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第2章 エンノア編
エンノア 9
「さっ、どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「はい」
「……」
先ず一人の女性が口に含む。
「気分はどうですか? 飲みづらくありませんか?」
少しためらった後、ゆっくりと嚥下した。
「……大丈夫です」
「では、飲み干してください」
「分かりました」
最初は不安そうにしていたが、一度口にしてからはしっかりと飲んでくれた。
「はい。あの、美味しかったです」
「それは良かった。では、少し手を貸してください」
「手、ですか?」
「はい」
「……」
無言で差し出された手を両手で包みこむ。
「あの、何を?」
「少し治癒魔法を使います」
「えっ?」
俺の治癒魔法にこんな病を治す効果はないし、世間一般でもそんな治癒魔法はないとされている、らしい。が、こういう使い方はできるはずだ。
「薬の浸透を助ける魔法です」
はっきりと断言する。
本当のところ、俺の治癒魔法には傷口を修復するだけの効果しかない。
はっきりと確認したわけじゃないが、病気の類を治す効果はないはずだ。
そうなのだが、魔法はイメージの力で効果や効能が増すということを、30年間の実験で俺は確信している。
だから、このビタミンCの液体を効果的に身体に浸透させるため、その助けになる魔法を今行使しているんだ。
ちなみに、昨夜自分の身体で何度も練習した。
健常なこの身体では効果を確認することはできなかったが、それでも、やらないよりはまし程度の効果はあると思っている。
「そのようなものが?」
「はい、では気を楽にしてください。すぐに済みますので」
「……はい」
3分ほど、じっくりと行使する。
自信に満ちた態度で行使する。
「……」
実は治癒魔法の効果とは別に、プラシーボ効果的なモノも狙っている。
いきなりやって来た余所者の若造が薬を渡しても、病に苦しんでいる方々にどこまで信用してもらえるか分からない。
信用、信頼と言うものは大切だ。
この薬と魔法を併用することで少しでも治療に希望を持ってもらえれば、信頼してもらえれば、それが症状の改善につながるのではと思っているんだ。
「終わりましたので、ゆっくり休んでください」
「少し楽になった気がします。ありがとうございました」
「良かったです。では、次の方もどうぞ」
そうして残りの3人も無事治療することができた。
味も好評だった。
魔法も多分……。
これで症状の重い4人は終了。
あとは様子を見てからだな。
次は中症と軽症の方を……。
ん?
重症の人数、1人少なくないか。
「サキュルスさん、症状の重い方は5人ではありませんでしたか」
「それは……」
言いよどむサキュルスさん、その声にかぶせるように。
「コーキ殿、この度はありがとうございました」
感謝の言葉。
その声に振り向くと、いつの間にかゼミアさんが部屋の中に入って来ていた。
「ゼミア様」
「ゼミアさん、感謝の言葉はまだ早いです」
「いえ、魔法まで使っていただいて、先ずは感謝を述べませんと」
「はあ……分かりました。それで、サキュルスさん、あとひと方は」
「……」
「サキュルス、わしが言おう」
「はい」
「コーキ殿、重症の1名は数時間前に鬼籍に入りました」
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