30年待たされた異世界転移

明之 想

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第4章 異能編

再びの…… 2

<セレスティーヌ視点>



 こういった探索の日々なのですが、1日の探索時間は数時間のみです。
 残りの時間は、ずっと身体を休めています。

 その際、コーキ様が私を治療してくれるのです。

 身体には異状を感じないので必要ないと申し上げたのですが、コーキ様は治療をやめようとはしません。

 コーキ様が言うには、その優れた魔法の力で私の容態を見ることができるそうで……。
 それで、私の身体には異状が見られると……。

 全く自覚はないのですが、ここまでのコーキ様の力を見ていますと信じないわけにもまいりません。

 ですので、頻繁に身体を休めては治療ばかり受けています。

 コーキ様は、治癒魔法や私の知らない技などを駆使して頑張ってくれています。

 ここまでしてもらうと、本当に申し訳なく思ってしまうのですが。
 それに、その……。

 正直言いますと、少し恥ずかしくも感じてしまいます。

 もちろん、恥ずかしく思うような治療行為は何もされていません。

 ですけど……。

 領都ワディナートで医師の治療を受けていた時には感じなかった感情です。

「……」

 本当に、不思議。
 不思議な方です。



 そんな毎日も4日が過ぎました。

 充分な休養を取っている私の身体は、元気なものです。

 食事も、これは少し戸惑ったのですが……。

 こちらでコーキ様が狩った魔物のお肉をいただくようになりました。
 コーキ様の調理の腕もあるのでしょうが、想像以上に美味しかったです。

 たっぷりの休養と充分な量の食事。
 それに適度な運動のような探索。
 領都での生活よりむしろ健康的でさえあると、そう思えてしまいます。

 地下の過酷な環境にいるはずなのに……。

 それもこれも、コーキ様がいるから。
 食料の確保もコーキ様。
 魔物から護ってくださるのもコーキ様。

 そうなのです。
 コーキ様はとてもお強いのです。
 この地で遭遇する魔物なんか物ともしません。
 私から見ても強力と思えるような魔物ですのに、簡単に倒してしまうのです。

 私の知る誰よりも素晴らしい魔法剣士様です。




 7日が過ぎました。

 まだ脱出はできていません。
 ですが、こんな地底でのものとは思えないような日々を送っています。
 もちろん、快適とは言えません。
 それでも、安楽と言える程度の毎日なのです。

 そのような信じがたい日々の中。
 何もできない私。
 どう考えても、コーキ様のお荷物にしかなっていません。

 ですから……。

 自分の不甲斐なさに気分が沈むこともあります。
 そんな時は、コーキ様が私を励ましてくれるのです。
 コーキ様の言葉で驚くほど心が軽くなって、気分が晴れて……。


 そんな毎日だからでしょうか。
 もう少しここで暮らしたいという不埒な思いが芽生え始めているのです。

 早く地下を出てシアたちのもとへ、オルドウへ向かいたいという気持ち。
 ここで暮らしたい、コーキ様ともう少し一緒に過ごしたいという思い。
 相反する二つの感情を私はどうしたら良いのでしょう?

「……」

 私はワディンの神娘。
 その責務が何より優先される神の娘。

 それなのに……。

 ……。

 ……。

 ワディンの神娘ではない生活。
 ただのセレスとしての毎日がこんなものだなんて!
 今まで知らなかったのです。

 無知な私にコーキ様が教えてくれました。
 こんな自分があっても良いのだと。
 だから、私は!

「……」

 私はワディン家の神娘だけれど。
 でも、ここにいる間だけは……。




 8日目。

 あまり変わりのない日々の中、ひとつ変化がありました。

 私たちの距離が少しだけ近づいたのです。
 お互いの呼び方が変わったのです。
 口調も少し砕けた感じになりました。

 ふふふ。
 なんだか嬉しいです。

 こんな地下にいるのに嬉しいなんて、本当に……。

 でも、気になることもあります。
 深夜、コーキさんが真剣な表情で考え事をしていたのです。
 その後、何かを決心したようでした。

 気になって声をかけてみると。

「そろそろ脱出できると思います。ですので、心配は要りませんよ」

 笑顔でそう答えてくれただけ。
 コーキさんは何かを隠しているのでしょうか? 

「……」

 隠し事は気になりますが。
 もうすぐ脱出できるという事実の前では、少し霞んでしまいます。

 やっぱり、地下から脱出できるのは嬉しいことですから。
 ただ、ここから出てしまうと……。


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