30年待たされた異世界転移

明之 想

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第3章 救出編

セレスティーヌ 5


 ということで、若干遠慮しながらも横たわる女性の肩に手をのせ、軽く揺らしてやる。

「もし? もし??」

 これで意識が戻ればいいのだが……駄目か。
 目を覚ます素振りがない。

 もう一度だけ、少し強めに揺らし。

「大丈夫ですか?」

 すると。

「うっ」

 小さな声が口から洩れ。
 そして……。

 ゆっくりと瞼が開かれ、覗き込んでいた俺の顔を彼女の瞳が捉える。
 焦点があっていないのか、何度も瞬きを繰り返す。

「んん……えっ?」

 瞬きが止まり、こちらを見つめる目が大きく見開かれる。

「良かった、気が付かれたのですね」

 安堵の溜息がもれてしまう。
 これで、シアとアルの悲しむ顔を見ないですむな。

「あ、あなた誰ですか? ここは? えっ、魔物は?」

 混乱したように、矢継ぎ早に問いかけてくる。
 当然だ、こんな状況で平静でいることなどできないだろう。
 でも、今は先に容体を確認しないと。

「安心してください。あなたを助けに来た者です。魔物も近くにはいません。それより、身体は平気ですか? どこか痛いところはありませんか?」

「助けに……?」

「ええ、そうです。詳しいことはのちほど説明します。それで、痛む箇所はありませんか? 頭は打ってませんか?」

「あなたが? えっ?」

 明らかに、こちらのことを不審に思っている。
 まっ、この状況なら仕方ないな。

「どこか痛むところはありませんか?」

 けど、まずは身体の状態を調べないといけない。

「その……脚と腰が」

 彼女も理解しているのか、こちらを不審に思いながらも答えてくれた。

「脚と腰が痛いのですね。それだけですか?」

「あとは頭も痛いです」

「頭もですか」

 脚と腰だけならまだしも、頭痛がするというのは問題だぞ。
 場合によっては、まずいことになる可能性もある。

 早く治療したいが、俺の治癒魔法でどこまでの効果があるものか?
 あやしいものだ。
 しかし、今すぐ治療するとなると、それしか術はない。

 いや、待てよ。

 あれがあるじゃないか。
 そう、常夜の森でもらったあの薬が。

「これを飲んでください」

 小瓶を取り出し、手渡す。

「これは何ですか?」

「回復薬です」

 もしくは治癒薬とでも呼べばいいのか。
 とにかく、こいつはゾルダーから受け取った高級な治癒回復薬の入った小瓶だ。

「飲めば良いのでしょうか?」

「はい。頭を強く打っていた場合でも、これさえ飲んでおけば大丈夫です」

 この薬は服用もできる。
 これを飲んでおけば、脳内に出血があったとしても大丈夫なはず。

「私がいただいても、よろしいのですか?」

「ええ、もちろんです。半分程度飲んでみてください」

「……ありがとうございます」

 軽く頭を下げた後、小瓶を口元まで運び……。
 少し躊躇っているな。

 信用しがたいのは分かるが、ここは飲んでもらわないと困る。

「大丈夫です。ただの回復薬ですから」

 語気を強めて勧めると。

「……はい」

 ゆっくりと回復薬を口に含み、瓶から口を離す。

「……苦くないです」

 味を確かめ安心したのだろう。
 再度口に運んでそのまま半分の量を飲み干してしまった。

 よし!
 これで大丈夫。
 仮に強く頭を打っていたとしても、問題ないはずだ。

 しかし、今回は思いがけずゾルダーに助けられたな。
 あいつがシアに手を上げたことは許せないが……。

 今回のことは、シアの望みを叶えたことにもなるんだよな。

 まっ、この女性がセレスティーヌ様であればの話だが。

「では、脚と腰を少し見せていただいても?」

 こちらは重傷に見えないが、あの高さから落ちたのだから油断していいものではないだろう。

「いえ、それは……」

 戸惑うように俯きながら答えてくる。

「先ほどの治癒回復薬はそちらの怪我にも効くと思いますが、傷みが酷いようでしたら治癒魔法で応急処置もいたしますので」

「あの、殿方に肌を見せるのは……」

 俯いていた顔が真下を向いてしまう。


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