30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
206 / 1,640
第3章 救出編

魔落 5


「あの岩の後ろにいます。もう現れますよ」

 さすがに、ここまで来れば、かなりのことが分かってきた。
 近寄って来る気配は1つのみ。
 そして、これは魔物で間違いないな。

 1頭の魔物ということなら、その強弱は別として、対処は容易だ。
 俺が相手をすれば、セレスティーヌ様が襲われる心配もないだろうから。

「魔物のようです」

 果たして、前方の岩の後ろから現れたのは。

「あれは……ゴブリンでしょうか?」

 足音の主である魔物は、俺たちの隠れる岩陰の斜め前方。
 距離にして15メートルほど離れた辺りを歩いている。
 ここまで来れば、薄明りの中でも十分視認可能だ。

 片手に棍棒のような物を持って歩いているその姿は、日本での知識からも想像のつく魔物だった。

「そのように見えますね」

 この世界に来るようになり魔物ともそれなりに遭遇しているのだが、未だファンタジー小説やゲームに登場するような有名な魔物と相対した経験はない。

 それが、こんな場でゴブリンと遭遇するとはな。

「でも、ゴブリンにしては……」

 怪訝そうな表情を浮かべているセレスティーヌ様。
 確かにこのゴブリン、魔物図鑑から得た知識とはかなり異なっているようだ。

 ……。

 目の前に現れた魔物がゴブリンということで、少し気持ちが緩みそうになったが。

 これは油断できないな。

 このゴブリンから滲み出る圧力はとてもじゃないが、弱いなどと思えるものではない。
 明らかに大きな力を、その身に秘めている。

 とはいえだ。

「あいつは我々に気づいていないようです。なので、ここに隠れてやり過ごすことも可能でしょうが……。戦ってみようと思います」

「えっ?」

 セレスティーヌ様にも、あのゴブリンが普通ではないと分かるのだろう。
 戦うと告げた俺に、抗議するかのように疑問の声をあげてきた。

 その気持ちも分かる。
 が、ここは戦っておきたい。

「とりあえず、この洞窟内の魔物の強さを知りたいので。単独行動している魔物と遭遇したのはついていますよ」

「……」

 無言でこちらを見つめてくる。
 戦って勝てるのかと尋ねるような視線。

「負けるつもりはありませんので」

「……分かりました。ご武運、お祈りいたしております」

「ありがとうございます。では、行きます!」

 セレスティーヌ様と共に隠れていた岩陰から出た俺は、ゴブリンが歩を進めるその正面に身をさらす。

 ゴブリンが通り過ぎた後に背後から奇襲をかけるという手もあるが、相手の力を知ることが目的の今回は真正面から戦いたい。

「グギ?」

 俺に気づいたゴブリンが首をかしげている。

 ゴブリンの体表は単純な緑色ではなく、黒みを帯びているように見えるな。
 その黒い体表から漏れ出る圧力は、やはり並じゃない。

 とっ、危ない。

 ニヤッと嫌な笑いを浮かべたと思った次の瞬間、黒ゴブリンが棍棒を片手に突進してきた。
 横に跳んで躱すことができたが、想像以上の速さだぞ。

 図鑑に載っていたゴブリンとは大違いだ。

「グ!?」

 俺が棍棒を避けたことに驚きの表情を浮かべるゴブリン。

 だが、それもほんの僅かな間のこと。
 すぐさま次の攻撃を仕掛けてくる。

 横薙ぎに振るわれる棍棒!
 上段から叩きつけるように振り下ろされる棍棒!
 驚くべき鋭さを持った突き!

 どれもが強力な一撃だ。

 とはいえ、俺が防げない程ではない。

 それらを全て防ぎきると、今度は今までの棍棒攻撃を複合させたような技を繰り出してきた。 
 そこに蹴りも加えてくる。

 正直、魔物とは思えない身体の使い方だ。
 本当に驚いてしまう。

 それでも、まだ俺には届かない。

 黒ゴブリンのあらゆる攻撃を体捌きで躱し、剣でいなし、全てを防ぐことに成功。

 一連の攻防の後、しばしの空白が訪れる。

 戦闘の当初とは異なり、ゴブリンの顔にはもうこちらを侮っているような色はない。
 警戒しながら俺の動きを凝視している。


感想 11

あなたにおすすめの小説

ひだまりのFランク冒険者

みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。 そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。 そんな中 冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。 その名は、リルド。 彼は、特に何もない感じに毎日 「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。 この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。