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第2章 エンノア編
珈紅茶館 3
「しかし功己君も随分と変わったよね」
「……そうですか」
そんなことより、俺はもうふたりとの会話に疲れた。
幸奈のテンションにもついていけない。
ホント、今日の幸奈はどうかしている。
酒の場でもこの調子だったら、手におえないぞ。
……。
こんな幸奈とお酒を一緒に飲んでいいのか悩んでしまう。
今さらだけど、誘って良かったのだろうか?
なぜだか、ギリオンとヴァーンさんとの飲み会が頭に過ぎる。
あれもグダグダだったよな。
まいった。
「顔つきひとつとってもそう。去年の功己君とは全く違うよ」
「本当に変わったよ」
「……」
「功己、聞いてる?」
「聞いてる。聞いてるけど、変わったと言われても自分では分からないからさ」
実際のところ、40歳からいきなり20歳に戻ったのだから、そりゃあ、変わりもするだろう。
とはいえ、20歳時の俺がどういう態度、どんな話しぶりだったのかなど明確に覚えているわけじゃない。
ただまあ……。
幸奈とここまで親しく話すことはなかったということだけは確かだ。
「私は良い方に変わったと思うね。角が取れたというか、憑き物が落ちたというか、今の方が自然体に見えていい」
マスターともこんな風に話したことはなかったと思う。
「マスターも! わたしもそう思う」
「ふたりがそう言うなら、まあ、そうかもしれないですね」
この時間世界に来る前に神様からいただいた助言。
オルドウでの一連の事件。
幸奈との交遊。
変わったかもしれないな。
いや、変わったんだろう、きっと。
良い方に変わることができたのなら、それは嬉しいことだ。
なんて考えていると。
「でもさぁ、わたしたちもうお酒を飲める年齢なんだよねぇ」
「そうだな」
「それに……結婚もできる年齢なんだよ」
「……そうだな」
「お酒も一緒に飲みに行くことだし、その………………次は私と結婚でもする?」
「っ!? な、何言ってんだ」
とんでもない爆弾を投下してきたぞ。
これ、どういうつもりだ?
「結婚?」
本気じゃないよな。
そもそも、幸奈が俺と結婚したいと思っているなんてこと……。
前回の流れでは、他の男性と結婚していたし……。
「そう。できる年齢だよね」
「そんなの無理に決まってるだろ。だいたい、ふたり共学生なんだし」
「……冗談に決まっているでしょ。なのに、そんな本気で答えて」
俯きながら早口で答える幸奈。
冗談が通じなかったからか?
「ん、悪い。そうだな」
そうだよな。
冗談だよな。
「まあ、結婚は無理だろうけどさ……その、つ、つ」
「何だ?」
「……つ、月に1回くらいは一緒に遊びに行こうよ」
それくらいなら問題ない。
……。
そうかぁ。
前の時間の流れでは、この頃は月に1回遊ぶことすらなかったんだよな。
当然、俺がこの時代に戻る直前までもそう。
月に1度幸奈に付き合うことすらしていなかったなんてな。
どれだけ自分のことで頭がいっぱいだったんだか。
情けない。
「……そうだな」
この時間の流れの中では、同じ轍を踏むつもりはない
「まずは、飲み会だね」
「了解」
「それと……また花を観に行きたいかな」
「花? 何の?」
「梅の花。子供の頃一緒に行ったでしょ」
「ああ、そうだったな。分かった、春になったらな」
「約束だよ。今度は忘れないでね」
今度は?
今度も何も、初めての約束だろ。
だよな?
「……分かった」
「楽しみだなぁ」
ところで、約束した後で今さらなんだけど。
俺が幸奈と遊びに行っていいのか、特に飲みに行くなんて。
「……」
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