30年待たされた異世界転移

明之 想

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第4章 異能編

廃墟ビル 12


<和見武志視点>



「この結界、かってえぞ!」

「ええ」

「話に聞いていた以上だぜ」

「……」

「鷹郷さん、何とかなりそうですか?」

「……少し時間がかかる、か」

「ふふ、ははは! あんたらの負けだ」

「何言ってんだ、お前も結界の中にいるだろうがよ」

「俺たちは助けてもらえるからな」

「見殺しにされんじゃねえのか」

「うるさい! あんたらはここで倒れて、俺たちは助かる。そういうことだ」

「はっ、どうだかな」

「と、とにかく、こいつは簡単に破壊できる代物じゃないんだよ。なあ、武志」

「……」

 うるさい男だ。
 与えられた仕事も、まともにこなすことができなかったくせに。
 僕の結界がなければ、今回もどうなっていたことか。

「橘さん、どうします?」

 まっ、こっちの2人はどうでもいい。
 問題は敵の3人をどうするかだ。

「そうだな……」

 結界の中に閉じ込めたままでもいいが、それだと時間がかかってしまう。
 長引けば結界を破壊される恐れもある。
 前回と違いかなり強化しているから、大丈夫だとは思うけれど。

「このままこいつらが苦しむ様子を見ているのも、一興というもの。だが、時間の無駄使いだな」

「ガスを入れましょうか?」

 前回は用意していなかった追撃手段。
 今回は準備万端だ。
 ガスを結界の中に入れてやれば、即終了だろう。

「ああ、そうしてくれ」

「どっちのガスで?」

「……軽い方だな」

「了解」

 鞄から催眠などの作用のある特製ガスを取り出し、橘さんに手渡す。

「これでいいですか」

「ああ」

 それを手にした橘さんが結界に近づき。

「鷹郷さん、これであんたたちも終わりかな」

「……何をする気だ」

 敵のリーダーである鷹郷という男が結界の破壊を試みていた手を止め、橘さんと向き合っている。

 透明な結界で隔たれるとはいえ、ふたりの距離は1メートルもない。

「話は聞いていただろ」

「……」

「まっ、ゆっくり眠ってくれ。少々痺れるかもしれんがな」

「鷹郷さん!」
「鷹郷さん!」

「……」

「ふふ、あの鷹郷が言葉もないか」

「橘さん、ちょっと待って! 俺たちも中にいるんですよ」

「心配するな。お前たちは後で助けてやる」

「それ、本当ですよね」

「ああ」

「それなら……」

「さてと。和見、結界を操作してくれ」

 橘さんが僕の方に振り返り、そう告げる。

「はい」

 ガスを結界内に入れるためには、結界の一部を操作する必要がある。
 結界を維持しながらこれを行うのはかなり難しいのだけれど、今の僕ならできる。

 両手を前に出し。
 集中力を高め。

「……」

「……」

 いいぞ。あと少しだ。

「和見っ、避けろ!!」

「えっ!?」

 操作完了直前に、橘さんの焦ったような声。
 何?

 何かがすごい勢いで迫って来る!

「っ!」

 何とか避けることができたけど。
 集中が途切れてしまった。

「橘さん!」

「ガスは後だ」

「了解です」

 今はこいつに対処しなければならない。
 でも、突然現れたこいつは?
 このサングラスの男は誰なんだ?

 そんな疑問が浮かんだ瞬間!

「!?」

 なんてスピードだ!
 避けられない。

「ううっ!」

 身体に衝撃!
 そして、目の前が真っ白になり。

「……」




***********************




 武志を気絶させた後、対峙するのは橘という相手のボス。
 武志への対応は後でしっかりするとして、今はこいつの相手をしないとな。

 しかし……。

 距離を取ったまま、動こうとしない。
 随分とこっちを警戒しているようだ。

「……」

 今の動きを見たのだから、それも当然か。

「……誰だ?」

「それを知る必要はないでしょ」

 名乗るわけないだろ。
 自分の身元をばらすような愚かなこと。
 露見に繋がる可能性もあるというのに。

「有馬君?」

「えっ? あれは、有馬なのか?」

「……」

 だから……。

 ふたりとも、今の会話聞いていたよな。
 驚くのは分かるけど、その名は口にしないでほしいって、それも理解できるよな。

 はぁぁ。

「……まあ、誰でもいい」

 んん?
 耳に入っていないのか?

 これは、ありがたい。

「誰であろうと、ここで倒すだけだからな」

「やれますかね」

「当たり前だ」

 口の端を上げ嗤っている。

「……」

「問題ない」

 今の俺のスピードを見た上で、この自信。
 やはり普通じゃないな。

 さすが、特別な異能の持ち主といったところか。


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