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第3章 救出編
セレスティーヌ 3
<セレスティーヌ視点>
どうしても私は山を下らないといけません。
そう思って、足を踏み出しました。
なのに。
「っ!?」
あれは魔物?
恐怖で足がすくんでしまいます。
「魔物……じゃない」
よかった。
ここまで散々でしたけれど、まだ運が残っているみたいです。
でも、安心はできません。
テポレン山の麓まではまだまだ距離がありそうですから。
もし魔物に遭遇したら……。
護衛のいない今の私では、テポレンの魔物に対することなんてできません。
私の力なんて、ここでは役に立たないのです。
「……」
無事に下山することができるのでしょうか?
運よく魔物に遭遇しなかったとしても、こんな山道をひとりで迷うことなく下りることができるのでしょうか?
少し前までは護衛騎士が周りにいました。
でも、今は……。
全く自信がありません。
不安ばかりが頭を占めてしまいます。
あぁ。
どんなに強がっても、自分の心はごまかせないです。
ひとりで山道を歩くのは怖いです、自信など持てるはずがありません。
ワディン家の未来のために、騎士たちのために、と意気込んでいた私の思いが急速に萎んでいくような気がします。
「……」
情けないです。
神娘ともてはやされながら、こんな山中ではなにもできない。
無力な自分が本当に情けない。
でも、それでも……。
歩き続けるしかないのです。
たとえ魔物に倒される未来が待っていようとも、それまでは進むしかないのだから。
疲れと不安でどうにかなってしまいそうですけど、今は足を前に運ぶことだけを考えましょう。
「豊穣の神ローディン様、どうか私を、ワディン家をお守りください!」
きっとローディン様が私を見守ってくださる。
それが私の拠りどころ。
今はただローディン様の加護を祈るばかりです。
ひとりになってから1刻以上は過ぎたでしょうか。
今のところ道に迷ってはいないと思います。
と言いましても、道とも呼べぬような獣道を歩いていますので、これが本当に正しい行路なのかは分かりません。
それでも、下に向かっているということだけは分かりますから。
今は自分を信じて、この道を下に進むだけです。
こうして足を進めていますと、少しずつですが麓まで下りる自信も出てきたような気がします。
このまま魔物に遭遇さえしなければ、何とかなるかもしれないと……。
テポレン山の麓ではシアが待っているはずです。
シアと合流してオルドウに入ることができれば、そうすれば。
萎みかけていた希望がまた膨らんでくるようです。
足が軽くなってきます。
そんな楽観がいけなかったのでしょうか。
少し開けた場所に到着したと思いましたら。
草むらから音がしたのです。
「えっ!?」
「ウゥゥゥ」
そんな!
ここまで無事に進んで来たのに。
「グルルゥゥ」
目の前にグレーウルフが2頭!
脚が震えます。
こんなの、どうしようもないです。
どうして……。
「ウウゥゥゥ」
もう……。
もういやだ!
動きたくない!
どうして私ばかりがこんな目に。
ああ……。
私の外殻が剥がれ落ちそうになります。
模範的な貴族令嬢として振る舞うために身につけてきた、この外殻、この仮面が。
もう無理です。
でも……。
ユーナス兄さま……。
私の心の奥底に棲む深い悔恨と共に心に浮かぶのは兄さまの優しい笑顔。
「……」
そうですね!
私は誇り高きワディン家の神娘セレスティーヌ・キルメニア・エル・ワディン。
いついかなる時もその矜持を失う訳にはいきません。
だから。
震える脚を掌でおさえ、そして、ゆっくりと脚を動かします。
よかった、動きます。
ようやく動いた脚で、グレーウルフから少しだけ距離をとることに成功しました。
とはいえ、そんなことでグレーウルフの素早さに抵抗できる訳もありません。
「きゃあ!」
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