30年待たされた異世界転移

明之 想

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第4章 異能編

かるい

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 ……。

 ……。

 また。

 また、セレスを……。

 ……。

 ……。

 時間を巻き戻すことはもうできない。
 二度と戻れない。

 失ってしまった。
 今度は本当に!

「うぅ!」

 俺は、俺は!

 ……。

 ……。

 ……軽い。

 両手の中が、あまりにも。
 軽い。
 軽すぎる。

 こんなにも重いのに!!

 ……。

 ……。

 麓はすぐそこだった。

 もっと速く走っていれば。
 もっと早く崖を上っていれば。
 会話などせず急いでいれば。
 時間遡行を急いでいれば。

 俺は何を!

 ……。

 ……。

「ああぁ」

 この瞳はもう……。

 俺を映さない。
 何も映さない。

 ……。

 ……。

 ……。

 動くことができない。
 セレスを抱えたまま、身動ぎもできない。

「セレス……」

「ごめんな」

「助けてやれなくて、ごめんな」

「二度も、辛い思いさせて、ごめん」

「……」

 あの苦しみを俺は知っている。
 自分が消えていく時の苦しさ。
 信じがたいほどに暗く、寒く、寂しい。

 あんなものを二度もセレスに。

「ああ……」

 二度も苦しませるくらいなら、戻らなければ良かった。
 会わなければ良かった。
 ギフトなんて使わなければ。

「セレス……」

 時間遡行というギフトのせいで。
 こんなことに。

 それなのに、今はもう使えない。

「っ!」

 何のための時間遡行だ!
 何のためのギフトだ!

 こんなギフト!
 こんなもの!

「くそっ! ステータス!」

 ステータスウインドウの中に光る文字。
 名前も、レベルも、各種ステータスも何も変わっていない。

 ただ、ギフト欄の時間遡行だけが……。

「えっ?」

「何で?」

「……」

「……」

 はは……。

「ははは」

 何だよ。
 そうだったのか。
 そうだったのかよ!


<ギフト>
異世界間移動  基礎魔法  鑑定改  多言語理解 アイテム収納

時間遡行(1刻)1


 手に入っていた。
 時間遡行を俺は。

「はは」

 ギリギリ間に合っていたんだ。
 クエストを達成し、報酬を手に入れていたんだ!

 一瞬にして、力が抜け。
 地面に膝をついてしまう。
 セレスを落としそうになる。

 そんな状態に反して、戻って来る。
 気力が俺の中に!

「……」

 おかしな話だよ。
 腕の中のセレスは、こんなに軽いのに。

 それなのに、クエストは完了だって。
 救出成功だって。

 何だよ、それ。

 馬鹿げた話だ。
 ふざけたクエストだ。

 でも、俺はそれを狙っていたんだ。
 ありがたい話なんだ!

「セレス……」

 今回もごめんな。

 でも、もう一度いいかな?
 挑戦していいかな?

 絶対に助けるから!

「……」

 だから、今はここでゆっくり休んでくれ。


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