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第2章 エンノア編
山に棲む者 1
「す、すごい!」
足元の地面には大穴が空いている。
剣が地面に衝突したからというのは分かっているが、おそらくはそれだけではない。
放出してしまった魔力の影響もあるはず。
なのだが……。
半径1メートル程の半球の形で抉られた地面。
……。
ちょっと、自分でも驚きだ。
剣に纏わせていた魔力の効果が上がっているのだろうか。
それ以外の理由は思い当たらない。
でもまあ……上手くいったと考えてもいいのかな。
「とんでもない威力……」
さて、この男性は。
「大丈夫でしたか?」
剣を鞘に戻して振り返り、避難していた男性に声をかけたその瞬間。
「えっ!?」
な、何だ?
視界がずれる。
足下の支えがなくなり、倒れそうになった身体に力を入れたが。
浮遊感。
とともに暗転する視界。
「うわっ!?」
ドスン。
「っ!」
臀部から地面に衝突。
って、地面?
何が起こったんだ?
混乱している俺の頭上に。
ドサドサドサ。
砂が降りそそいできた。
「……」
ホント、いったい何が起きたんだよ。
「ぺっ、ぺっ」
頭や顔に着いた土をはらい、口に入った砂を吐き出す。
落下した時に打ちつけた臀部を確認してみる。
……大したことはなさそうだ。
それは良かったんだけど。
ここは?
ゆっくりと周囲を見回してみる。
少しばかり光が差しているが、周りは薄暗い。
洞窟の中のようなこの雰囲気。
ここは地中なのか?
光が差してくる方向を見上げると、3、4メートル程上方に丸い穴が空いていた。
その先から光が差し込んでいるようだ。
あそこからここに落ちたというわけか。
あの穴はさっきの穴。俺が空けた穴だよな。
その穴の周りからは、今もなおバラバラと土が落ちてきている。
「……」
どうやら、さっきの剣の衝撃で抉れた穴から地面が崩落したようだ。
で、その地下には空洞のような空間が広がっていたと。
そういうことか。
なるほどなぁ。
中が空洞だから、あの程度の穴でも崩落したんだな。
しかし……。
「まいったなぁ……」
魔物を倒した直後に地下に落下とは、なんとも恥ずかしい。
身体が無事だったのは幸いだけど。
「大丈夫ですか?」
上から声がかかる。
見上げると、あの穴からさっきの男性が顔を覗かせて話しかけていた。
「ええ、なんとか」
「ああ、良かった。すぐにいきますので、そこで待っていてください」
「え?」
あの穴から降りてくるのか?
と思って眺めているのだが、どうもそんな様子もない。
とすると、ロープでも取りに行ったのか?
正直言って、この高さなら土魔法で作った小山で足もとを確保するのは難しいことじゃない。
でもまあ、親切に助けに来てくれるというのだから。
少し待ってみようか。
しかし、この空洞……。
高さ3、4メートル、幅も3、4メートルあるのだが。
この場所から左右にかなりの長さの空洞が続いていそうだ。
そんな空洞を仄かな明かりが照らしている。
空洞の上下左右からの明かり、光る植物でも群生しているのだろうか?
とにかく、この現実からかけ離れたような雰囲気が好奇心を刺激してくる。
これなら、探索するのも面白そうだ。
そんなことを考えていると……。
足音が聞こえてきた。
さっきの男性とは気配が異なるようだ。
それに、複数の足音。
ということは、俺の知らない人がいるんだな。
この地下世界には。
幾つかの疑問が頭に浮かんでくるが、無警戒というわけにもいかない。
腰の剣に手をやり、来る者を待つ。
「……」
「あなたは……? どうやってここに?」
そんな俺の前に現れたのは3人の男性。
不思議そうにこちらを眺める眼差しに害意は感じられない。
「……あの穴から落ちてしまいまして」
上方の穴を指さす。
3人は驚いたように穴を見上げ、そのまま黙ってしまった。
「それで、あなたたちこそ、どうして」
ここにやって来たのかと聞こうと思ったところ。
「剣士さん、お待たせしました」
息せき切って、さっき俺が助けた男性が現れた。
「どこから来られたんですか?」
「あっ、それは……道がありまして」
あの穴以外にも地上からここに続く道があるということか。
まあ、そうだよな。
「……それで、そちらの皆さんは?」
まさかの地底人?
そう、それが知りたいんだ。
地底人という響きには、言い知れぬロマンがあるからな。
まっ、現代日本に魔法使いがいたくらいだ。
この異世界に地底人が存在しても驚くことではない。
いや、驚くか。
現に今俺は既に驚いているからな。
「仲間です」
「仲間ですか……」
「はい」
なるほど……。
でも、俺が聞きたいのはそういうことじゃない。
地底人か地上人か、そこが問題なんだ!
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