30年待たされた異世界転移

明之 想

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第4章 異能編

お仕置き 2

「痛っ! 分かった、分かったから、放してくれ」

 そいつが里村を解放したところで、こちらも放してやる。

「つぅ……」

「おい、大丈夫か?」

「くそっ、大丈夫じゃねえ」

「こいつ! もう、やっちまおうぜ」

「……まだ時間はあるな。よし、この生意気な後輩を少し躾けてやるか」

 後輩?
 ってことは、この大学の学生なのかよ。
 信じがたいな。

「ああ!」

「賛成だ!」

 下卑た笑いを浮かべる3人。
 そして、難癖男が俺に向かって殴りかかってきた。

 こうなるともう、仕方ないか。
 まずは、一発殴らせてやろう。

 俺の頬に難癖男の拳が叩き込まれる。

 響き渡る鈍い音。
 いい音だ。

「有馬くん!」

「大丈夫」

 魔力で肉体強化はしていないが、今の俺にとってこの程度の拳など何てことはない。

 それより。

「顔を殴ったな」

「ああ、それがどうした」

「お前が俺たちをここに連れ出し、先に手を出したんだぞ。俺の顔を殴ったんだぞ」

「だから、それがどうしたってんだ」

 単純な男で良かった。
 ただ……。
 こいつが同じ大学の学生で先輩なのかと思うと、げんなりしてしまうな。

「確認しただけだ」

「何だ? 確認って?」

「……」

「まあいい。お前、今すぐ謝るなら少しは手加減してやるぞ」

「そうだ、土下座しろ!」

 俺の頬に拳を当てたことで安心したのか、嬉しそうに笑っている。
 こんなもの俺にとっては遊びみたいなものだが、俺の顔が鋼鉄のように硬くなっているわけでもないからな。
 この難癖男にしてみたら、自分の拳が効いたと勘違いしているんだろう。

「謝らないなら、もう一発だ!」

 再び、俺の顔面に拳が繰り出される。
 が、2発目を貰う必要はない。

「なっ!?」

 難癖男の拳を掌で正面から受け止め。
 そのまま拳を握り込むようにして力を入れてやる。

「えっ、待て、いたっ、痛い!」

 とはいえ、やり過ぎるわけにもいかないか。

「はなせ、放してくれ!」

 懇願する難癖男。
 取り巻きの2人も驚いて固まっている。

「ほら」

 要望通り、放してやるよ。

「こいつ……」
「おい?」
「大丈夫か?」

 さて、どうしたものか?
 どこまでやればいいものか?

「……」

 とりあえず、詳しい事情とさっきの電話について聞かなきゃな。

「おい、3人でかかるぞ」
「おう」
「いいぜ」

 こいつら、まだ懲りてない?

「有馬くん!」

 不安そうな里村に頷きをひとつ。

「……うん」


 さあ、これで終わりにしよう。

「今度は3人がかりで俺に暴力をふるうつもりか?」

「うるさい、いくぞ」

 その声と共に攻撃を仕掛けてきた。
 3人同時の連携攻撃だ。

 いや、これを連携攻撃といっていいものか?
 放たれる脚や拳の稚拙なことといったら……連携どころじゃないだろ。

 あっさりと3人の蹴りや拳を避け躱し、体を入れ替えて反撃。
 大怪我をしない程度に、それなりの痛みを与えてやる。

「うっ!」
「痛っ!」
「くっ!」

 蹲る3人。

「凄いよ、有馬くん」

 興奮する1人。

「何てことはない。こいつらが弱いだけ……だと思うぞ」

「そんなことない! 凄い動きだったもん。ボク、こんなの見たことないや」

「そ、そうか」

「うん、すごい、すごい!」

 称賛に満ちたキラキラした目で見つめてくる。

「……」

 いや、まあ……。


「すごい、すごいよ!」

 称賛の目を俺に向ける里村。
 何というか、ちょっと頭がくらくらするぞ。
 こいつ、変な力でも持ってるんじゃないだろうな。

「……」

 って、そんなわけないか。

 おっ!

「有馬君、後ろ! 危ない!」

 ありがとう、里村。
 でも、分かっている。
 あっちの世界では、何度も背後からやられたからな。
 もう背後はやらせないさ。
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