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第1章 オルドウ編
まほうつかい? 2
「名乗れないの?」
「ええ、まあ……」
これはもう、なるべく早くこのモデル女性と離れた方がいいな。
とはいえ、ここに置き去りにはできない。
「でも、私を助けてくれたってことは、あいつの仲間じゃないのよね」
あいつって、あのパーカーの男か。
「そうですね」
「では、こちら側?」
「何のことですか?」
さっぱり分からん。
どこの手の者とか、こちら側とか、何だよそれって感じだ。
しかし、そんなにたくさん魔法関係の組織があるのか。
秘密結社的な何かとか?
この現代日本に。
科学全盛のこの世界に。
ホントかよ、日本。
すごいな、日本。
「何も知らないの?」
「はい」
何も知らないけど、めちゃくちゃ興味がある。
詳しく知りたい。
もし、ここが前回の時間の流れの中なら、積極的に関わろうとしていたはず。
異世界の代わりに、こちらで魔法を使って……。
いや、それは無理だよなぁ。
「……」
しかし、どうにも興奮が抑えきれないぞ。
だって、この現代日本で魔法バトルなんだからさ。
「本当に?」
「……はい」
「そう……。嘘はついていないみたいね」
「ええ」
今は深く関わることはできない、か。
非常に残念ながら、危険すぎるからな。
この時間の中の俺は異世界に移動することができる。
けれど、諸々ばれてはいけないという禁則つき。
なら、現代日本魔法バトルに積極的に参加する理由もない。
危険は冒せない。
はぁぁ。
残念だ。
と、そんなことより、まずは。
「それより、早く治療しましょう」
脚の傷は思ったよりは酷くないようだが、放置できるものではない。
それに、腕やら顔やら擦り傷だらけ。
「この時間に診察してくれる病院は……。救急車呼びましょうか?」
「必要ないわ、これくらい平気。それに、一般の病院に行くつもりもないし」
「と言いますと」
「かかりつけの病院があるの。後でそこに行くわ。でも、そんなことより、あなた何者なの? そっちの方が重要よ」
そこそこ怪我しているのに、そんなこと扱い。
随分余裕があるな。
「早く病院行った方がいいですよ」
俺のことは忘れてくれ。
「今は傷のことはいいわ。それよりあなたよ」
傷は気にならないのか。
顔の傷なんか特に。
女性なのに。
ハードボイルドな世界に生きているんだな。
さすが魔法美女。
「通りすがりの者ですけど……」
「はあ?」
「いや、本当なんですけど」
「……」
「……」
そんな疑うような眼で見られても困る。
沈黙が重い。
「だとしても、さっきのは何?」
石弾のことだよな。
やっぱり、見られていたよ。
そりゃ、そうか。
「さっきのとは?」
「あいつの氷矢を砕いたでしょ。あれは何?」
あの空中に浮かんでいた塊は氷の矢!
オルセーのアイスアローとは若干形が違ったけど、同様の魔法?
ああ、やっぱり、あれ魔法だったのか。
本当かぁ。
もう、すごく、ものすごく興味あるぞ。
聞きたい、詳しく知りたい。
でも……。
魔法云々の話は藪蛇になる。
くぅ、残念過ぎる。
「拾った石を投げただけですよ」
そっちの魔法には興味津々だが、こっちの魔法は隠さないといけない。
この暗さならごまかせる、と思いたい。
そもそも発動前の待機状態は見られてないはずだから。
言いきれば、何とかなるはず。
しかし、石弾にしておいて良かった。
これが炎や水だったら投げたなんて言えないもんな。
それに、無駄に何発も撃たなくて良かった。
「石を投げた? ただの石であれを破壊って?」
「……」
「嘘でしょ?」
「本当です」
嘘ですけど。
「そんなこと……あるの?」
「……はい」
申し訳ない、嘘です。
「あなた、ほんとに普通人?」
ん?
普通人?
また聞いたことのない単語が出てきたぞ。
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