について知る者が4人存在した時点でキミの異世界間移動のギフトは消失する。気を付けるようにしなさい」

「分かりました」

 3人までという中途半端な感じがどうかとは思うけれど。
 それでも、3人まで知られて良いというのは助かる。
 今後の活動においても今まで同様、積極的に異世界の存在を明かすつもりはないが、何が起こるか分からないから。

「エストラルでも同様だ。エストラルの者に地球から来たことを知られぬように。ふむ、こちらも3人までは許そう」

「分かりました」

 どちらも3人まで可能か。

 3人という制限は一見すると余裕があるように見えるが、間接的に知られる可能性を考えると、余裕があるわけじゃないような気がする。
 そう考えると、基本的には人に教えることは禁止だ。

 とにかく、慎重に行動しなければいけない。
 異世界に行けなくなるなんて考えたくもないからな。

「相変わらず物分かりの良い子だ」

「……」

 神様にとっては、40歳の男なんて子供みたいなものなんだろう。



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