30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
101 / 1,578
第2章 エンノア編

エンノア 2

しおりを挟む

「はい。ですから、我々も決して魔落には近づかないようにしています。コーキさんも魔落には近づかないでください。といっても、魔落に行くには円筒の縁から下までかなりの距離を下りないといけないので、行こうと思って行けるものでもないのですけどね」

「その魔落に下りる道はあるのですか?」

「ないです。なので、簡単に行けるものでもないのですよ。もちろん、縁から落ちたら行けますが、あの高さから落ちたら命はないでしょうから」

 円筒の内側を下って魔落に行くことは困難だということか。

「なるほど。それで、魔物が魔落から出てくることはあるのですか?」

「まずないですね。円筒の高さも理由ではありますが、そもそも魔落にいる魔物は瘴気に集まっているようなものですから、そこから離れることはないようです」

「それは良かった」

「驚かせてすみません。魔落は危険ですが、普通にテポレン山で暮らしている分には問題ありませんので。というわけで、魔落に繋がるこの先は通行止めとなっているわけです」

 納得の理由だ。

「分かりました」

 テポレン山にはそんな恐ろしい場所が存在するんだな。
 しかし、オルドウでは全く耳にしなかったぞ。

 魔落の存在をオルドウの人々は知っているのか?
 疑問に思ってフォルディさんに訊ねてみると、おそらく知らないのではないかと教えてくれた。そもそも、テポレン山の北側7合目辺りは人が訪れるような場所ではないとのことだ。





「現在使用していな通路や広場はまだありますが、現状使用している施設で見学可能な場所は一通りご案内させていただきました。いかがでしたでしょうか?」

「素晴らしいです。感動しましたよ。地下にこんな町があるとは想像もしていませんでしたから。整備された通路も沢山ありましたし、広場のような空間も先ほどの場所以外にも複数あって。これはもう迷宮都市と言ってもいいですね。まるでカッパドキアのようでした」

 直径3~5メートル程の円状の空間がチューブのように縦横無尽に張り巡らされている様子はまさに圧巻。長い通路では距離も1キロ以上あったのではないかな。

 その広大さに驚くばかりではなく、薄明かりに照らされた静寂に満ちた通路を歩いていると、冥界にいるのではないかと勘違いしてしまいそうになったりもした。まるで、ペルセポネーにでもなったような気分だったな。

「それは、良かったです」

 とにかく、この地下の中では終始何とも言えぬ不思議な気分になり、悠久の時を感じるような、そんな気持ちにもなってしまった。

 本当にもう、案内されている途中からはただ感動するだけだったよ。

 結局のところ、この地下空間は本当に素晴らしい、この一言に尽きる。
 複雑な通路、地上への出入口、数個存在する広場、そこに建設された住居などの施設、これらが相まって異世界の地下迷宮都市と言っても過言ではない、そんな様相を呈しているように思える。

 素晴らしいとしか言えないよな。

 ただ残念なのは、テポレン山の山腹に複数存在する地上への出入口については1つしか見せてもらえなかったこと。これはまあ、村の防御を考えたらやむをえないことか。

「ところで、カッパ……とは何でしょう?」

「ああ、私の故郷にある地下都市の名称です」

「コーキさんの故郷にも地下に町があるのですか?」

「え~、まあ、そうですね」

「そうなのですか! エンノアだけじゃなかったのですね」

 思わずカッパドキアという固有名詞を伝えてしまったけど。
 これって地球の実在を知らせたとか、そういう事にはならないよな。

 ……。

 あとで、ステータス確認しないと。

「カッパかぁ……。見てみたいですねぇ」

 とりあえず、地球の地名を告げるのは控えた方がいいな。
 それと、カッパじゃなくて、カッパドキアだから。

「それで、エンノアというのは?」

「我々は自身のことをエンノアと呼んでいるのです」

「エンノア族ということですか」

「そういうことになりますかね」

「なるほど……」

 テポレン山に住むエンノア族ということか。

 そんなエンノア族のフォルディさんに、いろいろ話を聞かせてもらおうかな。

「いくつかお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「もちろんです。ただ、返答を許されていないものもありますので、そこはお許しください」

「了解です。ではまず、フォルディさんや皆さんは完全に地下で過ごされているのですか?」

「いえ、この地下から繫がった山の中腹に人目につかない小さな集落も作っております。そこで過ごすこともありますが」

 そんな場所もあるのか。

「ここ数年は地下から出ることも少なくなりました、特に昨年からは」

「理由を伺っても」

「山の東方にある国といざこざがありまして……。今はその国の民と顔を合わせたくないのですよ」

「なるほど、そういうことですか」

「ええ……。あの、コーキさんはその……」

「心配無用です。私は西方の国キュベリッツから来ました。とはいえ、キュベリッツ出身でもないのですが、もちろん、東方のレザンジュ王国出身でもありません」

「そうでしたか」

 安心したように頷くフォルディさん。

「今は地下で過ごされているということですが、食料はどうされているのでしょう?」

「地下で栽培可能な作物と山に出て動物を狩ることで手に入れています」

 地下で栽培可能な作物?

 この地下にはヒカリゴケのようなものによって照らされた薄明かりがある。
 もちろん、俺の知るヒカリゴケとは似て非なる物だろう。
 地球産と異なり、それ自体が発光しているようだからな。

 ちなみに、この苔を鑑定してみたところ、光る苔と出てきた。
 見たままだ……。

 もう少し詳しい情報が欲しいが、俺の鑑定ではこんなものなんだろう。

 しかし、こんな弱い光で作物が育つものなのか?

「その作物とはどういったものでしょう?」

「ベオというものです。挽いて粉にして使っています」

 小麦のようなもの?
 そんなものがこの地下で。

「そうでしたか」

「夕食に出されると思いますので、ぜひ召し上がってください」

「それは楽しみですね」

 どんな味がするのか興味深いな。




しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

転生チートは家族のために ユニークスキル『複合』で、快適な異世界生活を送りたい!

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

Gランク冒険者のレベル無双〜好き勝手に生きていたら各方面から敵認定されました〜

2nd kanta
ファンタジー
 愛する可愛い奥様達の為、俺は理不尽と戦います。  人違いで刺された俺は死ぬ間際に、得体の知れない何者かに異世界に飛ばされた。 そこは、テンプレの勇者召喚の場だった。 しかし召喚された俺の腹にはドスが刺さったままだった。

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

処理中です...