30年待たされた異世界転移

明之 想

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第4章 異能編

聖光


 セレス様の損傷の原因は人にある。
 彼女に害を与えた者がいる。

『……』

 だから、トトメリウス様は原因を教えてくださらないと。
 俺がその事実を知ると、セレス様に害を与えた相手やその周りに確実に影響が及ぶから。

 そういうことか。

『……さといやつじゃ』

(……)

 ここで原因を知ることはできない。

 それでも……。

(これからの行動次第で、私が独力でセレス様を救うことは可能でしょうか?)

『難しいのう』

 俺の力では助けることができない!

『ふむ』

(……)

 諦めろと言うのか?

 いや、まだだ。
 ここまで来て、諦めるわけにはいかない。
 そんな選択肢はない!

 だから、相手がトトメリウス様でも。

(1刻の時間遡行では、難しいということでしょうか?)

『そうじゃな』

(でしたら、以前使ったセーブ時点にリセットで戻れば可能性もあったということですよね)

『……ふむ』

(あそこに戻れば、助けることも可能だった)

『……』

(可能性があったのに、トトメリウス様は私のセーブ&リセットのギフトを消されました)

『……』

(トトメリウス様にお会いすることで、私は持っている力を失いました)

『過ぎたる力じゃからな』

(ですが、それは人への干渉ではないのでしょうか?)

『あのものは人ではない。よって、人どもの間の問題ではないからじゃ』

 時の神様は人ではないから。
 それは分かる。

 なら。

(それは理解できます。ですが、それによって、リセットで助けることができたであろうセレス様の命を失ってしまう。これは私とセレス様の問題への干渉にはならないのでしょうか?)

 トトメリウス様に対して、不遜な態度をとっていることは承知している。
 でも、今はこれしかない。

『……』

(不干渉の道理に反します)

『……ふふ』

(……)

『ふふ、ははは』

(トトメリウス様?)

『面白い。其方は面白いのう』

(……)

『じゃが、因果には相当性というものがある。其方の言は牽強付会というものじゃよ』

 相当因果関係か。

(相当性というものも、実のところは主観によるものかと。そう理解しております)

『屁理屈をこねおるわ』

(……)

 充分理解してますよ。
 分かっていても、ここで粘るしかないんです!

『しかし……ふむ……』

 トトメリウス様が斜め上方の虚空を見つめ、言葉を止めてしまった。

『屁理屈も理屈。まあ……良い、か』

 っ!!

『今回は其方の弁に乗ってやろう』

 本当に!!

(あっ、ありがとうございます!)

『本来なら、あり得ぬことじゃ』

(はい。感謝いたします)

『ふむ。じゃが、原因を教えることはできぬぞ』

(では?)

 リセットを使えると?

『吾が治療してやろう』

(!?)

 リセットではなく、治療を。
 トトメリウス様の治療?

 ありがたい!
 これ以上のことはないぞ!

 トトメリウス様の治療なら、間違いなく完治する。
 セレス様が助かるんだ!

『無論じゃな』

 そう言って、トトメリウス様の手が振るわれた。

「えっ?」

 俺の黒炎の火傷を癒した時と同様、トトメリウス様の手から放たれた光の粒がセレス様の身体に降りそそぐ。

(……)

 闇の中、聖なる光の粒に包まれ、白く輝くセレス様はこの世のものとも思えない。
 状況を忘れて、見惚れてしまう。

「コーキさん、これは?」

「……神様、トトメリウス様の癒しの光です」

「そんなことが……」

 光の粒の中、陶然と呟くセレス様。
 俺は……いつまでも見惚れていられないな。

(トトメリウス様、本当にありがとうございます!!)

『ふむ。まあ、よいわ』

「あの……トトメリウス様、感謝いたします」

 聖なる光が消えた後。
 セレス様がトトメリウス様のもとに歩み寄り、感謝の言葉を口にする。
 恐る恐るといった感じではあるが。

『娘……そうじゃな』

 再び、トトメリウス様の手が振られ。

『受け取るがよい』

「……はい?」

『恩恵じゃ。説明は其の者に』

「セレス様、あとで説明します」

「……分かりました」

 と言いながらも、釈然としない表情で、恩恵?と呟いている。
 あとで、ちゃんと説明するから。

 それより。

(トトメリウス様、この度のこと本当にありがとうございました。心から感謝いたします)

 本当に、本当にありがたい。

『もうよい』

(……はい)

 そうは言っても、こんなことで謝意は伝えきれない。
 言葉だけじゃなく、何かお礼ができればいいのだが。

 トトメリウス様相手に何ができると……。

『殊勝なやつじゃ。ならば………………』

 そんなことを?

(……了解いたしました。必ず)

『ふむふむ、それでよい』

(はい)

『では、最後に此奴もじゃな』

「クゥーン」

 現れたのはノワール。

「クゥーン」

(……)

 ああ、お前も久しぶりだな。


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