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第3章 救出編
魔落 14
2つめの首を断ち切ることに成功し、残る1つに目をやると。
なに!
左頭の口が大きく開かれている。
その奥から、黒い炎が覗いて。
まずい!
これは、炎獄の黒炎だ!
口中への攻撃も間に合わない。
回避するしかない、が。
直後。
黒い炎が広がった!
目の前に迫る黒炎。
その炎によって焼かれた皮膚は壊死する可能性すらあるという恐るべき黒炎。
皮膚を焼かれる、その直前に。
脚に力を籠め、高く跳躍!
トリプルヘッドを飛び越え、背後に回り込むことで回避に成功。
ギリギリだ。
本当に危なかった。
が、今度はこっちの攻撃。
反撃だ。
トリプルヘッドの背後から後肢に向けて剣を振り下ろそうとしたところで、振り向いたトリプルヘッドの口からまた黒炎!
駄目だ!
この一撃を喰らわしたところで、倒すことはできない。
なのに、こっちは黒炎を浴びてしまう。
「くっ!」
無理な態勢で剣の勢いを殺し、そのまま後ろに跳躍。
熱風が頬をなでるも、大きく跳び退き距離をとる。
……。
何とか黒炎の範囲内から抜け出すことができた。
が、恐るべきはトリプルヘッドの黒炎。
身体をかすめたくらいでは命に問題はないだろう。
しかし、黒炎に焼かれた皮膚は大変なことになる。
そんな黒炎を連続で撃てるのか。
速射性も連続性も、ダブルヘッドより数段上だ。
まいったな。
これじゃあ、下手に近寄れない。
近距離で黒炎を吐かれたら、避けきれない可能性もある。
とはいえ、黒炎を放ったのは左の頭だけ。
しかも、戦闘開始後しばらくは沈黙していた。
ということは、黒炎を放つにはそれなりの準備時間が必要になる、ということか。
それなら、今の黒炎を吐き終えた後が勝負。
目の前に広がる黒い炎が消えてからだ!
いまだトリプルヘッドの周囲は、己が放った黒炎で覆われている。
……。
が、1分も経たないうちに炎の勢いが弱まり。
嘘のように消えてしまった。
よし、ここからだ!
と思った俺の前に現れたのは、2つの頭を持つトリプルヘッド。
そう。
切断したはずの真中の頭が完全に再生されていたんだ。
黒炎が消えた途端、トリプルヘッドのもとに飛び込み、強引にでも左の首を切断してやろうと思っていた意気がこぼれ落ちる。
一瞬の躊躇。
が、一瞬だけだ。
このまま時間をおけば、右の頭も復活するかもしれない。
そうなれば、またふりだし。
そんな時間を与えるわけにはいかない。
ある程度接近し。
「雷撃」
からの。
「炎舞」
「炎舞」
「グギャャァァァ」
「グロォォォ」
よーし!
さっきと同じ攻撃だが、これも効いている。
次は。
お前だ!
黒炎を吐くことができる左の首を下段から斬り上げる。
ザン!
素早く剣を抜き取り、もう一撃。
「ギャワァァァ」
もう一撃だ!
ザシュン!
左の首が宙を舞う。
やった!
リーダー格と思われる首を切断したぞ。
残すはひとつだ。
そのまま中の首に剣を向ける。
なっ?
黒炎!?
真中の頭も黒炎を吐けるのか?
中頭の開いた口の奥に見える黒炎!
が、発動までは僅かだが時間がある。
再生後の皮膚は脆いはず。
それなら、この一撃でどうだ!
黒炎と剣撃、早いのは。
俺だ!
渾身の力と魔力を込めた剣を上段から一閃。
ザシュ!
確かな手応えとともに剣が通過。
切断成功!!
が、それと同時に暴発気味に口から黒炎があふれ出る。
切断とほぼ同時。
僅かな黒炎だけを吐き出し、トリプルヘッドの首が地面に落下する。
ドスン。
終わった。
しかし……。
剣を振るった目の前であふれ出た黒炎。
完全に避けることはできなかった。
「痛っ!」
左肩に黒炎を浴びてしまった……。
「コーキ様、火傷は大丈夫なのですか?」
トリプルヘッドとの戦闘後。
壁際のセレスティーヌ様のもとに戻り、今は休憩中。
「ええ、治癒魔法と例の回復薬を使ったので傷は消えましたから」
「それなら良いのですが」
壁際に戻って火傷を確認すると。
黒炎を浴びた左の肩回りが、赤黒く変色していたんだ。
慌てて治癒魔法を連続で行使したおかげで、軽い火傷部分は癒えたようなのだが、最も酷い中心部の火傷だけが治りきらない。
仕方ないのでゾルダーに貰った高級回復薬を使ったところ、火傷は綺麗に消えたというわけだ。
これで完治したのなら助かる。
だが……。
「問題ないですよ」
と、セレスティーヌ様には告げているものの、実際はどうだか分かったものではない。
治療困難といわれる黒炎による火傷を、俺の魔法と回復薬だけで本当に治すことができたのだろうか。
いくら高級回復薬とはいえ。
実際、火傷痕は消えているが、疼くような痛みはまだ残っている。
……。
今はもう、このまま治まることを願うばかりだな。
「本当に?」
「ええ、もう平気です。それより、遅くなりましたが夕食にしましょうか」
「……そうですね。たくさん食べて元気になってもらわないといけませんものね」
「セレスティーヌ様もですよ」
「はい。ですが、あの魔物を食べるんですよね」
「そうです」
昼頃に倒した蜥蜴型の魔物と蛙型の魔物の肉の塊が目の前にある。
これを今から一口サイズに薄く切り分けて焼くわけだ。
「食べることができると確認済みですので、安心してください。まっ、味は保証できないですけど」
「はい、コーキ様の魔法で食用と判明したのでしたら安心です」
と言うわりには、全く安心したような顔をしていない。
まあ、あの外見の魔物肉を食べるのだから、気持ちは理解できるけど。
これからはこんな食材しか手に入らないのだから、我慢してもらうしかない。
「焼いていきましょうか」
薄く切り分けた肉に塩を振り、魔法で作り出した火であぶる。
あっという間に、数枚の肉が焼きあがった。
「では、食べましょう」
「……はい」
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