30年待たされた異世界転移

明之 想

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第4章 異能編

再びの…… 3

 魔落に来て8日が経った。

 今回は俺のレベルも上がっているし、何より一度経験している魔落だ。
 ほとんど問題なく過ごすことができている。

 魔物相手に大きな怪我をすることもない。
 食料も休憩所も問題なし。

 脱出口を探すというのも、ここで数日過ごすための口実。
 セレス様相手の名目に過ぎない。

 目的は当然、セレス様の治療とセレス様を助けるための他の手段を探すことだ。

 そんなわけで、魔落に来て以来ずっとセレス様の治療を続けている。
 治癒魔法、その応用、気功を使った治療など。
 考えつく術を全て試してみた。
 たっぷりと時間もかけている。

 けれど、その成果が分からないんだ。

 セレス様の体内をめぐる魔力も気も問題はない。
 鑑定で調べてみても何も異状は見つからない。
 でもそれは、初日からずっとそう。

 これでは、完治できたかどうかを判別することなどできるわけもない。

「……」

 これ以上、ここで治療を続けても結果は変わらないんじゃないか。
 今では半ば以上そう思っている。

「……」

 もちろん、治療以外の他の手段もいろいろと考えてみた。
 が、現状これといった解決策は見出せていない。

 こうなるともう……。

 トトメリウス様の知恵を借りるしかないのか?

「……」

 その思いが強くなり。
 結局、あの神域中枢を訪れることを決意したんだ。


 そして今。

 うっすらと霞がかった空間。
 トトメリウス様の神域空間に俺とセレス様は足を踏み入れた。

「コーキさん、ここは?」

「ええ、神域です」

 セレス様には、ここがトトメリウス様の神域だと説明済み。

 なぜ俺が知っているんだ、もっと早く来れば良かったんじゃないか、なんていう疑問をセレス様が抱かないように、適当に話は作っている。

 いい加減な作り話ではあるが、それなりに信じてくれたようだ。

「……」

 魔落に来てから、俺は嘘ばかりついているな。
 おかげで嘘が上手くなってしまった。
 まったく嬉しくないよ。

 嬉しくないし、申し訳ない。
 セレス様、こんな嘘は今だけですから、どうか許してください。
 

「大丈夫なのでしょうか?」

「ええ、問題ないはずです」

 とはいえ、トトメリウス様の対応は読めない。
 今回が2回目だと認識してくれているのかどうなのか?

 時を司っているのだから、全て了解済み。
 時間遡行など関係なく、トトメリウス様は俺のことを覚えている。
 そう思いたいが……。

 もし覚えていなかったら。
 俺はどういう態度をとればいいんだ?

「……」

 今さらながら不安になってくる。
 まあでも……。

 どちらにしても、目的に変わりはない。
 お願いするだけだ。

「……」

 ゴーレムが現れないな。

 二度目だからか?
 前回俺が倒したからなのか?

「……」

 そもそも、トトメリウス様は?
 現れてくれるんだろうな。
 まさか、姿を見せないなんてことは……。



「コーキさん?」

 セレス様の表情が曇っている。

 こんな謎空間にずっと立っているだけなんだ。
 当然か。

「もう少し待ってください」

「……はい」

「……」

 やはりゴーレムは現れない、か。
 それなら。

(トトメリウス様)

 心の中で呼びかけてみる。

(トトメリウス様。 トトメリウス様!)

 すると……。

 いきなり空気が変わった。
 その威圧感に身体が重く感じられる、が……。

 あの空気だ。

「コーキさん、これは!?」

 曇っていたセレス様の顔色が変化している。

「大丈夫です。任せてください」

 と、目の前にはあの異形。

 トトメリウス様だ!


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