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第4章 異能編
廃墟ビル 10
1撃目の氷塊の急旋回といい、2撃目の氷塊落下といい。
ちょっと想像を越えていたな。
1撃目は、氷に追尾機能でもついていたのか?
それとも、隣の念動力者との合わせ技なのか?
いずれにしても、大したものだ。
けど、それを蹴り飛ばした武上も凄いな。
2撃目の落下操作は、鷹郷さんの風の異能なんだろう。
こっちも発動のタイミング、精度が抜群だった。
これはもう……。
あちらの世界の魔法と比べても、熟練度という点では遜色ないんじゃないか。
戦闘におけるひとつの手段として、本当に上手く使いこなしているよ。
威力の点では、あちらの世界より劣っているように見えるけれど、それでも驚きの異能使いたちだ。
と、感心している俺の横で。
「こ、これ何なの?」
今まで大人しく見ていた里村が我慢できないといった顔つきで囁きかけてくる。
「あ~、まあ……」
さすがに、ごまかせないよな。
「……超常現象、かな?」
「なに、何それ! 何なのそれ?」
「だから、静かにしろって」
「けど……」
「あとで、ちゃんと説明してやるから」
「ほんとだよ! 約束だよ!」
「ああ」
「なら静かにする。でも……有馬くんは知ってたんだよね?」
それは、まあ……。
ただ、武上の異能は知らなかったぞ。
「あそこにいる武上くんや古野白さんも、魔法を使えるの?」
「それもあと。今は静かにしてくれ」
「……分かった」
不満気ながらも口を閉ざす里村。
やっと静かになった。
それで、今の現場は?
「最後の警告だ。投降する気はないか」
「くどい」
「そうか、残念だ」
「鷹郷さん、もういいでしょ」
鷹郷さんと武上の後ろで様子を見ていた古野白さんが厳しい口調で言い放つ。
「早く片付けましょ!」
「そうだな。よし、征圧するぞ!」
「了解」
「了解」
そこからは、あっという間だった。
古野白さんの炎と鷹郷さんの風で敵の異能に対処している間に、身体を強化した武上が容赦なく相手を蹂躙するばかり。
敵の異能者ふたりを拘束するまでにかかった時間は、ほんの僅かだったんじゃないかな。
「これで、お終いね」
拘束され屋上に転がされたふたりを見下ろす古野白さんから、冷たい声が発せられる。
「……今俺たちを解放すれば、人質は助けてやる」
「ふふ、まだ言うのね」
炎使いとは思えない、氷のような目つきだな。
「もう連れて行きましょうか、鷹郷さん」
「そうだな」
「武上君、頼める?」
「ああ、任せとけ。ほら、立てよ。ささっと行こうぜ、くっそ暑いんだからよぉ」
文句を言いながら武上が拘束したふたりを立たせようとした、その時。
キィーーーン!
乾いたような高音が?
頭の中に直接響き渡るこの感じ。
以前経験した覚えのあるこの感覚。
こいつは!
「なっ!?」
「何だ?」
「えっ! これは?」
おそらくは結界。
古野白さんと俺が、飲み会の後に公園で捕えられたあの結界だ。
でも、どこから結界を?
結界の発動には厳しい条件があるはずなのに。
異能者はどこにいる?
「何だぁ! どうなってんだ?」
「武上君、うるさい!」
「けどよぉ」
「ちゃんと分かってるから」
「……」
「鷹郷さん、これは」
「ああ、閉じ込められたようだな」
「……はい」
「これが、例の結界かよ」
「そうね。そうだと思うわ」
内部から結界を確認した古野白さんたち。
3人も閉じ込められたと認識したようだ。
「ここに結界能力者はいねえって言ってたよなぁ、古野白」
「言ってないわよ。この2人は違う能力だし、階下からここに来るまでに結界を使われることもなかったから、このビルにはいないかもしれないって言っただけ」
「言ってるじゃねえか」
「断定はしてないわ」
「どちらにしても、油断した我々の失態だ」
「……はい」
「……」
武上と古野白さんは少し焦っているように見える。
一方、鷹郷さんにはまだ余裕がありそうだ。
結界を破壊する自信があるということか。
それなら、安心なのだけれど……。
ただ、気がかりなのは、いまだに結界発動者の姿が見えないこと。
ここはビルの屋上だというのに、いったいどこに?
まさか、隣のビルから発動しているのか?
「はは、助けが来たようだぜ」
「形勢逆転だな」
「なわけねえだろ」
「そうよ」
結界の中にいるのは、古野白さんたちだけじゃない。
嘲笑うような声を出した敵2人も、同じく結界の中に捕らえられている。
「ほら、来た」
「っ!?」
「なっ?」
突然。
そう、まさに突然のこと。
2人の男が古野白さんたちの眼前、結界の前に現れたんだ!
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