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第2章 エンノア編
異能 3
心の内を覗かれたことによって、俺が異世界人だとばれたのではないか?
そう思った瞬間、急に冷汗が吹き出してきた。
あっという間に背中が濡れる。
……。
いや、でも、ステータス上の露見には何も現れていなかったぞ。
ということは、問題ないんだよな。
「覗くことができるのは、そのほとんどが表面的なもので、感情や心情に近いものだけになります。それに、この力は全ての人に対して使えるわけではありません。ほぼ覗けない対象もいますので」
そうか、感情だけなのか。
それなら、大丈夫だよな。
でも……。
「私はどうですか?」
「それは……」
言葉に詰まり黙り込むフォルディさん。
話しづらいのは理解できるが、こちらとしても聞かずにはいられない。
強く問いただそうと思ったところ。
「申し訳ございません。……コーキ殿の心の内を少しばかり覗こうといたしました」
ゼミアさんが言葉と共に頭を下げてきた。
その横ではスペリスさん、いや、全員が頭を下げて謝罪をしている。
「……」
正直に話してくれたこと、それは何よりだと思うのだが前回のこともある。
頭の中を勝手に覗かれたのだとしたら、簡単に納得できるものではない。
かといって、どうすればいいのかという話だ。
「コーキ殿に対する失礼、お詫びの言葉もございません。ただ、これは見苦しい言い訳になりますが……。我々の掟では、エンノアの地を訪れた全ての者の心を覗くことになっておりましたもので」
そうか、掟か。
なら、仕方ないな。
と簡単には納得できないが。
「みなさん、頭を上げてください。掟というのは分かりました。それがエンノアを守るためというのも」
「……」
「それで私の中に何を読んだのですか」
まずは、それを確認しないと。
ゼミアさんがゆっくりと頭を上げ、躊躇うように口を開く。
「ほとんど何も読み取ることができませんでした。ただ……我らに対し好意のようなものを持たれていると。それだけは感じ取ることができました」
それだけ?
本当にそれだけなのか。
「……」
好意なんて、心を読むまでもなくエンノアに対する俺の態度から一目瞭然だろ。
「それでも、コーキ殿の心の内を覗いたのは紛れもない事実。申し訳ございませんでした」
再び頭を下げる。
「まあ……その程度なら、問題はないのですが」
好意を知られたとしても、問題はない。
だが、これからどうするかが重要だ。
「今後は私の心を覗くのは止めてもらえますよね」
「当然です。エンノアの恩人たるコーキ殿に、そのような失礼なことは二度といたしません」
「信じていいのですね」
「信じていただきたいと思っております」
「そうですか。それを聞くことができて一安心です」
「ただその、付け加えて申しますと。おそらくコーキ殿の心を覗くことは、今後我らには不可能かと思われます」
「理由を聞いてもいいですか」
「そもそもコーキ殿の心は読み難いのですが、今回事実を知りコーキ殿の心の内に警戒心が芽生えましたので、心を読むことはいっそう困難なことになりました。さらに、心を読むには対象との身体的接触が必要となりますが、今後我らがコーキ殿の身体に触れる場合、コーキ殿は警戒されるでしょう。今のエンノアにはそんなコーキ殿の心を読める者など存在しておりません」
心を読むには、接触が必要なんだな。
それなら、万一の場合でも対策は可能か。
とすると、俺に情報を開示してくれたということ自体が信頼の証ということになる。
「私を信頼してくれたということなのですね」
「その通りでございます」
「分かりました。私もエンノアの皆さんとは隔意なくお付き合いたいので、皆様のことを信じたいと思います」
「あ、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
4人の声が揃った。
まあ、エンノアの思いも行動も納得はできる。
こっちに実害がないのなら、今回は良しとしよう。
「いくつか質問があるのですが、よろしいですか?」
「もちろんです」
「まず、今回はいつ私の心情を読まれたのでしょう?」
「コーキ殿をお迎えした際、皆が握手した時です」
ああ、あの時か。
なるほど。
だから、皆が握手を求めてきたんだな。
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