30年待たされた異世界転移

明之 想

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第3章 救出編

セレスティーヌ 8

 さて、それでだ。
 まずは、どうしたものか?

 セレスティーヌ様をテポレン山の麓まで連れて行くと約束したものの、まずはこの崖下から脱出しないといけないのだが。

「……」

 10メートル以上あるこの崖を登るのは容易じゃない。
 俺ひとりなら何とかなるかもしれないが、セレスティーヌ様のことを考えると崖を登るという選択肢は選びづらい。

 なら、土魔法で土を大量に出して崖上まで移動。
 という作戦も可能ではあるが、この高さとなると何度魔力を使い尽くせば崖上まで届くことやら。

 これも、保留だな。

 となると、崖下を探索して他の道を探すのが妥当か。

 道を探しても見つからないようなら、ここに戻って来て登るなり、土魔法を使うなりすれば良い。とまあ、そんな感じで進めるしかないか。

 とは言ってもだ。

 順調に事が進まなければ、今夜は野宿になるかもしれないな。
 セレスティーヌ様には申し訳ないけれど。
 その可能性は高いかもしれない。

「セレスティーヌ様、この崖下を少し探索して麓への道を探しましょう」





 半刻以上道を探したが、セレスティーヌ様が通ることができるような道を見つけることはできなかった。

 もう、今から道を見つけたところで、夕暮れを前にテポレン山を下山することは叶わないだろう。

 一応、エンノアの皆さんのお世話になるということも考えたが、エンノアの人々は外の人を歓迎していないようだし、それにレザンジュとは問題もあるようだからな。

 レザンジュの貴族を連れて行くというのもはばかられる。

 ……。

 とはいえ、野宿か。

 それとも、エンノアか。

 時間的にも……そうだな。

 やむを得ない。
 セレスティーヌ様には我慢してもらおう。

 今夜は野宿だ。

「セレスティーヌ様、申し訳ないのですが今日中に下山することは難しくなりました。なので、野宿の準備をしたいと思います」

「そうですか……。分かりました、お任せします!」

 野宿の話を聞きわずかに落胆したような顔を見せながらも、次の瞬間には笑顔で答えてくる。

 大貴族の令嬢だというのに。
 しかも、こんな儚げな容姿をしているのに。

 立派なもの。
 気丈なものだ。

「では、いったん先程の場所まで戻りましょう」

「はい」

 テポレン山の山際から覗く陽はかなり傾いてきている。
 急いだ方が良いだろう。




「……」

「……」

 ふたりで戻る道中に、ほとんど会話はない。
 当然のことながら、セレスティーヌ様の雰囲気も軽いものではない。

 だからという訳ではないが、こちらとしても今夜のことを考えると気が重くなってくる。
 今さらではあるが、貴族の未婚女性とふたりっきりで野宿なんてな。
 本当に、大丈夫なのだろうか?

 不敬罪とか?
 ないよな?

 そんな重苦しい雰囲気の中。
 探索に出る際はかなり警戒していたセレスティーヌ様も、復路となると気が緩んでしまうのだろう、注意力が散漫になってきたように見える。

 もちろん、蓄積した疲労もあるのだろうが、足の運びがおぼつかない。

 それでも、気丈な態度を崩さず歩を進める様子は立派の一言だ。
 とはいえ。

「この辺りは道幅が狭いので気をつけてください」

 この崖下は崖上に比べると道らしき道もない。
 それでも無理やり歩く傍らには斜面やら断崖やらと、かなり危険な場所と言える。
 特にこの辺りは道幅が狭い。
 足元も緩い。

 注意が必要だ!

 俺の言葉に軽く頷くセレスティーヌ様。

 セレスティーヌ様の緊張と疲労、それに怪我による体調不良は理解していたつもりだが、彼女のしっかりした振る舞いを目の当たりにして、諸々見誤っていたのだろう。

「えっ、きゃあぁぁ」

「危ない」

 地面にせり出した丈夫な木の根に躓き転倒するセレスティーヌ様。
 倒れる先は植物が生い茂る斜面。

 引き寄せようとするが、間に合わない。

 このままじゃ、転がり落ちてしまう!


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