30年待たされた異世界転移

明之 想

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第4章 異能編

帰宅

「ああ……」

 久々の日本だ。
 やっぱり落ち着くな。

 という程、ここで暮らしているわけじゃないか……。

 オルドウから異世界間移動で戻って来たその場所は、1人暮らしを始めたばかりのワンルームマンション。

 まだまだ慣れていない俺の部屋だ。

「……」

 まっ、悪くない部屋だよ。

 で、今日は何日だ?
 日付を確認すると……。

 そうだった。

 体感としては、というか実体験的には30日以上経過しているのだが、こちらの世界では大して時間は経過していないんだよなぁ。

「……」

 机の上には、オルドウに行く前に放置したままのレポートの資料が置かれている。
 このレポート提出の期限にも間に合うのか?

 正直言って、疲れている今の状態でレポートを作成したいとは思わない。
 そもそも今の俺にとって、大学を卒業することに意味があるとも思えない。

 それでも……。

 こちらの世界でも、それなりに頑張ると決めたからな。
 それに、神様の言葉もある。

「しかたない」

 可能な限り頑張りましょうかねぇ。
 レポートも、急いで仕上げて提出することにしよう。

 と、机に向かおうと思ったところ。

 ピンポーン!

 玄関のチャイム。
 誰だ?

 この部屋を知っているのは……。



「功己、来ちゃった」

 ああ、幸奈か。

「久しぶりだな」

「ん? 一緒にイタリアン食べたばかりじゃない」

 そうだ、最近ランチに行ったところだった。
 さっき日付を確認したのに、すっかり忘れてたぞ。

 でもさ、俺にとっては30日以上も前なんだよ。

「……で、今日はどうした?」

「ちょっと近くまで来たからさ。功己の部屋を見ようかと思って」

「そういうことか。じゃあ、あがってくれ」

「いいの?」

「もちろん」

「では、遠慮なく。お邪魔しまーす」

 幸奈を部屋まで案内する。
 といっても、一部屋しかないんだが。

「思ったより綺麗にしてるね」

「そうかぁ」

「うん、うん。綺麗だよ」

 笑顔で室内を眺めている幸奈。
 物珍しいものなんてないだろ?

「功己の部屋、あまり物がないんだね」

「実家に置いてきたからな。ミニマリストじゃないぞ」

「えっ、ミニマって何?」

 そうか。
 この時代に、そんな言葉はないよな。

「最小限の物で生活する人、かな」

「そんな言葉あるの?」

「いや、まあ……俺が作った?」

「何それ。功己って、たまに変わった単語使うよね」

「……」

 変わってるんじゃない。
 未来で使われる単語なんだよ。
 それを、俺がうっかり口に出してしまっただけで。

「面白いなぁ」

「……そんなことより、最近はどうだ?」

「えっ?」

「武志のこと」

「ああ、うん……」

 一瞬で笑顔が消え、顔が曇ってしまう。

「あまり変わりはない、かな」

「そう、か……」

「……」

「……」

 しまった。
 いきなり話す話題じゃなかった。
 微妙な空気が漂い始めたぞ。

「でも、気にしてくれてありがとね」

「ああ、武志のことは俺も気になるからな。最近会ってないとはいえ、子供の頃はよく遊んだ仲だし」

「そうだったね。あの頃は功己と武志も仲が良かったもんね」

「俺は今でも仲が良いと思ってるぞ」

「ふふ、そうだね」

 微笑みを浮かべているのに。
 陰りが消えない。

「……だから、何かあったらいつでも言ってくれよ」

「うん、分かった。また相談するね」



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