30年待たされた異世界転移

明之 想

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第4章 異能編

廃墟ビル 17



「里村、先に行くぞ。戦闘が始まったら、隠れてろよ」

「えっ、ちょっと、有馬くん!」

 飛ぶように駆け。
 1階、エントランスへ!

 いる。
 まだ、いるぞ!

 が、橘と武志のふたりだけ。
 あの少年はいない。

「っ! あいつ、追ってきたのか」

 気づかれた。

「武志、こっちへ来い」

 まずい、瞬間移動を使われる!
 間に合わない。

 と……。

 消えてしまった。

「……」

 1階、2階にはいない。
 その上に転移するとは思えないから。
 やはり、外か!

 廃墟ビルを走り出て、道路へ。
 左右を見渡すが、姿は見えない。

 気配感知!
 橘の気配に絞って、その痕跡を追う。

「……」

「……」

 いた!

 ここからの距離は30メートルほど。
 交差点を曲がった地点。
 そこで止まっている。

 よし、今度こそ捕まえてやる。
 待ってろよ。

「……」

 気配を消し。
 道路の上を、足音を立てずに駆け。

 ここか。

 目の前には雑居ビル。
 橘はこの1階にいるはず。

 気づかれないように注意しながら、入り口付近に忍び寄り中を覗き見る。

 かなり見づらいが、気配感知を併用すると……。
 ああ、そこにいるな。

 橘は奥まった場所に位置するソファーに座っている。
 傍らには武志。

 なるほどな。
 入り口からは、はっきりと視認できない場所だ。
 だから、気楽に座っているのか。

「……」

 そうだな。
 気配感知がなければ、こんな所に潜んでいると気づくことはできなかっただろう。
 余裕があるのも当然か。

 けどな、俺は感知できるんだよ。

 とはいえ、ここはちょっと問題だ。
 中には一般の人たちもいるのだから。

 さて、どうしたものか?

 とりあえず、橘のステータスを確認しておこう。
 あと何回瞬間移動を使えるのか、おおよその見当をつけておきたい。

「……」

 SPは……ほとんど残っていない。
 使えて1回だろう。
 場合によっては使えないかもしれないな。

 これなら、簡単に決着をつけることができそうだ。

 が……。

 一般人を巻き込むわけにはいかない。
 かといって、橘を見逃すこともできない。
 こうしている間に、SPを回復されても困る。

 困ったぞ。




 見張り続けること10分。
 橘と武志が立ち上がった。

 こっちに向かって来る。
 雑居ビルを出るんだな。

 これは、ついてる。
 少し尾行して、周りに通行する人がいなくなったところで勝負だ。

「……」

 橘の目に入らないように入り口から少し離れ、身を隠す。

 2人が出てきた。
 俺の隠れている場所と反対の方向に歩き出す。

 気配を消して尾行開始だ。

「……」

 ビルの角を曲がる2人。
 少し時間を空け、こちらも左折。

「なっ!?」

 いない?
 2人の姿がない!
 瞬間移動だ!

「……」

 尾行がばれていたのか?
 俺に気付いている素振りなんか見えなかったのに?

「くっ!」

 もう一度だ。
 いや、何度でも探ってやる。
 既に熟知した橘の気配なら何度でも。

「……」

「……」

 見つけたぞ。
 隣の通りを移動している。

 もう逃さない!

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