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第3章 救出編
イタリアン 1
ちょっと高級で瀟洒なイタリアンレストランの一角。
洒落たテーブルの上には小粋なテーブルクロスが掛かっており、これまた真っ白で小洒落たナプキンが傍らで存在を主張している。
「ごめんね」
そんな店に緊張したわけではないだろうが、硬い表情をした幸奈が俺の正面の席に座っている。
常夜の森でシアに魔法を教えると約束して数日。相変わらず、日本とオルドウを行ったり来たりの毎日を過ごしている。
日々の活動も、シアに魔法を教えるという一点を除き特に変わることもなく平常通りにこなしているばかりだ。
そんな日々を過ごして迎えた今日は、幸奈と約束をしていた週末。
本来ならお酒を楽しめる店で夕食という予定だったのだが、またしても家族の問題とやらで、夜は出かけられないという連絡がきたんだよ。
それなら、また次の機会にと提案をしたものの、昼なら時間が取れるということで予定を変更して急遽ランチに来ることになったと、そういうわけだ。
「今日はごめんね」
で、今はこんな感じ。
申し訳ないという思いが幸奈の全面から表れている。
「気にしなくていいから。それより、注文するぞ」
「うん」
近くにいたウエイターを呼んで、無農薬の葡萄がどうとか書いている高価な葡萄ジュースとランチコースを2つ注文する。コースは3種類あったが、2番目に高い値段のコースを選択。
ここに来るのは2度目なのだが、ランチは案外お得な値段設定になっている。
先日この店で妹の香澄と夕食をとった際は、かなりの出費を強いられたからなぁ。
あいつ、遠慮なく食べまくって追加注文までしていたんだよ。
まあ、喜んでいたからいいんだけどさ。
でも、あれだ。
こういう時って、つい真中のコースを選んでしまうよな。
これが極端回避性ってやつか。
確かに、中間というのはどちらの端にも偏らず調和がとれていて素晴らしいからな。
仕方ない。
そんなどうでも良いことを考えながら幸奈を覗き見る。
まだ暗い気持ちを引きずっている様子。
「……」
「……」
とりあえず……。
「そのワンピースにカーディガン、似合ってるな」
本当に似合っている。
明るい表情なら、もっと映えるはずだ。
「……そう?」
「ああ、いいと思うぞ」
「コーキ、こんなのが好きなんだ?」
「ん? まあ、そうかもな?」
「どうして疑問形?」
「女性のファッションは難しいからな」
「そうね」
「この暑いのに、長袖のカーディガンだしな」
「似合ってるなら、いいでしょ」
「いいけど、幸奈の半袖も見てみたいからな。二の腕もな」
「えっ! 何言ってるのよ。もう」
「まっ、それも似合ってるから、いいんだけどさ。でも、暑くないのか」
「暑い時もあるけど、日焼けしたくないから。それに、冷房が効き過ぎていると冷えるしね」
「なるほど」
「女の子はいろいろと大変なのよ」
「そうだな」
うん、少しは元気が出てきたか。
元気が出てきたところで。
「なあ、幸奈」
「何?」
「家で色々あるみたいだけど、大丈夫か?」
「えっ? なに!? 大丈夫だよ」
ああ、やっぱり。
顔色が変わってしまった。
けど、はっきりと言っておかないと。
「そうか……。前にも言ったけどさ、話したくなったらいつでも俺に言えよ」
「う、うん……」
「俺にできることがあるなら、何でもするからさ」
「ありがと……。でも、大丈夫だよ。それに、あの、家の問題だし」
「家の問題でも何でも、抱えきれない時は言ってくれ。遠慮なんてなしだぞ」
家庭の問題に他人が踏み込むのもどうかとは思うが、状況によっては、そうも言っていられない。
「でも……」
「元気のない幸奈を見てると、こっちの調子も狂うからさ。俺を助けると思って、な」
「……」
「まあ、俺の我儘だと思ってくれたらいい」
「……うん、うん。ありがと。ホントに困ったら、その時は話すね」
曇っていた顔にわずかばかりの笑顔が現れた。
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