30年待たされた異世界転移

明之 想

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第2章 エンノア編

古野白楓季 3


「答えは同じですよ」

「そうよね。でも、それなら、どうやってあの結界を破壊したの? あれを破壊するって、凄いことなのよ」

 まあ、そう思うよな。
 疑われるのは、分かっていたことだ。
 だが、幸いなことに、ステータス上の露見の点滅は変わっていない。

 なら、このまま押し切るのみ。

 しかし、いくら小声とはいえ、普通人や結界という不思議用語をここで話していいんだろうか?

 周りを眺めてみると……。

 かなり騒がしいし、こちらを見ている者もいない。
 
 ……問題ないか。

「普通人が壊せるものじゃないのよ。一体どうやって」

「力を入れたら壊れました」

「……」

 そんな訳ないでしょ、と目が語っている。
 そりゃ、そうだ。
 俺だって、逆の立場ならそう思うわ。

 でもさ、そう答えるしかないんだよ。

「たまたま上手くいったんでしょう」

 だから、もう諦めてくれ。

「……」

「……」

「はぁ~、分かったわ。有馬くんには借りがあるものね。そういう事にしておいてあげる」

「はい」

「ただし、報告はするわよ。それで、上がどう判断するかは……分からないわね」

 それも困るんだが……。
 異能者に襲われ結界にまで閉じ込められたんだから報告しない訳にはいかないよな。
 分かってる。
 けど。

「何とかなりませんか」

 そんな報告をするのは止めて、古野白さんの心の内に留めてほしい。
 とは、さすがに頼めないか。

「無理ね。それに、安全のために上司に相談しろと言ったのは有馬くんでしょ」

 そうだった。

「……」

 報告は避けられないか。

 とはいえだ。
 そうなると、こちらの身がますます危うくなってくる。
 前回に続いての今回の報告で、俺が怪しまれないとは到底思えない。

 今のところ、ステータスの露見欄に変化は見られないけど、上司への報告次第では点滅が3になる可能性も出てくる。それどころか、点滅4や5の可能性すら考えられる。

 うん?
 点滅が3を超えてもいいのか?
 点滅3で露見1確定とか、そんな設定はないよな。
 ないと思いたい。

「もう、分かったわよ。何とか上手く話しておくわ」

 助かる。
 けど、どうやってごまかすのか?

 力づくで普通人が結界を破壊したとか?

 いや、いや、自分でそうは言ったものの、こんな言い訳が通じるとは思えない。

 ここは、もう。

「古野白さんの力で脱出したことにしてもらえませんか?」

「善処はするけど難しいわね。どちらにしても、あなたがいたことは報告するわよ」

「いなかったことには?」

「それは無理よ。あなたがいたことは、あの2人組を捕まえた時には知れる事なのだから」

 それは、まあそうだ。

 いや、待てよ。
 多分あの2人、俺が結界を破壊するところ見ていたよな。

「私が結界を破壊したことも、あの2人組が話すんじゃないですか?」

「そうかもしれないわね」

 それなら、ごまかしようがない。
 困った……。

 古野白さんの上司に呼び出しとかされるのか?
 されるんだろうな。

 はぁぁ。

「そんな顔しないで。何とかしてみるから」

 そうだよな。
 古野白さんに頼むしかない。

「お願いします」

 組織的なものに呼び出された日には、露見する可能性が高まるだけ。
 可能な限り、そんなものに関わりたくはないんだ。

「ええ、分かったわ」

「ありがとうございます」

「いいわよ。でも、その代わりと言っては何だけど、有馬くんの力を教えてくれないかしら」

「……」

「あなたが普通人だったとしても、その力は普通じゃないわよね」

「力と言っても、異能など持っていませんし」

「異能じゃなくてもいいわ。何かあるんじゃないの?」

 俺が異能ではない力を持っている。
 そう思ってるのか?


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