30年待たされた異世界転移

明之 想

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第1章 オルドウ編

冒険者ギルド 1


「パピルの角がこんなに! これを1人で狩って来られたのですか?」

 冒険者ギルドの受付。
 本日狩ったパピルの買取り素材である角を渡したところ、担当のエリスさんに驚かれてしまった。

「そうですが」

「本当に?」

「ええ」

「信じられない……」

 今は20歳の冒険者だが、少し前までは40歳の社会人だ。
 空気ぐらいは読める。
 なので、持ち込んだ素材の量も常識の範囲内、のはずだったのに。

「つい先日冒険者になられたばかりのコーキさんが、1人で狩ることができる量じゃないですよ。そもそも、パピルは初心者が単独で挑む魔物ではありませんから」

 おかしい。
 俺の持っている知識とは違う。
 魔物図鑑には対応が容易なんて書いてあったぞ。

「本当に1人で狩られたのですよね?」

「ええ、まあ」

「そうですか……」

 そう言ったきり黙り込んでしまったぞ。
 そんなにまずいことだったのか、これ。
 実はもっと多くの魔物を狩っているなんて、とてもじゃないが言えないな。

「コーキさんは新人なのに、かなりの腕を持っているということですね」

「……どうなのでしょう?」

「パピルをこれだけ倒せるのですから、そういうことですよ」

「はあ」

 駆け出しの冒険者である俺が、冒険者としての自分のレベルを判断できるわけがないんだけど。
 他の冒険者と比べようにも、知り合いもいないし。
 いや、1人いるか。

「それでも、コーキさんが初心者であることに変わりはありません」

「……」

「ですから、もっと用心をしてください。魔物の討伐では何が起こるか分かりませんし、1人では対応できない事態も間々起こりますから。冒険者の死亡率が高いのは、冒険者になって半年以内の者、単独で行動する者です。コーキさんは、そのどちらにも該当されているのですよ」

「……そうですね」

「剣や魔法の腕だけが冒険者の技術ではないということをご理解ください」

 冒険者には様々な技術が必要であるが、1人でその技術全てを身につけるというのは現実的ではない。そのため、多くの冒険者はパーティーを組んで活動をするということらしい。

「ワディン領の騒動のせいで、最近はこの辺りでも魔物の活動が活発になっているようですので、普段以上に気を付ける必要がありますからね」

 ワディン領?

 ああ、隣国の内戦の話だな。
 それで、魔物の活動が活発になると。
 そういうこともあるのか?

「エリスさん、忠告ありがとうございます。これからは十分気をつけます」

「分かってくださればいいのです。では、査定いたしますので少々お待ちください」

 魔物素材の買取り受付を離れ、少し離れた待機用の椅子に腰掛ける。

 うーん。
 気をつけると言っても、今のところパーティーに加入する気もないしなぁ。

 冒険者として生きていくと決めたわけでもなく、オルドウにいつまで居るかも分からない。そんな中途半端な気持ちで、オルドウの冒険者パーティーに入るというのは迷惑な話だろうから。

 それに、試したいことも色々ある。
 秘密も多い。

 しばらくは、ひとりでやった方がいいよな。

 とすると……。


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