30年待たされた異世界転移

明之 想

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第4章 異能編

原因

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 トトメリウス様……。

 二度目とはいえ、その圧倒的な存在感に思わず身体が反応してしまう。

「!?」

 セレス様も言葉を失っている。
 このセレス様にとっては初めての体験なのだから、無理もない。

「セレス様、大丈夫ですか?」

「……はい」

 この様子なら、まあ……平気だろう。

「それでは、ここは私に任せてください」

「はい、お願いします」

 ということで。
 トトメリウス様は俺のことを覚えているのだろうか?

『……其方か』

 この言葉。
 俺のことを認識してくれている!

 良かった。

「はい、お久しぶりです」

『ふむ……なるほどのう』

「はい?」

 なるほど?
 ということは、事情も理解して?

『こちらの話じゃ』

「トトメリウス様は私どもの事情を、その……」

『概ね理解しておる』

 そうなのか!
 時を超越しているだけじゃなく、そこまで。
 さすが、智と時と魔法を司っている神様だ。

『が、どれ……』

 これは、また覗かれているんだな。

『ふむふむ……。やはり、そうなったか』

 やはり?

『二度目でのう。ふむ、其方は賢明じゃな』

「……」

 今覗かれたのは、前回トトメリウス様のもとを去ってからの俺の記憶だろう。

 しかし、さっきの『やはり』という言葉。
 トトメリウス様は前回の時点でセレス様の状態を理解していたと?

『そうじゃな』

 読まれた?

 いや、それより、前回の時点で?
 それなら、どうして?

 俺の黒炎の火傷は治療してくれたのに……。
 セレス様も加護をいただいていたのに……。

『この領域外のことに、干渉するつもりはないからのう』

 領域外……。
 領域外なのか!

(トトメリウス様、私も念話で話せますでしょうか?)

『無論じゃ』

(それではセレス様に聞こえないようにして、私と話していただいても?)

『既にそうしておる。娘にも伝えておるぞ。都合が好かろう』

 全てお見通しってことだな。

 それで、セレス様は……。
 心配そうに、こちらを見つめている。 

 早く話を終わらせて、セレス様に伝えないと。

(ありがとうございます。それで……)

『其方の聞きたいことは分かっておる』

(……今回の原因もご存じなのでしょうか?)

『当然じゃな』

 やっぱり!
 なら、今のセレス様の状態は?

(ご存じの通り、数日間私はセレス様の治療に当たってまいりました。ですが、成果が全く分からないのです。今のセレス様の容態は、改善されているのでしょうか?)

 それを教えてほしい。

『改善しておらぬな』

(……)

 その可能性も考えてはいた。
 けれど、あれだけ治療したのに……。

(治療の効果は全くなかったと?)

『そういうことじゃ』

(……)

 俺では治療できない。
 そうなのか

(……)

 それなら、セレス様を救う方法は……。

 崖上に戻って、すぐに下山。
 そうして20分短縮を狙う。
 考えつく方法は、もうそれしかない。

 が、それで助けることができるとも限らないんだ。

『その通り。不可能じゃな』

 なっ!?
 不可能!

 戻っても助けることができない!
 そんな!

 トトメリウス様の言葉に、一瞬で思考がとまってしまう。

 ……。

 ……。

 崖上に戻っても、セレス様を助けることができない。
 命を繋ぎとめることができない。

 他の手段なんて思いついていないのに!

 くっ!
 どうしたらいいんだ?

(……)

「コーキさん、どうしました? 大丈夫ですか?」

 俺のただならぬ様子に、セレス様が声をかけてくれる。

「……大丈夫です」

「本当に?」

「ええ」

「……」

 セレス様……。
 このセレス様が……。

『理というものじゃ』

(……理)

『ふむ』

(……)

 そう、なのかもしれない。
 けど、俺は!

 諦めきれない。
 諦めはしない!
 他にも方法があるはずだ!

 なら……。

 抗うしかないだろ。

(……トトメリウス様、セレス様の症状の原因を教えてはいただけないでしょうか?)

『それを知って、どうする』

(考えます)

『……そうか』

(教えていただけますか?)

『其方の頼みでも、それは聞けぬのじゃよ』

(……)

『小さきもの、人どもの間の問題に吾が干渉することはない。加護を与えた其方が特別であろうと、そこは変わらぬ』

 人どもの間の問題には干渉しない。

(……)

 トトメリウス様。
 それは暗示ですか?
 示唆に気付けってことですか?

 人の間の問題。

 つまり、セレス様の損傷の原因は人にあると。
 転落によるものでもなく、魔物によるものでもない。

 第三者によるもの、ってことですね。


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