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第3章 救出編
魔落 4
砂と石ばかりで植物などは全く見られない地面を踏みしめ慎重に探索を続ける。
が、今のところ、これといった成果はなし。
そんな先が見えない探索ではあるが、目先の探索自体は困難という程でもない。
やはり、何といっても視界が確保できているのが大きいかな。
ありがたいことに、謎の薄明りがこの横穴空間内にも存在している。
おかげで、足元に過剰な注意を払わないで済む。
これは未知なる場所を探索するにあたって、大きなメリットだ。
閉塞感を感じないというのも、探索中の気分を軽くしてくれる一因だろう。
この横穴、高さは20メートル程度、横幅は50メートル以上という巨大な空間だ。
さらに、先はどこまで続いているのか見当もつかないほど。
閉塞感を感じないどころか、開放感を感じてしまいそうになるくらいだな。
そして、もうひとつ。
まだ魔物に遭遇していないんだよ。
これも本当に助かっている。
地中には、どんな魔物が存在しているか分からない。
ここが魔落だとしたら、強力な魔物が存在している可能性も高い。
そんな魔物とこんな地中でやり合うのは、ただでさえ骨が折れるだろうに。
セレスティーヌ様を護っての戦闘となると、これはもう簡単なわけがない。
可能なら、魔物と戦うことなく地中を抜け出したいくらいだ。
とはいえ、魔物と遭遇することなく探索ができているという現状は、単に運が良いだけなのだろうな。
そんな探索を続けること半刻。
ここまでは砂地や石が多かった地面だが、岩が多く見られるようになってきた。
中には大型トラック並みの大きさの岩も存在している。
そのため、視界が遮られることも……。
ん!
「止まってください」
「はい。あの、何でしょう?」
「前方で物音がします」
「私には聞こえませんが」
それは仕方ない。
強化した耳で、やっと拾える音量だから。
「間違いないです。耳が良いもので」
点在している巨岩の向こう。
ここからは岩が邪魔で見えないのだが、それでも確かに音は聞こえる。
そして、この気配は……。
「その音は?」
「ええ、魔物かもしれません」
「!?」
一瞬にして、セレスティーヌ様の顔に緊張が走る。
「まだ確定したわけではありませんが」
この地下大空洞に巣食う魔物の可能性が高いんじゃないだろうか。
「どうしましょう!?」
「ひとまず、そこの岩陰に隠れましょう」
自家用車程の大きさのある岩の後ろに隠れ、前方を窺う。
……。
本来なら、気配を探ればはっきりと察知できるはずなんだが……。
どういうわけか、曖昧にしか察知できない。
もちろん、何らかの生物がいることは分かっている。
ただ、それが魔物なのかどうなのか?
「本当に魔物でしょうか?」
「……おそらく」
少しずつこちらに近づいてきている。
まだはっきりとは掴めないが、やはり、これは魔物か。
岩陰から顔を出し前方に目をやってみる。
視界が確保できているとはいえ、所詮は薄明り。
数十メートル先を視認するのは難しい。
さらには、複数の岩で遮られた視界では……。
分からないな。
「魔物だった場合は、どうしましょう?」
不安そうにこちらの様子を窺っているセレスティーヌ様。
「やり過ごすか、戦うか。それとも逃げるか。もう少し様子を見てからですね」
「戦うのですか?」
どことも知れぬこんな地下洞窟の中で、セレスティーヌ様が頼れるのは俺ひとりだけ。
そんな俺が魔物と戦うとなると不安になるのも当然だ。
護衛の騎士たちも魔物から彼女を護るために、1人また1人と彼女のもとから離れて行ったのだから。
もちろん、俺はやられるつもりはないけどな。
ここが魔落であったとしてもだ。
「そうですね。その可能性もあります」
「……」
ああ、そうか。
セレスティーヌ様の前では、未だ魔物と戦っていなかったな。
それなら、俺の戦闘能力を信用できないのも当然か。
セレスティーヌ様の不安な表情にも納得だ。
と……。
もうすぐそこにいるぞ。
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