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第3章 救出編
セレスティーヌ 6
しおりを挟むそうか。
貴族家の女性が男性に肌を見せるというのは非常識なことなんだな。
けど、今回は問題ない。
「言葉が足りず申し訳ありません。服の上から治癒魔法を使わせていただきます。それなら、問題ありませんよね」
「……はい、そういうことでしたら」
了解してくれたので、さっそく服の上から治癒魔法をかける。
俺の治癒魔法でも、痛みを緩和する効果くらいはあるだろう。
まあ、今回は回復薬を服用済みだし安心だな。
ちなみに、これは密かに感じていることなのだが、俺の治癒魔法の効果が少し上がっているような気がするんだよな。
最近、治癒魔法を使う機会が多かったからなのかどうなのか。
いずれにしても、治癒魔法の腕が上がっているのなら、ありがたい。
「いかがですか?」
あっという間に治癒魔法が終了。
「ありがとうございます。少し楽になりました」
ほんの僅かだけれど微笑みを浮かべながら答えてくれた。
「効果がありましたか、よかった」
初めて気を許したような表情を見せてくれたな。
しかし彼女、少し落ち着いてみると……。
シアとアルから容姿や特徴について聞いてはいたけれど。
これは想像以上だぞ。
まず、全体的な印象は白。
とにかく、白いという言葉がすぐに頭に浮かんでくる。
そして、その白さを成す造作に目がいくのだが……。
清らかな新雪のように白く透き通った肌。
腰まで伸ばした絹糸のように滑らかな白銀の髪。
しっとりと濡れたような艶を見せる薄紅色の瞳に長い睫毛。
すっきりと形よく整った鼻梁。
潤いを含んだ桜色の唇。
一目見ると一瞬で惹きつけられてしまうような美しさが、至上とも思える美が、確かにそこに存在している。
テポレン山での過酷な逃避行が彼女に落とした陰など、全く気にならないくらいに。
……。
「これなら歩くこともできそうです」
「あっ……ええ、それは良かった。回復薬と治癒魔法の効果があったようですね」
こんな状況だというのに、年甲斐もなくつい見惚れてしまったようだ。
「薬と治癒魔法をありがとうございました」
感謝を告げてくれるその所作も美しい。
このあたりは高貴な生まれの生粋のお嬢様という感じがする。
「いえ、本当に大したことではないのですが……。感謝の言葉、ありがたくいただいておきます」
「治療に関しては、本当に感謝しておりますので」
感謝してくれているというのは言葉だけではないようだ。
とはいえ、まだ警戒心は解けていないか。
ああ、そういえば、自己紹介もまだだったな。
「申し訳ありません、まだ名乗ってもいませんでしたね」
「……」
「私はコウキと申しまして、シアとアルから依頼を受けてあなたを迎えに来た者です。セレスティーヌ様ですよね」
「えっ!?」
よほど驚いたのか、目を丸くしている。
「そうだったのですね。シアとアルの依頼で」
「はい」
「そうでしたか。そうとは知らず、失礼な態度をとってしまいました。申し訳ございません」
「いえ、こちらが名乗り忘れていたのが悪かったんですよ。それより、セレスティーヌ様で間違いありませんよね」
もちろん、この容姿と受け答えから既に確信を抱いているが。
「はい、シアとアルからお聞きのこととは存じますが、わたくしはセレスティーヌ・キルメニア・エル・ワディンと申します。この度のこと、心から感謝申し上げます」
先ほどの感謝とは異なり、左手を胸に添え片膝を軽く曲げながらの美しいお辞儀。
きっとレザンジュ王国の正しい作法なのだろう。
「頭をお上げください。もう、さきほど感謝の言葉はいただきましたので」
「最前のお礼は治療に対するものです。こちらは私を迎えに来ていただいたことへのもの。どうかお受け取り下さい」
シアとアルの依頼という言葉は、効果てきめんのようだ。
こちらの身元に対する不審が完全に払拭され安心したのだろう。
先ほどまでと比べ、余分な力が抜けているように思われる。
もっと早く伝えるべきだったな。
「……そうですか。では、お受けいたします」
「はい!」
「こうしてお受けしたからには、セレスティーヌ様を必ずシアとアルのもとまで、お連れいたしますよ」
「コーキ様、よろしくお願いいたします」
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