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第2章 エンノア編
居酒屋 1
エンノアでの一件の後。
オルドウ、日本、エンノアと各地を転々としながら過ごすこと数日。
今日は日本で過ごす週末、武上に誘われていた飲み会の日だ。
約束の18時の20分前に待ち合わせの駅前に到着。
武上の姿は見えない。
他の参加者らしき者もいないようだ。
ということで、ベンチに座って時間を過ごす。
40歳の俺ならスマホ片手に時間をつぶしていたのだろうけど、20年前にそんな物があるわけもない。それどころか、今の俺は携帯電話すら持っていないからな。
そこで、ふと考えてしまう。
待ち合わせ時間や場所を間違えていたらどうしよう?
携帯すら持っていない俺は、公衆電話から武上に電話するしかないのか。
って、武上は携帯電話持っていたか?
いや、持っていたとしても、俺は武上の番号を知らないな。
……。
そうだった。
こういう時代だったんだ。
まいったなぁ。
あの時代の便利さを知っているから、なおさら不便に感じる。
まあ、間違っていた場合は、その時のこと。
帰るだけだな。
とはいえ……。
20歳での飲み会というものにも少し興味が出てきていたので残念な思いもあるが、仕方ない。
などと考えながら、ベンチに座っていると。
「おっ、有馬早いな。おっは~」
「武上……なんだよ、それ」
その挨拶はなんだ。
「えっ、おまえ、おっは~、知らないの?」
「……知ってる」
そうだった。
今はこれが流行っているんだよな。
でも、もう18時だぞ。
おっは~はないだろ。
「さすがに有馬でも知ってるよな。ん、何だその顔」
「いや、ちょっとな」
「まあ、いいや。さて、今日の飲み会こそ、いい子を捕まえるぞ。有馬も頑張れよ」
「おい、今日の飲み会は合コンじゃないんだよな」
「ちがう、ちがう。でも、可愛い子見つけたら突撃するけどな」
「……そういうことか」
なんか帰りたくなってきた。
「前回の飲み会は散々だったからな。今夜はリベンジだ」
前回もそんな事してたのかよ、こいつ。
それに、リベンジって……。
「今日は何人参加者がいるんだ?」
「言ってなかったか。男5人、女4人。その内、初対面の女性が2人だ」
「そうか。男がひとり多いんだな。なら……帰ってもいいか」
「おいおい、今さら何言ってんだ」
「急に疲れが出たようだわ」
「元気そうな顔してるぞ。まあ、たまには付き合えよ」
「……」
「なんだ、ノリが悪いな」
「そうか」
その通り。
お前のせいだけどな。
武上の妙なテンションにあてられ、こっちはやる気が急降下中だ。
「まっ、でも、有馬も楽しめよな。で、他はまだ来てないな」
「ここに全員集合なのか?」
「ここに5人、店直が4人の予定だな」
「集合場所を別にする必要あるのか」
「うーん、無いな」
なんだそれ。
「で、今何時だ?」
「ほれ」
懐中時計を取り出して武上に見せてやる。
「おっ、もうすぐだな」
「ああ」
「しかし、渋い時計だなぁ、それ。何ていうか、アンティーク感があっていいよな。特に、そのエンブレムが格好いい。黒蛇が剣に巻き付いている紋章みたいなの」
「この懐中時計の良さが分かるのか。意外だな」
この懐中時計の良さが分かるとは、武上もなかなか見所がある。
ただの、筋肉馬鹿じゃなかったんだな。
「おう、気に入ったぜ。って、今馬鹿にしたよな」
「してないぞ」
「……まっ、いっか。で、そのエンブレムはどこかのブランドなのか?」
「どうだろ? 他では見たことないな」
「ふーん」
この懐中時計、曾祖父からの貰いものだけど由来なんかは聞いていない。
ブランドは気にならないが、故障した場合に困るかもしれないな。
街の時計屋で修理できるものなのか?
前の時間の流れの中でも、故障後は結局そのまま放置してしまったから。
「おっ、来た、来た。3人そろって登場だ」
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