30年待たされた異世界転移

明之 想

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第4章 異能編

学食 2

 その後、小一時間レポートの確認を行い無事に提出。
 再び、学食に戻って昼食をとることに。
 武上もいないことだし、静かに食事をとることができるな。

 トレイの上には、定番の定食メニュー。

 懐かしい学食の味。
 うん、やっぱり悪くない。

 ここの食事は学生食堂とは思えないレベルなんだよ。
 安い、美味いとくれば、学生で溢れかえるのも納得できる。

 今はまだ早い時間だから空席もあるが、あと30分もすれば満席になるはず。
 その前に、俺は退散するとしよう。

 と、俺の席から2列前の席に座っている小柄な学生がこっちを見ている。
 里村だ。

 その小柄で中性的な風貌。
 昔を思い出すなぁ。

「……」

 里村 晴海。

 前世の俺が、この大学での4年間で最も会話をした相手。
 俺が素っ気ない態度をとっても、いつも話しかけてきた。
 それはまあ、武上も同じなんだが……。

 暑苦しい武上と違って、小動物みたいで癒し系だったんだ。

「……」

 話しかけたい衝動に駆られるが、知り合うのはまだ先のこと。
 今話しかける理由はない。

 というか、なぜ里村はこっちを見ていたんだ?
 俺のことなんて知らないはずなのに。

「……」

 もう視線は向かってこない。
 偶然、か。
 そうだよな、偶然だよな。




 食べ終えた定食の皿を返却口に戻そうと、ゆっくりと立ち上がる。
 その俺の目の前で。

「おい、お前、これ、どうしてくれんだぁ!」

 怒声が上がった。
 声を上げた男を含め、3人の男に絡まれているのは里村だ。

「ご、ごめんなさい」

「謝って済むわけねえだろ。弁償してもらわなきゃな」

「は、はい。弁償します」

「おお、そうか。でも、このシャツ高いんだぜ」

「いくらですか?」

「10万だ」

「そ、そんな……」

「払えないのかよ?」

「……10万なんて大金。今は持ってないです」

「それなら、ちょっと付き合ってもらうしかないな」

「えっ、そんな!」

 里村のコーヒーが男のシャツにかかり、シャツが汚れてしまった。
 それは確かな事実。
 だが、俺は見ていたぞ。
 里村に責任はない。

「ほら、立てよ。行くぞ」

 周りの学生は見て見ぬふり。
 運が悪いことに、里村もひとりで食事をしていたようだ。

「……」

 仕方ない。
 まだ知り合ってもいないが、これは放置できないな。

 里村のもとに歩み寄り。

「ちょっと待ってください」

「あぁ、何だ、お前?」

「目撃していた者ですよ」

「はぁ、関係ないやつは引っ込んでろ」

「そうだぜ、黙ってろ!」

 質が悪いな。
 本当にここの学生か。

「黙ってられませんね。明らかにあなた達の言いがかりですから」

「何言ってんだ、お前」

「これを見てみろ! 汚されてるだろうが」

「おい、調子に乗ってんなよ」

 ホント、質が悪い。
 こいつら、ここの学生じゃないかもしれないな。
 というか、大学生ですらないかもな。

「あの、誰か知りませんが、ごめんなさい。ボクのせいなので、だから……」

 この状況でも、里村は俺に気を遣っている。

「……」

 変わらないな。
 って、当然か。

「大丈夫。君の責任じゃない。ここは任せて」

「何が大丈夫だ。生意気なやつだぜ」

「俺たちを舐めてんのか」

「いい度胸だぜ」

 この展開。
 里村が横にいるのに、笑ってしまいそうになるぞ。

 だって、こんなお約束イベントが日本の大学で行われるなんてさ。
 笑えるだろ。
 あっちの世界でも、滅多にあることじゃないのに。

 以前オルドウの知人に聞いた話だが、どうも冒険者連中は俺には下手に絡む気になれないらしい。
 手を出せる雰囲気ではないようなんだ。

 といっても、俺の身体つきなんて180センチほどの身長と少しばかり鍛えた身体だけ。
 しかも、服を着てしまうとそんなに目立たない程度。

 まあ、雰囲気と言われれば何も言えないが……。

 ああ、ゾルダーは別だ。
 あいつは酔っ払っていたからな。

 それは、ともかく。
 こいつらが実力者だとは、到底思えない。
 なら、何も感じとれないただの子供だ。

「ちょっと顔貸せよ」

「外でけりつけんぞ」

「……」

 里村のためでもある。
 軽く付き合ってやろう。


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