30年待たされた異世界転移

明之 想

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第3章 救出編

守り人 3


「コーキさん!」

「大丈夫です。かすっただけですから」

「でも……」

 心配そうなセレス様の声。
 でも、これくらいなら問題はない。

「ほら、これで」

 左肩の黒炎による火傷痕、右肩の光線による傷の両方に対して治癒魔法を発動。

 いつものことながら、俺の治癒魔法では黒炎の火傷痕は完治しない。
 けれど、痛みを抑える程度の効果はある。

 そして、光線による傷は……。

 幸いなことに黒炎ほど厄介なものではなかったらしく、ほぼ完治できたと思う。

「もう大丈夫です」

「本当に平気?」

「ええ」

 トリプルヘッドの黒炎といい、今回のゴーレムの光線といい、ともに近接戦闘中の失敗だ。

 同じ過ちを2度繰り返すとは、我ながら情けない。
 今回は急に左肩が痛み出したとはいえ、それも言い訳に過ぎないからな。

 そもそも、戦闘前に左肩に治癒魔法をかけておけば良かったんだ。
 そうすれば、戦闘中に痛みが出ることもなかったはず。

 ただの注意不足だな。

 だけど、もう大丈夫。

「すぐに倒しますよ」

「……気を付けて、コーキさん」

「了解」

 さてと。
 ここからはゴーレムの胸を徹底的に攻撃してやる。
 攻略の糸口は掴んだのだからな。

 ということで。
 ここからだぞ、ゴーレム!

 ドシーン!

 しばらく動きを止めて、こちらの様子を窺っていたゴーレムが動き出す。

 眼に光が集まり、光線発射!

 ジュゥゥ!

 光線が地面を焼く。
 が、こっちは簡単に回避成功。

 相変わらず単調な攻撃だ。
 けど、この単調な攻撃にやられたんだよな。
 さっきのミスが、本当に恥ずかしくなる。

 そんな思いを断ち切るように、接近。
 掌底。
 からの、魔力放出。

 2度目だから、もう慣れたもの。
 スムーズな連続攻撃で。

 ゴーレムの胸の中に魔力を流し込む。

 さっきと同様、硬直するゴーレム。
 時間にして数秒はこのままのはず。

 その間に、胸に剣を突き入れる。

 キン!

 が、こちらは弾かれただけ。
 硬直中も表面の硬さに変わりはないということか。

 硬直するということは効いてはいるんだろうが。
 だからといって、こいつの防御力に陰りはないと。

 と、ゴーレムが再起動。

 なら、もう一度だ。





 うーん。
 いつまで経っても埒が明かないな。

 掌底。
 魔力挿入。
 硬直。
 剣、魔法の攻撃。

 これを数度繰り返したんだが、ゴーレムはただ硬直するだけで倒れる兆候はない。
 胸にかすり傷が増えた程度だ。

「コーキさん、魔力は大丈夫?」

「まだ大丈夫です」

 セレス様も心配している。

 まあ、あいつの攻撃は脅威じゃないからな。
 これを続ければ、倒しきることもできるかもしれない。
 けれど、そこまで魔力が持つかどうかだな。
 さすがに、何時間も続けることはできないからな。

 これは、もうひとつ試してみるか。

 ドシーン。
 ドシーン。

 距離をとっていた俺に近寄って来るゴーレム。

 本当に同じことばかり。
 やっぱり、ゴーレムはゴーレムか。

 一足飛びに接近。

 掌底!

 で、ここからだ。
 流し込むのは魔力じゃないぞ。

 魔力に対する防御性能は認めるが、これならどうだ。
 この世界では、いまだ見たことがない。

 気だ!

 さっきまで練り上げていた気を、右の掌から一気に放出。

 すると。

 ブゥゥゥゥゥン!

 左右に振動し硬直するゴーレム。

 魔力を流した時より、明らかに振動が激しいぞ。

 なら、続けてやる!
 再度掌をゴーレムの胸に当て、気を流す。

 ブゥゥゥゥゥンンンンンン!

 横揺れに続いて、縦にも振動を始めた。
 黒光りしていた体表も、心なしかくすんできたように見える。

 ほら、もっとだ!

 さらに、気を放出。

 ブブブブンンンンンンン!

 振動どころじゃない。
 今にも倒れそうだ。

 これは確実に効いている。
 ここが勝負どころ。

 激しく揺れ動くゴーレムの胸に右の掌を合わせ。
 もう一度、気を叩き入れる!

 ブブブブブブブッブッブッブ………………!

 掌を当てていることができないくらいの振動。

 ……と。

 バリーーーーン!

 胸が砕け散る!
 そして、そのまま完全に動きを止めたゴーレムが、前方にゆっくりと。

 ズッドーーーン!!

 崩れ落ちた。

「……」

 やったか?

 ゴーレムは倒れ伏したまま、身じろぎもしない。

 やったな。
 よし、ついに倒したぞ!

「コーキさん!」

 背後から走り寄って来るセレス様。

「おっと」

 そのまま俺の胸に飛び込んできた。

「コーキさん、凄いわ。分かっていたけど、やっぱり凄い! さすが、私の……」

 かなり興奮しているようだ。
 今までの数々の戦闘後でも、ここまでではなかったのに。

 いったい、どうしたんだ?

「とにかく、すごいのよ」

「……」

 おかげで、こっちの興奮が冷めて冷静になることができる。
 何といっても、まだゴーレムを倒しただけ。

 この空間の謎は解けていないのだから。



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