30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
287 / 1,640
第4章 異能編

廃墟ビル 10


 1撃目の氷塊の急旋回といい、2撃目の氷塊落下といい。
 ちょっと想像を越えていたな。

 1撃目は、氷に追尾機能でもついていたのか?
 それとも、隣の念動力者との合わせ技なのか?

 いずれにしても、大したものだ。
 けど、それを蹴り飛ばした武上も凄いな。

 2撃目の落下操作は、鷹郷さんの風の異能なんだろう。
 こっちも発動のタイミング、精度が抜群だった。

 これはもう……。

 あちらの世界の魔法と比べても、熟練度という点では遜色ないんじゃないか。
 戦闘におけるひとつの手段として、本当に上手く使いこなしているよ。

 威力の点では、あちらの世界より劣っているように見えるけれど、それでも驚きの異能使いたちだ。

 と、感心している俺の横で。

「こ、これ何なの?」

 今まで大人しく見ていた里村が我慢できないといった顔つきで囁きかけてくる。

「あ~、まあ……」

 さすがに、ごまかせないよな。

「……超常現象、かな?」

「なに、何それ! 何なのそれ?」

「だから、静かにしろって」

「けど……」

「あとで、ちゃんと説明してやるから」

「ほんとだよ! 約束だよ!」

「ああ」

「なら静かにする。でも……有馬くんは知ってたんだよね?」

 それは、まあ……。
 ただ、武上の異能は知らなかったぞ。

「あそこにいる武上くんや古野白さんも、魔法を使えるの?」

「それもあと。今は静かにしてくれ」

「……分かった」

 不満気ながらも口を閉ざす里村。
 やっと静かになった。

 それで、今の現場は?


「最後の警告だ。投降する気はないか」

「くどい」

「そうか、残念だ」

「鷹郷さん、もういいでしょ」

 鷹郷さんと武上の後ろで様子を見ていた古野白さんが厳しい口調で言い放つ。

「早く片付けましょ!」

「そうだな。よし、征圧するぞ!」

「了解」
「了解」


 そこからは、あっという間だった。
 古野白さんの炎と鷹郷さんの風で敵の異能に対処している間に、身体を強化した武上が容赦なく相手を蹂躙するばかり。

 敵の異能者ふたりを拘束するまでにかかった時間は、ほんの僅かだったんじゃないかな。



「これで、お終いね」

 拘束され屋上に転がされたふたりを見下ろす古野白さんから、冷たい声が発せられる。

「……今俺たちを解放すれば、人質は助けてやる」

「ふふ、まだ言うのね」

 炎使いとは思えない、氷のような目つきだな。

「もう連れて行きましょうか、鷹郷さん」

「そうだな」

「武上君、頼める?」

「ああ、任せとけ。ほら、立てよ。ささっと行こうぜ、くっそ暑いんだからよぉ」

 文句を言いながら武上が拘束したふたりを立たせようとした、その時。

 キィーーーン!

 乾いたような高音が?

 頭の中に直接響き渡るこの感じ。
 以前経験した覚えのあるこの感覚。
 こいつは!

「なっ!?」

「何だ?」

「えっ! これは?」

 おそらくは結界。
 古野白さんと俺が、飲み会の後に公園で捕えられたあの結界だ。

 でも、どこから結界を?
 結界の発動には厳しい条件があるはずなのに。

 異能者はどこにいる?


「何だぁ! どうなってんだ?」

「武上君、うるさい!」

「けどよぉ」

「ちゃんと分かってるから」

「……」

「鷹郷さん、これは」

「ああ、閉じ込められたようだな」

「……はい」

「これが、例の結界かよ」

「そうね。そうだと思うわ」

 内部から結界を確認した古野白さんたち。
 3人も閉じ込められたと認識したようだ。

「ここに結界能力者はいねえって言ってたよなぁ、古野白」

「言ってないわよ。この2人は違う能力だし、階下からここに来るまでに結界を使われることもなかったから、このビルにはいないかもしれないって言っただけ」

「言ってるじゃねえか」

「断定はしてないわ」

「どちらにしても、油断した我々の失態だ」

「……はい」

「……」


 武上と古野白さんは少し焦っているように見える。
 一方、鷹郷さんにはまだ余裕がありそうだ。
 結界を破壊する自信があるということか。

 それなら、安心なのだけれど……。

 ただ、気がかりなのは、いまだに結界発動者の姿が見えないこと。
 ここはビルの屋上だというのに、いったいどこに?

 まさか、隣のビルから発動しているのか?


「はは、助けが来たようだぜ」

「形勢逆転だな」

「なわけねえだろ」

「そうよ」

 結界の中にいるのは、古野白さんたちだけじゃない。
 嘲笑うような声を出した敵2人も、同じく結界の中に捕らえられている。

「ほら、来た」

「っ!?」

「なっ?」


 突然。
 そう、まさに突然のこと。
 2人の男が古野白さんたちの眼前、結界の前に現れたんだ!

感想 11

あなたにおすすめの小説

ひだまりのFランク冒険者

みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。 そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。 そんな中 冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。 その名は、リルド。 彼は、特に何もない感じに毎日 「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。 この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)